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申し子、獣人と出会う

 

 政務休日だった昨日は、ミライヤといっしょにお城の神殿へ礼拝に行った。

 前庭の片隅に佇む神殿は華美なところはなく、清潔でこじんまりとした落ち着く建物だった。

 王都の中央付近にあるという大神殿は、大きく立派で調和日は混んで大変らしい。


 六神と調和の神の像を見て驚いたのは、六神の足元で足蹴にされてる……じゃなくて、縁の下の力持ちな姿を見せているのが、神々をまとめる調和の神だということ。

 そしてその姿が、()()()()の姿だったことだ。

 シュカも(『あっ! かみさま!』)と言っていた。

 人それぞれ神様に見える姿で現れるとか言ってたけど、実はみんなにあの姿を見せてるんじゃないかと疑惑を持った瞬間だったわね。


 礼拝の後は『(こぼ)()亭』で、ミライヤとルディルとレオナルド団長と昼ごはんを食べたんだけど、団長がごちそうしてくれてワインまで出てきちゃったから結局夕方まで飲んでしまったわよ。

 すっかりできあがったミライヤが「ユウリの彼氏さん、素敵ですねぇ?!」とあたしの二の腕をバンバン叩きだすし、団長は酔わせて黙らせようというのか笑顔でミライヤのグラスにどんどん注ぐし、軽く地獄絵図だったわ。




 二日間の休みも明け、今朝も近衛執務室へ向かっていた。

 通用口まで来ると、初めて城内へ入るシュカはおとなしく抱っこされながらも、あちこちキョロキョロと見回している。

 神獣は、どこを歩いてもどの建物の中へ行っても「お(とが)めなし」だとレオナルド団長が言っていたけど、それでも王城に動物って大丈夫なの? と心配になる。

 普通の動物じゃないらしいから、動物アレルギーの人の心配はいらなさそうなんだけど。


 今朝は通用口ホールにエクレールの姿は見当たらず、立哨していた女性警備隊員がシュカを見て顔を輝かせた。


「めっちゃかわいいの連れてるな!」


 この気さくに声をかけてきたワイルドなお嬢さん、制帽被ってないの。なので茶髪のウルフカットからのぞく、もふもふのお耳が丸見えよ! かわいい……。

 きっと耳があるから制帽を被れないのね。

 大きなつり目を細めてシュカを見ている姿が微笑ましい。

 これまでも城内で獣人さんを見かけたことはあったんだけど、こんな近くで話までしたのは初めてだった。


(『おおかみのおねえしゃん?』)


 狼の獣人ってことかしら。シュカが言うならきっとそうなんだろう。


「この子はシュカっていいます。――通っても大丈夫ですか?」


「もちろん神獣はどこでもフリーパスだ。じゃぁな、シュカ」


 ニカッといい顔で手を振る狼のお嬢さんと別れ、近衛執務室へ向かう。

 ノックをして入ると、執務机に向かっていたレオナルドさんが立ち上がった。


「レオさん、おはようございます。昨日はごちそうさまでした」


「おはよう、ユウリ。昨日は楽しかった。邪魔して悪かったな」


 うっ……。いつもより笑顔が濃くないですか……?

 ハリウッド俳優の笑顔直撃なんて耐えられる? 無理、耐えられない。なかなか普通の女子には目がつぶれそうな事案よ……。


「……ぃえ……その、あたしも楽しかったです……」


「――そうだ、一昨昨日(さきおととい)の晩に宿舎に住む動物が騒いだという報告が複数きているんだが、シュカは大丈夫だったか?」


「三日前の夜ですか……? はい、特に変わったことはなかったと思いますが」


(『ぼくはあのくらいじゃ気にならないの』)


 ――うん? なんか知ってる風?


(「なんの話? シュカはなんでみんなが騒いだのかしってるの?」)


(『うん。ユーリが大きいまほう使って、ぞわっとしたからだよ! 気がいっぱい動くからびっくりするの』)


 ――――まさかの、原因! あのやり損の[清浄(アクリーン)]」にそんな弊害があったなんて!!


(「ゴ、ゴメン! シュカの近くでかけなければ大丈夫かと思ってた!」)


 スキルも上がらないし、動物は嫌な思いするし、もうしない!

 掃除は[清掃(アクリーニン)]で、範囲を小分けにして使うようにするわよ。


「そうか、シュカは大丈夫だったか。よかったな」


 いえ、全然よくなかったです。でも、黙っておこう……。

 本当にゴメンね。動物たち。


「――それでだな、これから何回か来てもらうこともあるから、よかったら制服を貸そうと思ったんだが、どうだ?」


 そう、ここに着て来るのに問題なさそうな服が、今着ている藍色のセットアップ一着だからどうしようかと思っていたんだった。

 仕方ないから[清浄(アクリーン)]をかけて連続で着てこようと思っていたわよ。

 制服があれば大変助かります!


 レオナルド団長から、金竜宮の裁縫部屋の場所を教わる。

 シュカはちゃっかりと団長の腕の中で撫でられていて、あたしといっしょに来る気はないらしい。

 部屋を出る前に、念話でシュカに釘を刺しておく。


(「魔力あんまりなめたら駄目だからね」)


(『うん! ちょっとしかなめてないよ!』)


 もうなめてるの?! 油断もすきもないわ!

 あたしは心の中で団長に謝りながら、後で回復薬を差し入れしないと……。と思ったのだった。






 次話 『申し子、制服を着る』

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