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夢見の悪い幻想録  作者: ごまみりん
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諜報

[汚名返上か、それとも………]



「店長さん、厳紡さんいますか?」


僕は地底の飲み屋にいた。地底での捜査の責任者である厳紡から情報を貰う為だ。


「おう、座敷にな。厳紡ォ……」


以前のように座敷から厳紡が姿を現す。


「佐山さん、お待ちしてました。こちらへ……」


厳紡の後を追い座敷へ入る。


「さて、お話というのは……?」

「2日前、地上でも両目を抉り取られた死体が上がった」


厳紡が眉をひそめる。


「それで………?」


「人里の警備部隊は単なる反体制派同士の抗争と見ているが、八雲一家はこの件を危険視している」


「情報共有と合同捜査ですか………」


「いや、この件は僕に一任された。大っぴらには動かない」


「内密にですか…………それで、私共に何を?」


「遺体を見せて欲しい」










「こちらが地底で上がった遺体の1つです」


遺体安置所で厳紡に遺体を見せてもらう。両目を抉り取られ、身体を貫かれた死体。


「地上の物と手口は同じか……」

暴力性。荒々しさを押し出した野蛮な芸術。


「佐山さんは、もう犯人に目星を?」


厳紡の声が安置所に響く。


「いやまだそこまでは………。ただ、犯人は地上の妖怪である可能性が高い」


「私もそんな気がしてました。なんせ、鬼衆総出で捜査しても尻尾すら見えやしない」


「地上へ繋がる経路の警備を強化した方がいい。地底でまたやらないとは限らない」





遺体安置所を出て、道に出る。その時足下を一匹の鼠が走り去った。


その鼠へ発砲した。厳紡は酷く驚いた。


「佐山さん……一体!?」


「聞かれてたな……」


「聞かれてた?誰に……?」


「分からない。でもアレは只の鼠じゃない。僕達の話を聞いていた…………まぁ逃げられたけど」


「つまり、八雲、地底、人里以外にこのヤマに関わろうとする勢力が………」


僕の頭には1つの勢力が浮かんだ。



「命蓮寺か………」










厳紡とまた飲む約束をし、地上に戻ってきた僕はにとりに呼び出された。



「どうした、にとり?何か分かったか?」


「それはまだだけど、今日は暫く工房に籠った成果が出たからね。見せようと思って………」


そう言うとにとりはアタッシュケースを僕に渡した。


「開けてみて」


言われるがままアタッシュケースを開けると、そこには一着の黒いボディスーツが畳まれていた。所々に装甲(アーマー)が取り付けられている。伸縮性に優れ、着用者の身体にぴったりフィットするようだ。


「これは、戦闘用か?」


「そう、亮の新しい戦闘服だよ。今までのはもうくたびれちゃったからね………。今までの物と同じく防弾・防刄・耐爆性・耐魔術性に優れている上に、以前の物よりも隠密行動に特化させる為に環境追従迷彩を改良したんだ。コレは周囲の景色の変化に合わせてスーツに投影されたパターンも変化する」


新しい仕事着を眺め、より迅速に仕事が出来ると考えていると1つ疑問に思った。


「スキマポケットは?」


自室の武器庫と戦場を繋ぐ非常に便利な機能。あれが無くなるのは、いささか困る。


「あぁ……、それなら手首のスイッチを押して」


スーツの手首の部分には小さなスイッチがあった。それを押す


「………何も起きないぞ?」


「そうだね……HK416が欲しいって考えて」


「は?」


「いいから」


仕方なく頭の中でHK416を思い浮かべる。


すると、僕の手元にHK416が現れた。


「これは?」


「新型のスキマポケットだよ。私も詳しい事は分からないけど、空間・意識・思考・可視・質量の境界を弄ったらしいよ。スキマポケットに関しては紫も開発に加わるから分からない部分……ブラックボックスが多いんだ」


「つまり、思考すれば武器庫から勝手に来ると?」

「まぁ、そういう事だね。普段のスーツの方も順次改修していく予定だよ。使いにくい所とか不備があれば言ってね」


「分かった。ありがとう」


「お安い御用だよ」


ボディスーツを畳み、アタッシュケースへ入れる。にとりの工房を出ようとした時、1つ思い出し立ち止まる。



「なぁ、にとり………命蓮寺に使い魔を使う奴はいるか?」


「使い魔?」


「あぁ……式神とかでもいい。誰かいないか?」


「いや……いないと思うよ」


「そうか…………じゃあ、あの鼠は……」


「鼠?」


にとりの顔が険しくなる。


「あぁ………鼠だ」


「命蓮寺で鼠って言ったらナズーリンしかいないよ」


「ナズーリン?」


にとりがキーボードを叩くとモニターにデータが映し出された。


「ナズーリン、命蓮寺の構成員だよ。名目上は本尊代理の虎丸星の部下だけど、実際は本尊である毘沙門天の直属の部下。大方、虎丸星のお目付け役と言った所かな。彼女は野鼠を部下にしているらしい。命蓮寺の諜報担当、賢将とも呼ばれている」


「地底で今回の件を厳紡と話している時、鼠に盗み聞きされた。コイツの仕業で間違い無いだろう」


「という事は、命蓮寺が今回の件に介入してくるって事?」


「いや、介入してくるつもりなら紫さんの方に話が来る筈。話が来てないなら命蓮寺は独自に動いているという事だ」


「150年前の汚名返上……?」

「分からない。ただ、命蓮寺よりも早く犯人に辿り着けないと面倒事になりそうだ」


「いつも通り……」


にとりが小さく笑った。


「あぁ………貧乏くじだ」

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