ボクと僕
ボクの病気の事を知っている人はもういない。
ボクは悲劇のヒロインを語る資格がたっぷりあると思う。
なんで自分ばっかり本当に不幸だ。運が悪い。
電車に乗ると社会科見学だか遠足だか知らないけど幼稚園児が大量に乗ってくるし、僕が深夜にDVD返却に行くだけで職質されて交番に連れていかれるし、高校時代1年ごとにクラス替えがあったけどたいてい同じクラスだったやつが4、5人はいるはずなのに三年間知り合い0からのスタートだったし、たまたまサボった授業の時に、クラスメートの財布が盗まれてボクが犯人にされるしもう勘弁してください。
家族も友人も彼女も教師も上司も誰もボクをわかってくれない。
もっと優しくして。責めないでください辛いです、すぐに傷ついてしまいます。それはボクの心が弱いからです。わかってるけど、どうしようもないじゃん。ここまで弱ってしまう環境に問題があるんだよ。ゆとり教育のせいならば国のせいだ。責任とって幸せにしてくれよ。
普通の人生が送れればそれで十分幸せ感じられるから。
普通に家族で旅行に出かけたり、親父と交代しながら車運転して青森の祖母の家まで向かったり、彼女とディズニーランドに行ってスペースマウンテンではしゃいで満員電車で二人寄り添って余韻に浸ったり、上司がご飯をごちそうしてくれた時に気持ちいい食べっぷりみせて「若えなあ」って気に入られたり、友達と居酒屋いったあとにシメのラーメンを一緒に食べにいきたいだけなんです。
自分を偽ってボクだけ一人、待っているのは嫌なんです。誰かと一緒にいたいんです。
すげえなんか今、死ねる気がする。
心臓バクバクしながら思わず部屋飛び出してマンションの最上階まで駆け上った。
手すりから体乗り出して「あ、マジで飛べるわ今」って思った時に、母さんが亡くなる姿を見ることなくてよかったと思った。
親の死に顔なんてきっと耐えられなかった。親不孝者でごめんなさい。
どうも、平成最後の自殺者です。グッバイ平成!次の生まれ変わりはまだ令和ですか?
僕はグッっと手に力を込めて思い切り手すりを飛び越えた。
飛ばないと見えない景色が広がってる。
空中の言葉の意味を理解しながら、かつての「ジュラシックパーク」みたいに垂直に落ちていく。
地面がどんどん近づいて、やがて車のタイヤが破裂したような音がした。
体は動かないし耳も聞こえない。けれど周りの人間が僕を見ているのは感じ取れる。
なんだよ、死んでも人の視線は切れねえのかよ。こっち見てんじゃねえよクズども。
てめえらが死なないから代わりに僕が死ぬはめになってんだよ。
ほら急に体がガクガク震え出した。頭に響いて聞こえたのは初恋と思われる子の可愛らしい声。顔なんて思い出せない。実在していたのかもわからない。
マンション前のバス停に向かって「あああああっ!」とか叫んでみたけど、声震えてるし結局躊躇してたいした声出せてなくってダサすぎ。みんなスマホに夢中で誰にも聞こえてない。
くだらなくなって部屋に帰ろうとしたら、サラリーマン時代に毎朝遭遇して信号まで一緒に歩いてた403号室の結局名前覚えられなかったおばちゃんと出くわして軽く会釈したけど怪訝な顔された。
お前ボクのこと覚えてねえのかよ。
なんか笑えてきて部屋戻ったら乾いた引き笑いがキモかったけどバラエティ番組は面白いしエッチな動画には反応してしまうし、もうプレイしてないスマホのゲームをログインボーナスもらうためだけに無意識に起動してしまうしチョコレートとピザポテトとコーラの組み合わせが最高に美味かったり野良猫がすり寄ってくるのがなんか幸せ感じられたからとりあえず明日も生きることにして今に至る。
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ボクの中にはボクと僕がいて、それは表裏一体のようにみえて違う人生を歩んでる。
26年の人生、何が真実で何が虚言か。夢か現かとはまさにこの事。
僕は死んだけど、ボクは生きてる。くだらねえな。




