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夢見の悪い幻想録  作者: ごまみりん
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賢将

命蓮寺目線


[彼女は策を練る]



命蓮寺本堂


風見幽香によって跡形も無く破壊された本堂は人里の協力によって比較的速やかに再建された。


その本堂の中で正座し、佇む女性―――聖白蓮は何かを待っていた。



「ナズーリンですか?」


背後に立つ者の名を聖白蓮は言い当てる。


「今、戻ったよ」


彼女の待ち人、ナズーリンは帰還を告げる。


「どうでしたか?」


「聖の睨んだ通りだったよ。八雲は既に動き始めている。聖が言ってた彼が動いてる。」


「そうですか………」


沈黙。本堂は静寂に包まれている。


「彼は………」


沈黙を聖白蓮が破る。


「彼は犯人に辿り着いたら………確実に命を奪うでしょう。それが彼の仕事であり……彼の………………」


ナズーリンは何も語らない。まるで聖白蓮の想いを全て知っているかのように。


「それだけは阻止しなくてはなりません。犯人は闇に葬られてはなりません、裁かれなければいけない。殺させてはいけません………彼の為にも……」


「全く……聖は本当にお人好しだね。あんな奴の為に………」


ナズーリンは思い出していた。命蓮寺の本堂が消滅した日を。彼女達は為す術も無く蹂躙され、仲間達を傷つけられ、帰るべき場所を壊された。


彼女達は風見幽香を憎んだ。復讐を企てた。しかし聖白蓮に止められた。それでも彼女達は大事な場所を奪っていった風見幽香を許せなかった。彼女達の教義に反しても許せなかった。


一度は引き下がった彼女達だが諦めてはいなかった。彼女達が再度、風見幽香の首を獲りに行こうとした時1つの知らせが入った。風見幽香は地底の反地上勢力に人質を捕られ、薬物で洗脳されていたと。


彼女達は悔いた。恥じた。人妖平等を掲げるにも関わらず、一時の感情に流されて救うべき者を殺そうとした。その事実は彼女達の心に深く突き刺さった。



しかも風見幽香は既に洗脳を解かれ、人質も保護されて主犯達も拘束されたと言う。自分達の無力さを彼女達は噛み締めた。


ナズーリンは彼女達が為すべきだった事を為した者に興味が湧いた。風見幽香を式にし、吸血鬼の四肢を切り裂いた蓬莱人。八雲の掃除屋と呼ばれる男に。


男を見た感想は関わってはいけないと言う物だった。敵対すれば必ず命を落とす確証。時たま見せる笑顔の奥にある底知れない闇。


しかし聖白蓮はそんな男すら救済の対象とし、今回彼と敵対しようとしている。


いくら聖白蓮でも無事では済まない相手。最悪、死もありえる。


だから…………



「引き続き情報を集めるよ。八雲の動きも逐一報告する。彼との交戦はなるべく避けよう。」



「ありがとう。ナズーリン」



「礼なんかいらないよ……」




賢将は策を練る。彼女の大切な物を守る為、死に捕まらない為に。

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