1.プロローグ いきなりの冤罪と旅立ち
初めて小説を書きました。よろしくお願いします。
1.プロローグ いきなりの冤罪と旅立ち
深夜12時、仕事途中のパソコンの画面がブラックアウトした。
壊れたのかと思ったが、間髪入れずに画面に文字が映る。金一は手にした缶コーヒーを一度机において成り行きを見守る。エラー内容でも出るのかな?と構えたが、映る文字は簡単な一文
<あなたの罪は重い>
なんのこっちゃと思った瞬間、目の前にいっぱいに大草原が広がった。
仕事中のデスクはそのままに、座っていた椅子が土にめり込んだせいで、金一は椅子から転げ落ちた。バサバサと机に立てかけていた書類も地面に散らばった。転げたまま見えるのは視界いっぱいに広がる空と白い雲。そのまま横たわったまま数十秒。
頬にあたる草の匂いはこれが現実だと思わせるのに十分なリアルがあった。
立ち上がり、椅子を立てる。
ぐいっと伸びをし、パタパタと服の土を落とした。
「これは…」
隣にいたはずの同僚に声をかけようと見たが、いなかった。独りぼっちである。なんだか少し恥ずかしさを覚える。
ぐるっと、周りを見渡せばあるのは木、空、岩、草、土、遠くに山。
見事に何もない。頭でも打ったのかな…。
ふと見ると、座っていたデスクと自分だけがこの草原の異物感まるだしで、なんだか面白く思える。おしゃれな本の表紙や映画のポスターにありそうだなぁなんて思う。
違うそうじゃない。ぶんぶんと頭を振り、椅子に座り直して何が起こったか考えてみる。
1秒、10秒、1分、5分…。
だめだ。全く理解できない。表面上凛々しくデスクに座る金一は、傍から見ればさぞ落ち着いているように見えるだろう。
ところがどっこい内心パニックである。過去最高のパニック状態である。
動物は恐怖の感情でいっぱいになったとき、身動きとれなくなるアレだ。蛇に睨まれたカエルだ。ほら見ろ、現に手が震えているじゃないか。日差しがこんなにも暖かいのに冷汗がとまらない。
すると、唐突にパソコンが音を立てた。
<ピコッ>
<ビクッ>←金一
心臓の鼓動が加速する。金一はわりと臆病であった。
恐る恐るパソコンを覗くと今まで何も映っていなかった画面に無機質な文字が流れる。
<異世界へようこそ>
なんのこっちゃ。そう思いながら震える手で缶コーヒーを飲み直す。
続けてこうだ。
<あなたの罪は重いです>
<この世界で償いをどうぞ>
<すべてが終れば、願い成就したらどうですか>
<贖罪残り100000000>
日本語が不自由なメッセージはそこから変わる気配がない。
つまりはこういうことかと簡単に整理する。
このパソコンへのメッセージに主は俺にこう言いたい訳だ。
「貴方は罪を犯したので、この異世界で贖罪を行いなさい。さすれば願いが叶うでしょう」
金一は一人で反芻し、少し黙る。
…冤罪じゃねぇか。
さすがに自分も聖人のような人生を歩んできたわけでもないが、そんないきなり贖罪を求められるようなことをした覚えがない。
例え、自分の知らぬ所で無意識に何かしでかしていたとしても異世界はないだろう。
金一は考えれば考えるほど憤りを感じ始めた。
それに最後の数字だ。もし予想通りだとした贖罪を1億回しなければならないのだろうか。
途方もない回数じゃないか。まず贖罪ってなんなのか。そもそもここはどこなのだと空を見上げると、トカゲみたいななにかが飛んでいた。
…さらに太陽が3つある。左、真上、右と見事な三角形。
金一は考えるのを止めた。
うん、とりあえず、人を探そう。
幸い山道のような整った道が見える。そこをたどれば人がいると信じよう。
そう思い、金一は行動を開始する。
持っていくものは念の為に紙とペン、残念ながら他は必要そうなものもない。
この場所を離れると決めると急に心寂しくなる。留まっていても無駄だと振り切る為に缶コーヒーの空き缶をくそったれめと草原へ投げつけ歩き出す。
少し心が落ち着く。と同時に画面が映す数字が<100000000>から<100000001>になったことに金一は気づかなかった。
数日が経った。
金一は山賊になっていた。