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夢か現か。

世間ではパニック障害だった事を告白する有名人がニュースになったり、現在進行形でパニック障害に苦しみ、活動を休止する人が増えている。

そんなニュースが流れるたびに、病気のことが世の中に浸透していく。

もっと世の中に、この病気で苦しんでいる人の事を理解してほしい。

そう思いながらボクはもう限界を迎えた。




ボクは26歳男性。大学中退専門学校卒の無職。

今はダラダラと昼過ぎに起きてご飯を作り、本を読むかテレビを見るかして過ごしている。

おかげでフワフワのオムレツは作れる様になり社会の役に立たないような知識も増えた。

1つ紹介すると、「マカロニの穴の開け方」をご存知だろうか。

これは、◎←このような二重の輪の真ん中の穴を塞いだ金型から、高圧で生地を押し出す事で綺麗に穴の空いた形が出来上がるのだ。

なるほど!と思った方は、ぜひ合コンでひけらかしてほしい。

そして盛大に恥をかいて忘れたくても忘れられない無駄知識になってしまえばいい。


それ以外にやる事といえば、なんとなくいい日になりそうだな、と感じた日に身だしなみを整えてカメラを持って散歩をするか映画を観に行くくらいだ。

カメラは最近買ったばかりだが、街中でパシャパシャとシャッターを切るだけで楽しい。

一度商店街で写真を撮っていた時に、腰パンをしすぎて半ケツになっている男に「俺のパンツ盗撮しただろ?」と絡まれたのがトラウマだ。

映画はとある事情から、僕はアカデミー会員のため、指定の映画館で見放題なのである。

池袋に住んでいるのだが、電車賃がもったいないため、1時間弱かけて新宿まで歩いていく。

ちなみに、2019年暫定ベストワンは「クリード」だ。


こんな風に書いてみると、自由を謳歌している気ままなダメ人間に見える。

事実その通りだし、ボクはダメ人間で社会不適合者だ。

でも、それなりの苦労や不幸話だってある。

それでは、ボクの不幸話を語ろうと思うので、少し強めの酒の肴にでもしてほしい。

いや、汚い表現が多いのでまずは様子を見ながらの方がいいかもしれない。


ボクの不幸が始まったのは、小学校2年生。記憶朧げな7歳だった頃。

人見知りで臆病なボクは、この時まで学校に行くのに親に着いてきてもらっていた。

本当情けないやつである。

幼稚園まで隣の県で過ごし、小学校入学と同時に引っ越したため、入学当初の知り合いはゼロだった。

それでも、この時点では友達は普通にいたと思う。

休み時間は普通に遊んで、放課後はまじめに掃除して褒められて、帰り道でうんちを漏らした友達には家からトイレットペーパーを

持ってきて渡してあげる心優しい小学生だった。


ある日の午後、事件は唐突に起きた。


給食を食べ過ぎたのか、クラスメートの一人が教室で盛大に嘔吐したのだ。

響く悲鳴。目をそらす女子。テンションが上がる男子。

様々な光景が一気にボクの脳を駆け巡り、気がつくと口を押さえながらトイレへ走っていた。

トイレまでは間に合わず、廊下を汚しながらボクはトイレの個室へ入った。

落ち着きを取り戻し体調が整ったので個室から出て見ると、同じクラスの委員長を先頭に他のクラスの人や上級生がトイレの中を様々な表情で覗き込んでいた。

その後どうなったのかはあまり覚えていないけれど、保健室で休んで親が迎えにきたと思う。

幸い、翌日になってもクラスメートに「ゲボ星人」や「オロロ犬」といった悪口も言われず、

普段通り接してくれた。

そして再び給食の時間。ボクの箸を持つ手はなぜか震えていた。

食事の味がやけに薄く感じて、半分以上残した挙句、トイレでこっそりと戻してしまった。

原因はわからなかったが、特に体調が悪いわけでもないし、家では普通に食事が摂れるし、それになぜだか誰にも言ってはいけない気がして、親にも教師にも相談はしなかった。

まさか、これが19年続くなんて夢にも思わなかった。


それからというもの、ボクは給食をまったく食べられなくなり、食べたとしてもこっそりと戻してしまうのが日課となった。

ボクとしては、それで無事過ごせるのであれば構わなかったが、そうはいかない。

食べ残しを許さない「給食委員」の存在が、ボクを一層苦しめたのだ。

給食委員は残している生徒の前にひたすら立ち続け、食べ終わるまで決してどかなかった。

無言の圧力だ。ボクが必死に食べられないと訴えても聞いてくれなかった。

しばらくの間、ボクは昼休みを給食委員の彼と過ごすハメになったのだ。

それでも、授業中や放課後は、彼とも親しく遊んでいたし、缶蹴りやゲームボーイをして友達とも楽しく過ごせた。

しかし、この「謎の病」はジワジワと僕の生活を侵食していた。


小学3年生になり、クラス替えをする。

といっても、2クラスしかなかったため、ほとんどメンバーは同じで不安はなかった。

新しい友達も増え、皆で遊んでいた所、友達の一人に誕生日会に誘われた。

彼とは仲も良かったので、ボクは快くOKした。

そして誕生日会当日。ボクはプレゼントの遊戯王カードを持って彼の家へ向かう。

クラスメートの男子や女子が数名、そして彼の母が出迎えてくれた。

彼はフィリピンハーフだったため、フィリピン人の女性が出てきた時は初めて生で見る外国人に驚いた。

そしてパーティーが始まる。

学校以外であれば普通に食事は出来たはずなのに、慣れない環境のせいか、まったく食べられない。

出てきた料理はキーマカレーだったと思う。スプーンの端で米を3粒ほどすくってはずっと噛み続けていた。

ボクの異変に気付いた彼の母が声をかけてくれた。

しかしボクは気にかけられたことにプレッシャーを感じてしまい突然泣き出した。

変に緊張してしまっている事、自分の異常を悟られたくなかった事。

理由は多々あるが、「腹が痛い」と言い訳をしながら泣いた。

きっと別の理由があった事に皆気付いていただろうと思う。

ボクは一人、ソファで横になり休んだ。

その後、皆は変わらず優しく接してくれて、落ち着いたボクはプレゼントを渡して

ショートケーキを食べる事が出来た。

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