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枕の下に 希望の上に(4)

秋箱のままで

「繰り返される毎日に

私は疲れたの」

彼女はそう言って

振り返らず歩いて行った

問題提起だけを残して

残された彼の顔は

何も出来ない顔だった




彼は疲弊していた

僕の問いに

彼は笑顔を強く作る

僕は

その顔に驚きながら

通り過ぎる事にした

秋風の心地良さを

小さく

知っているから




天より秋時雨

時の雨に降られ続け

一人の拠り所

定まる事無く

野ざらしで歩いている

身体の中

何にヒビが入れば

取り出す事が

出来るのだろう

秋箱のままで




「いつの間にか

終わってたんです」

彼はそう言うと

振り返らず歩く術を探した

問題提起よりも早く

残された彼は歩こうとする

何かしていたいと

顔に出ていた




彼は麻痺していた

僕の問いに

彼は

不規則に高鳴る心情で返した

僕は

その顔に心配を織り交ぜて

飲みに行く約束をした

秋空の下で話をしたら

後は

落ち葉に出来るから




天より秋時雨

時の雨に降られ続け

濡れている事に

気づかずに

野ざらしで立ち止まる

心中の一部

何に音が響けば

通り抜ける事が

出来るのだろう

秋箱のままで




彼の嬉しそうな顔が

いつかの

昼食の時に出ていた

「彼女に初めて

作って貰ったんだって?」

僕の問いに

彼は駄目出しをしながら

残さず食べていた

若い二人のやり取りを

外を見ながら想像して

柔らかい気持ちになった

「美味しいしか言わないですよ」

彼の声が

横で

聞こえていた




天より秋時雨

時の雨に降られ続け

一人分の穴の中

水が溜まり

ゆっくり溺れていく

ただ空気を吸う

何に力が入らなければ

取り入れる事が

出来るのだろう

秋箱の中で

気まぐれな

秋箱のままで






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