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コスプレ系女子の異世界布教!? ~ 駄豚と巡る異世界行脚 ~  作者: アレグロ
コスプレ系女子の異世界転生!?
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06・異世界編スタート、ですが早々に積みそうです。



「正座」


「…フォイ」


「浮いてないで、ちゃんと地面に」


「…フォイ」



・・・ ・・・ ・・・



全身を包んでいた眩い光が消え、自由に動けるようになった私がまず始めに取った行動。


それはもちろん、目の前にフヨフヨと浮かんでいた駄豚ポルケリウスの頭を鷲掴む事だった。


「元の世界じゃないってどういう事?」


「え、えぇとぉ……ケイト殿は一応人生終了されておりますからして、元居た世界にそのまま復活リスポーンされますのは些か問題があると申しますか…ホラ、住民登録やキリスト教的な意味で。それに、ケイト殿のお身体も既に火葬済みなワケで…」


「だから異世界に飛ばした、と」


私の冷たい視線に耐えかね、目線を外しダラダラと冷や汗を流すポルケリウス。


「そういうのは事前に説明しておくべき事だよね?違う?」


「おぉ…ケイト殿、なんという冷たい眼差し…まるで養豚場のせっしゃでも見るような目だ…可哀想だけど明日の朝には」


「ち が う?」


「ア,ハイ オッシャルトオリデス」



完全に萎縮し、小さく荒い息を上げるだけの生物なまものと成り下がってしまった駄豚ポルケリウスに、私は小さくため息を付く。


だがまあ、来てしまったものは仕方がない。

とにかく現状を把握しなくては始まらないだろう。



「…ここが…異世界……」



正直に言うと少しだけワクワクしている自分がいた。


何せ、目の前に広がるのはアニメや小説でしかあり得ないと思っていたあの『異世界』なのだ。

私もコスプレイヤーの端くれ、衣装を着ながらファンタジーな世界を妄想した事だって一度や二度ではない。



周辺を見渡してみたところ、別段特に変わった所などは見受けられなかった。


鬱蒼と生い茂る木々の深緑で被われたこの場所は、どうやら森の中らしい。

だが、その木の一本を見ても地球の物と何ら変わりがない。


枝に泊まり羽を休める色とりどりの小鳥も、遠くの草むらで餓えた瞳をギラつかせるオオカミも、道に咲く花を見ても普段見慣れたそれと同じに思える。


まあ、私にそういった物の専門知識が有るわけではないから、詳しい人間が調べればまた違うのかも知れないが。




…うん?


今、何かおかしかった様な…


えっと。


生い茂る森の木々…うん、問題なし。


羽を休める色とりどりの小鳥…問題なし。


道端に咲く一輪の花…問題なし。


餓えた瞳をギラ付かせるオオカミ……


餓えた“オオカミ”……




「ケイト殿…?どうかしますたか……って、ほんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!」


半ば現実逃避していた私は、目の前で上がったポルケリウスの悲鳴によって現実に引き戻された。


うん、まあ何だ。

目の前に自分以上に取り乱してる誰かがいると冷静になるよね。



・・・・・・・・



どうやらオオカミはこちらを警戒しているのか、即座に襲いかかってくる様子は見受けられない。

だが、このままポルケリウスに悲鳴を上げさせたままにしておくと、オオカミを刺激しかねないだろう。


「静かに」


「ぎゅむ。」


とりあえず足元のポルケリウスを踏み抜く。


「落ち着いて」


「…ふぅ。すごく落ち着いた^^」


何故か一瞬だけぶるりと身震いし冷静さを取り戻したポルケリウスは気にせず、私はオオカミの方に意識を向けたまま目線だけを外し話を続ける。


「…ねえ。アンタ一応神様でしょ?戦って追い払うとか何とか出来ないわけ?」


「おうふ、コレはとんだ無茶ブリを…拙者平和主義ですのでバトル系はノーサンキューと言うことで…」


「それじゃ説得するとか…」


「いや、オオカミと意志疎通とかコミュ力皆無の拙者でなくてもムリゲーと思われ…仮に出来たとしても、返ってくるのは『オレサマ オマエ マルカジリ 』位のものですぞ?」


「使えないわね…」


さて、どうしたものか。


幸いにもオオカミが潜む草むらとはかなりの距離がある。


ゆっくりと移動すれば逃げられるだろうか?


そう思い至った私は、ゆっくりと摺り足で後退りを始めた。


足元からは「こすれる!拙者のプリチーバデーが地面にすりおろされてる!拙者が無くなっちゃう!」等と聞こえてくるが気にしている余裕などない。



ガサガサ!



「っ!」


まずい。


私に逃げる意志があると感じ取ったのか、オオカミが草むらからゆっくりと姿を表した。


あわよくば見逃してくれないかと期待していたが、やはり駄目らしい。


石か何かを拾って投げてみる?

…駄目だ、投げられそうな物がポルケリウス位しか周りに落ちてない。


餌にしてしまっては、見知らぬ異世界で一人きりになってしまう。あくまでも最後の手段にしておかないと。


そうこうしている間にも、オオカミはジリジリと此方ににじり寄って来ている。もう時間など幾ばくもないだろう。


ここは一か八か…


「ポルケリウス、走るわよ!」


そう言い残し、私はオオカミと逆方向へ一目散に駆け出す。


「へぁ!?ま、まってぇ!!拙者先程のお仕置きごほうびの影響で後ろ足が痺れて動けないのぉ!!」


「飛びなさいよ!!」


「ア,ハイ…あ、らくちーん」


危機感も無く、「立った!拙者が立った」などとはしゃぐ駄豚ポルケリウス

うん、やはりここで餌にした方が良い気がしてきた。



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