04・ふくの神?いいえふくの神です
「いやー、拙者名も無き端神であるからして、誰かに頼られたり信仰を受ける事なと滅多にありませぬ故。いやー嬉しかったなー!」
困惑する私を余所に、ポルケリウスは嬉しそうにぶひひ、とニヤケている。
「……えっと。話についていけてないんだけど……私、アンタを信仰したことなんてあったっけ?」
「ええ!?ヒドゥイ!!あれほど拙者の事を求めて下さったではありませぬか!!昨日の夜だって寝かせてくれなかったのにぃ!!忘れたとは言わせませんぞ!!」
酷い、拙者とは遊びだったのね、拙者の御利益だけが目当てだったのね……などと人聞きの悪い事を喚き散らしながらヨヨヨ…とその場に泣き崩れるポルケリウス。乙女座りで。
「いや、だから私、神様に祈った事なんて……ん?」
ちょっとまて。
昨日の夜?
「えっと……一つ確認なんだけど……アンタって《福の神》…なのよね?」
「そうですぞぉ…いかにも拙者この世全ての衣服を司る、由緒正しき《服の神》にござるよぉ…」
「え?」
「え?」
………《服》の…神?
「……あ!?あーあー!!うん!確かに私、アンタの事を信仰してたかも!」
そうだ、確かに私は服の神を頼った。
「この衣装なかなか完成しなくて、昨日の夜も泣きながら『コスプレの神様助けて~』って祈ってたっけ!」
具体的にはコスプレ衣装のイベント締め切りに対しての神頼みという形で。
そうすると、毎回不思議と完成が早くなる気がするのだ。
「そっか!あれアンタのおかげだったんだ!!」
「…その通り!拙者微力ではありますが、いつも陰ながら紫煙させて頂いた次第です!!」
私の言葉に自信を取り戻したのか、ポルケリウスはみるみる内に元気を取り戻しふんす!と胸を張る。
「うん!いつもありがとうね」
「いえいえ!」
「………」
「………」
だが不自然な沈黙の後、キョトンとした表情でこちらを見つめてくる。
「え?終わり?」
「え?」
「え?」
私はしっかりと日頃の感謝を伝えた。なのに一体何が不満なのだろうか。
「いやそこは、日頃のお礼として拙者に協力してくれる流れじゃないのかなーと、拙者これこのように思ったりなんかしちゃう訳なのですがー」
控えめな態度で、だが確固たる意思を持っておずおずとそう切り出す。
「その、拙者としても、普段お手伝いをしているわけで…ねぇ?ホラ、拙者曲がりなりにも神なワケですしぃ?」
まるで私が間違っているかの如く。さもそれが当然かの如く。
その態度に少々カチンときた。
「…いや、そのりくつはおかしくない?」
「ぶひ?」
そう、こちらにだって言い分はある。
「だってさっきアンタ言ったわよね?神様と人間は相互関係だって。私が信仰?したおかげで、アンタは力が貰えてた訳なのよね?言わばwin-winじゃない?」
「え、ええまあ…」
「だったら、話はそこで終わりじゃない」
「で、ですがそのぅ……」
目に見えて意気消沈するポルケリウス。だが私のバトルフェイズはまだ終了していない。
「それに、神様が信徒に信仰の強要するのも何が違わない?信仰って個人の自由でしょ?」
「…あ、いや……」
「第一、私別にアンタの信者ってワケじゃないし。アンタの存在だって今はじめて知ったワケだし。それを勝手に信者扱いするのはおかしくない?そりゃいつも助けて貰ってたのは感謝してるわよ?でもそれと信仰心は別問題じゃないの。なのに死んだからって勝手にこんな場所に連れてきていきなり言うこと聞けはおかしくない?おかしいでしょ?そもそも信仰って言うのは…」
「もう止めてぇ!!拙者のライフポイントはとっくに0にござるぅ!!」
とうとうポルケリウスから泣きが入った。