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夢見の悪い幻想録  作者: ごまみりん
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糸口

[八雲の濡れ仕事(ウェットワークス)担当]



自室。壁や天井には資料が隙間無く貼り付けられ、床にも所狭しと資料が広げられている。


そんな酷い有り様の自室でタバコをふかす。


あれからまた3体、両目の抉り取られた死体が上がった。未だ手掛かりは無し。行き詰まっていた。


「主様……入るわよ」


障子の向こうから声が聞こえる。式だ。


「従僕か……」


「失礼するわ………煙いわね」


「タバコ吸ってんだから仕方無いだろ…………で、何か分かったか?」


「にとりがリストアップした奴らを締め上げてきたわ………。全部ハズレよ」


式の方もハズレ。熱狂的な信者や隠れ信者がハズレと来た。本格的にこちらも暗礁に乗り上げたかもしれない。


紫煙を吐く。式が文句を言ってるが耳に入れない。


犯人は確実に[目隠し]の信者だ。それは間違い無い。だが[目隠し]とは違う作風を持っていて、芸術性が違う。


それに自己顕示欲も感じられない。表に出ようとしない。[目隠し]と違い作品の数が少ない。創作意欲が沸かないのだろうか?地上で9体、地底と合わせても20にも満たない。



「どうして、作品を作らない…………」


苛立ちと疑問が口に出てしまう。


「主様ねぇ……作れって言って、ポンって作られても困るのは私達なのよ…………」


確かにそうだ。式に一本取られてしまった。


紫煙をもう一度吐く。宙に消える煙の先には遺体の写真。




「何故作らない……………いや、作れない?」


何故作らない、表に出ないという疑問。その理由が作りたくても作れない、表に出たくても出られないとしたら、作品の数が少ない説明がつく。


もし犯人が作品を自由に作れない環境にいるとして、それはどんな環境だ?フリーじゃない、何かしらの勢力や組織に属している環境。


反体制派か?いや、それなら無差別に殺す必要は無い。被害者は皆関連性は無かった。それに過激な反体制派なら別に作品を自由に作れない環境という訳では無い。


そこまで思考が回った時、1つの仮説が浮かび上がった。


僕の式―――花の大妖・風見幽香は僕が1つの仮説を導いたと見抜いたらしく、オーダーを待っている。


そこにタイミング良く、にとりが僕の部屋に入ってくる。


「亮、地底の厳紡から通信……繋ぐよ」


インカムから厳紡の声が聞こえる。


「佐山さん、動きがあったもので………至急連絡をと」


「ありがとう……で、何があった?」


「はい。鬼衆の若い物が有力な情報を拾って来ました。地底での遺体発見現場の周辺でポンチョを着た妖怪が目撃されていました。地上付近でも目撃されたようで、警備担当の若い物もコイツを見たそうです。警備担当や目撃者によると顔は見えなかったそうですが、背格好からして女じゃないかと」

「情報ありがとう。後はこちらで引き継ぐ。地底に行ったときは一杯奢るよ」


「楽しみにしてます。では……」


厳紡からの通信を切り、新しいタバコに火をつける。式とにとりがこちらを見ている。



「にとり、[会議]に参加してた勢力の事件が発生した時期からの動きを調べてくれ。それと各勢力をリアルタイムで監視。逐一報告を上げるように」


「了解。監視には外の世界の物を見よう見まねで作ったUAVを使うよ。運用テストも兼ねてね」


「お前、UAVまで作ったのか……」


「まあね……仕事もやりやすくなるでしょ?」


「主様、私はどうすればいいのかしら?」


「従僕は暴れる準備をしておいてくれ」


「対多人数になるの?」


「いや、命蓮寺対策だ」


「了解………殺すの?」


「邪魔になるのなら殺す」


「わかったわ………」


「何時でも出られるようにしておいてくれ」


式は引き裂いたような笑みを浮かべた。僕の式はどうやら荒事が好きなようだ。

「やっぱりあなたの式になって良かったわ……」


「どうした?」


「あなたは私のやり場の無い殺意や衝動を存分に使ってくれるもの………」


本当にどうしようも無い式だ。


「それは結構。これからも存分に使わせてもらうよ…………さぁ、始めよう」








八雲の掃除屋の仕事を

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