夢魔には勝てない?
この回は、正直書いていて分岐点になりました。
ルート的に結局は同じ道に行き着きますが、R-18に突っ込む可能性が出てきて、頭を抱えています。
目が覚めると、知っている天井だった。
白い壁紙に円盤型の電球。見慣れた自室の天井が、そこにはあった。何も考えなければ、部屋から出ていつも通り居間に行くのだろう。しかし、俺は考えてしまう。
俺は確か、島にいたはずだ。寮に行って、新しい部屋でルームメイトと会い……そして………えっと、そうだ!寝てしまったんだ。
となるとやっぱりおかしい。俺が寝たのは二段ベッドの下。つまり、見えているべきものは上のベッドの裏側のはずだ。
それが本土にある俺の家の天井に変わっているということはつまり……全て夢だった?いやいや、俺はそこまでの阿呆では無い。あれが夢で無かったことくらい分かっている。
じゃあここは何処だ?ひとまずは―――ん?
身体を起こそうとするが動かない。金縛り……とはちょっと違う。上に何かが乗っかっている。
俺はその何かを確認しようと頭を少し上げるが、掛け布団しか見えない。
ただ、おかしい。
何がおかしいって?掛け布団が通常に比べて異様に膨らんでいる。
俺はゆっくりと、ゆっくりと、掛け布団の中身を確認する。
「――――⁈」
その光景に目を疑った。
俺の体の上に、ワイシャツ一枚だけを着て、それ以外はおそらく下すらも履いていない半裸姿の霧谷さんがいた。
俺の!体の!上に!
「―――⁈、⁈――!」
驚き過ぎて声が上手く出ない。ただ、異様にモゾモゾとしてしまうと、突然。
「んうッ♡〜〜〜ッ♡んんッ!」
と、霧谷さんから甘い声が漏れる。
「ちょっ⁈え、まっ⁉︎」
どうしていいか分からず、あたふたとしていると、急に何かが俺の首に絡みついてくるのが分かった。
霧谷さんの腕だ。
「おはようございます……意外と、乗り気みたいで安心しました……」
「え、ちょっ⁈近い近い!」
ずいっと顔を近づけてくる霧谷さん。甘い吐息が頬をくすぐる。
「上手くいって良かったです。実はあんまり使わないんですよね、《災能》」
「え?」
今、《災能》って言ったか?てことは、今起きているおかしな状況は全部彼女の能力なのか…?
「ふふふ。黒鉄くんってば、疑わずに直ぐに下のベッドで寝るんですから。直ぐに捕まえられましたよ」
「捕まえ……る?」
「ハイ♡私の《災能》、《サキュバスの夢》に直ぐ引きずり込めた……いえ、黒鉄くんの夢にお邪魔できたという方が正しいですかね?」
《災能》……《サキュバスの夢》⁈
サキュバスくらいは聞いたことがある。確か、淫らな夢を見させて男と交わろうとする悪魔の一種。別名は夢魔。
……そんな《災能》もあるのか!というか、俺の夢にお邪魔するって……。
「ここは、俺の夢の中なのか?」
「ハイ♡そうですよ♡」
なるほど、だから俺の家なのか。しかし、
「どうやって、そんな……」
「私の《災能》には二つの能力があるんです♡その内の一つが、自分より下にいる人を眠りにつかせる」
怪しげな笑みを浮かべる霧谷さんを見て、俺の中で、寝る前の違和感に納得がついた。
そうか、だから俺はすぐに眠ってしまったのか。
「そしてもう一つが、寝ている人に触ることで、その人の夢に入ることが出来る、です♡」
そう言い、霧谷さんが顔を更に近づける。俺は自分の頭を引こうするが、行き止まりを宣言するかのように後頭部に枕に当たる。
そして、後頭部の衝撃よりも更に凄い衝撃が唇に走ったのを感じた。
その正体がキスであることに気づいたのは、それからしばらくしてからだった。
「ーーーーーー⁈」
今度は物理的に声が出ない。
ヤバイ!ヤバイ!あれ?ヤバイの……か?
「………ッ♡んんッ♡」
霧谷さんが甘い声を漏らし、それがまた、俺の理性を奪っていく。
濃厚かつ、初めての体験に、俺は抵抗どころか指一つ動かすことは出来ず、身体の力を霧谷さんの唇に一気に吸い込まれてしまった。
しばらくすると、霧谷さんが唇を俺の唇から離し、満足そうに唇を撫でる。
俺はなけなしの力で、霧谷さんに問いかける。
「なんで……こんなことを……?」
霧谷さんが唇を歪め、怪しく笑う。
その姿は何かの本で見た、サキュバスそのものだった。
「一目見た時、今までに味わったことの無い衝撃に襲われました。心臓を鷲掴みにされるような、そんな感覚です。その瞬間思ったんです、この人になら、捧げてもいいと♡」
何を⁈
そう、声に出そうとしたが、既に声は出ず、身体も自由に動かなくなっているのに気づいた。
これが……《災能》、《サキュバスの夢》か………。
朦朧とする意識の中、霧谷さんがワイシャツのボタンを外していくのが分かった。
ワイシャツ越しにも強調されていた豊満な胸は、解放されることにより更に自己主張を始め、過激さを増していった。
「さあ、始めましょうか。《サキュバスの夢》を―――♡」
その言葉を聞いた瞬間、俺は、自分の理性が完全に吹き飛ぶのを感じた。