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薬は効かない

働いていた時に、病院で見てもらうのが面倒で、通販で抗不安剤を購入してみたけれど、

頭がフワフワし一日中ボーっとしてしまったり、喉が異常に乾きつばを飲み込むのも痛くなった。

3ヶ月分も買ってしまった。金返せ。

僕は意地になって5錠くらい一気に飲んでみたら、脳が頭の中で固定されていないような、

ずっと震えているような妙な感覚に陥った。

全部一気に飲めば死ねると思う。




薬を飲んだからといって、すぐに症状が治るかというとそうでもない。

この病気のやっかいな所だが、薬を飲めば治る病気ではないのだ。

薬はあくまで、自分の感情や脳の異常事態をコントロールする手助けをしてくれるに過ぎず、結局は自分がトラウマを克服したり自分の苦手な事を1つ1つクリアして自信を付けていかなければならない。

しかし、学生であるボクの場合、朝は満員電車に乗って、授業中は教室という逃げられない空間で常に大勢の目がある中で過ごさなければならないため、1つ1つゆっくりクリアしていくという事が出来なかった。

いや、今にして思えば、やろうと思えば出来た事だが、当時のボクにとっては遅刻はいけない事だし、そもそも曖昧な病気のために学校を休むことなど出来る筈がないと思い込んでしまっていた。

ズルズルと薬を飲みながら症状の回復が見込めないまま、ついに修学旅行へ行くことになる。

行き先は沖縄。人生初の飛行機だった。

酔い止めは飲んでいたが、不思議と心身共に状態は安定していて、機内食をモリモリ食べたり、移動のバスも普通に乗る事が出来た。

ここでも、仲の良いクラスでの修学旅行という事でアドレナリンが出ていたのではないかと思う。

4泊5日の旅で、常に移動はバス。食事も出先やホテルの大広間だったが、何の問題もなかった。

唯一、海の中が覗ける船に乗った時に、めちゃめちゃに酔ったが、それもトラウマにはならなかった。

美ら海水族で見たジンベイザメの生命力には圧倒されたし、どこかの島に渡った時に入ったガマでは精神を研ぎ澄まされた。民家学習でおばあちゃんと一緒に作ったサーターアンダギーは食べきれない量だった。

ホテルでは夕飯のバイキングをこっそり部屋に持ち帰り、それをつまみに酒を飲んだり、タバコを吸ったりしてバカな友人が持ってきたWiiをやって盛り上がった。

ボクの病気はこの旅行に来たおかげで治ったものだと思っていた。

旅行後、二週間ほどで春休みへと入るのだが、この二週間、ボクは高校生活で初めて友人と昼食を取った。

ずっと行ってみたかった学食で注文の仕方がわからなかったり、購買でパンを買って仲間と食べた。

ボクはやっと青春の仲間入りを果たす事が出来た気がした。

そんな中、美ら海水族館でジンベイザメに圧倒されているボクを見かけた別のクラスの女子がボクに好意を持ってくれたらしく、春休みはほとんど彼女と過ごした。

調子に乗っていたボクは彼女をグイグイとリードしたつもりになっていて、学生特有のちょっとやんちゃな姿を見せて優越感に浸っていた。

彼女と過ごす時間は楽しかったし、食事もデートも普通に出来た。

彼女を自転車の後ろに乗せて、ボクの地元の線路脇の道路を延々と走ったりした。

そんなふわふわとした時間を過ごしていたが、春休みも終わる頃になると愛想をつかされてしまい、ボクはフラれ、彼女には別の恋人が出来た。

後に、彼女がクラスの男子半数と付き合っていた事を知る。涙も出なかった。


そして三年時。

久しぶりの学校にボクに嫌な感覚が戻ってくる。

クラス換えではまたしても知り合いゼロだったが、多少顔を見た事がある人はいたため、彼らと仲良くなった。

しかし、教室にいると具合が悪くなったり、またしても食事が取れなくなったりしたため、ボクは保健室で過ごす事が多くなった。

二年時の友人と保健室でサボったり、保険室の先生に気に入られ電話番号を教えてもらっていたので、先生に直接電話をして学校を休む旨を伝えていた。

学校をサボると、持ってきていた私服に着替えてパチンコに行ったり、近くの総合アミューズメント施設で1日過ごした。

それにも飽きると、出席を取るためだけに、最後の授業を受けに学校へ向かった。

とにかくダラダラと過ごし、なるべく学校にいないようにしていた。

たまに学校へ行っても、放課後まで空いている部室で過ごしたり保健室にいた。

放課後はベランダで賭け麻雀をやって過ごした。

素行の悪さが目立つようになり、一部の教師にはとても嫌われ、目が会うだけで何か理由を付けて腹を思い切り殴られた。

さすがに僕の我慢は限界になり、「フッザケンナ!」と言い返すと「教師に向かってなんだその態度は!」

というお決まりのセリフとビンタをくらった。

いつものように授業をサボった日、たまたまクラスメートの財布から金が盗み取られるという事件が発生した。

そこで、一部の生徒と教師にボクは疑われ、しかし部室でタバコを吸ってサボっていた事がバレるのもマズかったため、必死でごまかす事しかできなかった。教師に「お前の目は信用できない」と言われた一言がずっと胸に残っている。

ちょっとヤンチャなグループが、犯人を見つけ成敗してくれたおかげで、生徒からの疑いは晴れたが、その事は教師には伝わらず、結局ボクは授業をサボったペナルティとして朝晩学校の清掃と毎日反省文10枚を一週間書かされた。

片思いしていた女の子には愛想を尽かされ、ボクの青春は幕を閉じた。

かに見えたが、その清掃している姿がなぜか後輩の女の子に人気で、卒業式に花束と手紙をもらえる程チヤホヤされてしまった。

今だから告白するけれど、あれはサボった罰で掃除していただけなんです。ごめんなさい。

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