不運
[柄じゃない]
「そうか………分かった。ありがとう」
藤原妹紅からの通信を切る。
「薬物か………」
LSDの様な物だろうか?どの道厄介な事になった。
メディスン・メランコリーが救出された事は喜ばしい。だがメディスン・メランコリーの無事で風見幽香との戦闘を回避する事が難しくなった。
戦闘になれば何回死ぬか分からない。あんなクレーターを作るような相手にどう戦えと言うんだ。
しかもまた高火力の攻撃手段を持つ相手。何故苦手な相手ばかりと戦闘になるのか、悪態をつきたくなる。
それに洗脳と来た。どうしたものか。
「にとり、今大丈夫か?」
僕はにとりの工房を訪れた。
「何だい?装備に不具合でも出た?」
にとりは作業を止めこちらを向く。
「風見幽香の詳細なデータが欲しい。頼めるか?」
「ちょっと待ってて、すぐに出すから……」
にとりはモニターに向き直った。
「これだよ……」
風見幽香のデータがモニターに映される。
「風見幽香と戦闘になった時に気を付けなければならない点は、奴の馬鹿げた火力の攻撃力だよ。特に命蓮寺にクレーターを作ったマスタースパーク。霧雨魔理沙の物とは比べ物にはならない程の威力だよ。さすがは本家本元と言った所かな」
「他に注意すべき点は?」
「そうだね……奴は魔法やスペル主体で攻撃してくる。一方格闘になると力任せの一辺倒。致命的な点としては奴の鈍足さかな。小回りが利かない相手だから素早く立ち回れば勝機はあるよ」
「そうか……」
「戦闘になるのかい?」
「可能性の話だよ」
「だが…」
「だが?」
「風見幽香は洗脳されている可能性がある。錯乱している状態の敵との交戦……」
「亮はいつも貧乏くじを引くね」
「全くだよ………」
にとりは笑う。
「で、殺すのかい?」
「まだ分からない。ただ、紫さんからは僕の裁量で動けと言われた」
「殺さないでって言うのは難しいだろうね」
「全く、貧乏くじばかりだ」
「そう………薬物ね」
「はい。藤原妹紅からの情報です。LSDの様な物ではないかと思います」
「LSDねえ………、あなたに一任してるけど生け捕りは難しそうね……」
「その時はいつも通りに………」
にとりの工房を出た後、八雲紫の部屋で僕は報告がてらコーヒーを飲んでいた。
「まあ、あなたなら慣れているでしょ?こういう仕事」
「慣れたくは無いですがね……」
「でもラッキーね。これで、霊夢と魔理沙を牽制する材料が手に入ったわ」
「それは何よりで……」
「ガムシロ取って……」
「どうぞ」
八雲紫はガムシロを少し入れる派らしい。
「で、居場所は?」
「彼女ねぇ………絶えず移動してるのよ。でもこのまま行けば、太陽の畑に行くでしょうね」
太陽の畑。彼女の活動拠点。
「太陽の畑ですか……」
「到達するのは、今夜0時よ」
「………………」
立ち上がり部屋を出ようとする。
「狂い咲いた花を散らしてあげなさい………」
「柄じゃないですね………花を散らすのは」
柄じゃないんだ。けど仕事だから………




