第二話
この世界では、15歳になると神の恩恵<ギフト>が与えられる。これはいわゆる職業で、この世界では神の恩恵<ギフト>によりその後の人生が大きく左右されることになる。「戦士」になりたいと思っていた青年がいたとして、神の恩恵<ギフト>が「僧侶」だった場合、どうやったって「戦士」の神の恩恵<ギフト>を与えられたヤツには「戦士」としては勝てない。もちろん、その運命にあらがって、別の職業に就くことも可能だ。だが、それはすなわちいばらの道であり、その道で大成できるモノはほとんどいない。そんな別の道で成功しているのは、英雄譚に出てくるヒーロー達だけだ。現実の世界には残念ながら存在しない。少なくともそんな噂は聞かない。世界のどこかに、与えられた神の恩恵<ギフト>を上書きする能力があると聞いたこともあるが、それも物語の世界の話なのだろう。
神の恩恵<ギフト>は、運命。
あらがえない運命に、この世界では一喜一憂し、その運命と共に生きる。それがこの世界の理なのだ。
だからこそ、僕は神の恩恵<ギフト>が与えられる前に努力した。それが運命を左右する最大限の努力だと思ったから。「勇者」や「英雄」なんて神の恩恵<ギフト>は高望みかもしれない。でもそれなりの職業に就くには、それなりの神の恩恵<ギフト>が必要なのだ。そしてそれはやり直しがきかない。だからこそ、与えられる前に努力を惜しまなかった。この世界のどこかに、もし神様がいるのだとしたら、そんな僕の努力を見逃すはずがない。幼いながらにそう信じて生きてきた。
そして僕は、15歳の誕生日。喜々として神の恩恵<ギフト>が与えられる神の協会の門をくぐったのだ。