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申し子、子爵領へ

第二章はじまります!


 [転移]で着いた場所は小高い丘の上にあるステキな洋館の前だった。

 三階建ての白い壁の上に紺色の屋根が乗っている。窓を縁取る木枠が焦げ茶色でいいアクセントになっていた。


「ここがデライト子爵領の前領主邸だ」


 ゴディアーニ辺境伯領主邸よりは小さいけれども、日本でなら十分豪邸だ。

 そして丘を下った先には海が広がっている。

 レオさんは少し困った顔で、でも繋いでいた手を離さずに言った。


「――――とりあえずここに住むということでかまわないだろうか? いや、その、どうしてもというわけではないんだ。嫌ならば森の中の小さな家と、大きな農園を擁するワイナリーも用意してあるからそちらに住んでくれても構わない。ただ、できれば護衛がいっしょに住めるところの方が助かるんだが…………」


 森の中の小さい家? 農園を擁するワイナリー? 用意してある……??

 なんかおかしな言葉を聞いた気はするけど、とりあえずそれはおいておいて、となりに立つ人を見上げた。


「領主邸ということはレオさんのおうちですよね? お邪魔してもいいんですか?」


「ここは前領主邸で領主邸はまた別になるんだ。アルバートの一家も住むし他にも住み込みの者もいてな、領の体制が整うまでは寮的な役割の建物だと思ってくれればいい。男爵領でお世話になっている白狐印の調合師として招きたいと思っているんだがどうだろう」


 領主邸は別ってことは、レオさんは別のところに住むのか。

 期待してたわけじゃないけど――――いっしょに住むのかなって思ってた……。ずっととなりに住んでいたし。なんかさみしいような気がする……。


「……こちらにお世話になります。あの、いろいろとありがとうございます」


『クー!(おせわになるの!)』


 シュカはレオさんの腕からひょいとあたしの肩に乗った。

 レオさんは苦笑してつぶやいた。


「シュカが守っているし、申し子は本当ならば好きなように暮している方がいいんだろうが心配でな…………難しいものだ」


 王都と公爵領、辺境伯領の領都には町全体に魔物や魔獣が入れない結界が敷いてあると聞いている。

 そういえば一番最初にルディルが、町の外では飛竜のフンに気を付けろって言ってたわ。

 ということは、この領では油断できないってことだ。

 レオさんの心配もわかる。なんだかんだ言ってもこっちに来てからまだ半年も経たない異世界人だもの、知らないことまだまだあると思うし。

 だからありがたくお言葉に甘える。


「景色もキレイですね。こんなステキなところに住めるなんてうれしいです」


「――そうか。そう言ってもらえるならよかった。ここにはしばらく人は住んでいなかったんだ」


「そうなんですか? とてもきれいで、手入れされていたように見えますけど」


「ああ、管理はされていたからさほどひどくは痛んでなかった。最近少し手を入れて住めるようにしたんだ」


 ああ、きっとそういうことをしていて忙しかったのね。


「さぁ、中を案内しよう」


「はい。お邪魔します」


 繋いだままの手を引かれ、新たな住む場所へと向かった。






 中にはアルバート補佐と奥さんのマリーさん、その息子のミルバートくんが待っていた。


「しゅか!」


『クー!』


 真っ先に走ってきた三歳児に、シュカもぴょーんと跳ねていった。


「レオナルド様、ユウリ様、おかえりなさいませ」


「こんにちは。アルバートさん、マリーさん。よろしくお願いします」


 玄関ホールは広く手前部分だけ吹き抜けになっており、優雅に曲線を描いて二階へ繋がる階段があった。ホールは一階の奥まで続き、その先には裏側の庭に面しているようだった。

 そのまま二階へと案内され、一番奥の部屋へ通された。


「ここがユウリの部屋だ」


「――――ひっろ!」


 また! またすごい広い部屋!!

 手前側の部屋には応接セットがあり、奥の部屋にはミニキッチンとダイニングテーブル、窓際にはソファが置いてある。

 メゾネットタイプらしく壁側にある螺旋階段を上っていくと、ベッドルームやお風呂や衣裳部屋などがあった。


「……レオさん、これ、ゲストルームじゃないですよね?」


「ユウリにずっといてもらえるよう、全力で用意した」


 えええ?! 豪華すぎるんですけど!

 レオさんいい顔で笑ってますけど、ただの調合師が住む部屋じゃないと思うの!

 ここ多分領主とかその奥様とかの部屋でしょ!

 口を開こうとした時にノックの音がして扉が開いた。


「失礼します。ユウリ様、お茶をお持ちしました」


「あっ、マリーさん! ありがとうございます」


 レオさんと応接セットのソファに座ると、ローテーブルにお茶と焼き菓子が置かれる。これはメルリアード男爵領のバターたっぷりのおいしいやつ!


「マリーさんたちもここに住んでるんですよね? こんな広い部屋ですか?」


「はい。ここと似たつくりの部屋ですよ」


「そうなんですね……?」


 ここのおやしきはそういうつくりなのかな……? 他の部屋もそうなら、ありがたく使わせていただくけど。


「でも――――私たちの部屋には()()()()()はありませんけどね」


 護衛の部屋!

 そうだった、さっきレオさん護衛がいっしょに住めるところだと助かるって言ってた。

 はっと気づく。

 そういえばその横の壁に付いている扉の向こうは見ていなかった。


「……レオさん、その扉は?」


「……護衛の部屋だな」


「開けて見てもいいですか?」


「…………いいが、その…………」


 立ち上がって壁まで行き扉を開けた。

 その向こうの部屋は、同じような応接セットがあり大きな執務机がドンと鎮座している。そして残念なことに立派な執務机の上は雪崩寸前の書類の山だった。


「……ここ、執務室じゃないですか」


「――――護衛の部屋で合ってるぞ」


 どう見ても執務室です。レオさんの部屋です。

 やっぱりここでもとなりの部屋なんだ。

 違うところに住むのさみしいなんて思ってたのに!

 ソファまで戻って、顔を逸らして座っているレオさんの向かいに座る。


 マリーさんはフフフと笑って、またのちほど参ります~と出ていった。






次話 7・19くらいに更新予定

前話は第一章の人物紹介です。よかったらそちらもどうぞ~


評価・ブックマークありがとうございます! 感謝です!!

今回もお読みいただきありがとうございました!

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