03・信仰?なにそれおいしいの?
「お願い?私に?」
「ア,ハイ…そのー、些か手前勝手なお話となるのですが……おこらない?」
「……内容による」
グネグネと体をクネらせながら「どうしよっかなーやめとこっかなー」等とこちらに聞こえるレベルの小声で呟きつつ、時折捨てられた子豚の様な眼差しを向けてくるポルケリウスに若干イラっとしつつ、私は話を促す。
「えーでわでわ…話と言うのは他でもありません。」
ぶひん。と一つ咳払いをした後、ポルケリウスは真剣な表情で私を見つめ返す。
その真っ直ぐな視線に、知らず知らずの内に私の喉がゴクリと音を立てた。
「ボクと契約して魔法少女に」
「おい」
私は思わず足を踏み鳴らした。地面は無いが、何故かきちんとダンと音が鳴り響く。
「あ、違った」
リテイク!take2!等と宣う駄豚を冷めた目で睨み付けるも、駄豚は特に気にした様子も無く……いや、若干頬を朱に染めて息を荒げながら話を続ける。
「拙者の信徒となって、信仰を集めて欲ちいのですぞ!」
「…はぁ?」
「順を追って説明致しますとですな」
そう言いながらポルケリウスは背負っていたリュックの中をゴソゴソと漁り、
にゅん!
中から巨大なホワイトボード(キャスター付き)を取り出した。
「え……な……」
突然の出来事に、私は池の鯉の様に口をパクパクさせる事しか出来なかった。
「……あ!四次元ポケ」
「言わせねぇよ!?」
・・・ ・・・ ・・・
「えー、そもそも。我々神というものは、人々の信仰心によって成り立っているのです。言わば人と神は相互関係、共存ですな。」
ポルケリウスはキュッキュっとホワイトボード(どうやって取り出したのかはもう気にしない事にした)に図解を書き込んでいく。アニメ調のイラストが無駄に上手くて腹が立つ。
「神は人々の願いを叶える事により信仰を集め、集めた信仰心を糧にさらに多くの人々の願いを叶える……その循環…無限の螺旋エネルギーにより、世界は回っているのです!」
握り蹄に力を込め力説するポルケリウス。
「…なのですが、不精この拙者、まだまだ駆け出しの身でして、人々の願いを叶える為の力…元手となる信仰が足りていないのです。所謂、『服を買いに行く為の服がない』状況ですな。」
「つまりこういう事?その元手……信仰を集める手伝いを、私にして欲しい…と。」
「 Exactly.(その通りでございます)」
私の言葉をポルケリウスは綺麗な一礼で肯定する。
だが、一つ引っかかる事があった。
「……一つ、良い?」
「はい、ケイトくん。何ですかな?先生はトイレじゃありませんぞ?」
「どうして私なの?」
そう、何故私が選ばれたかについてだ。
こう言っては何だが、私は何処にでも居るような普通の人間だ。
仮にも神様に信徒として選ばれる様な特別な能力等持ち合わせていない。
「それはもちろん、ケイト殿に拙者に対する強い信仰心があるからですぞ!」
「え?」
なにそれ初耳。