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夢見の悪い幻想録  作者: ごまみりん
35/85

救出

藤原妹紅目線終わり


[新たな暇潰し相手]




「美味いな………」


「でしょう?ここは勇義さんも行きつけなんですよ。あ、女将。もつ煮込み一つお願いします」


「あいよ」


私は星熊配下の鬼達と飲んでいた。伊吹萃香が見てくると行ってから3時間。なんやかんや目の前の鬼とも仲良くなってきている。どうやら新婚らしい。


「兄貴、萃香さん遅いっすね」


「まあ気にするな。あの人は気ままだからな。藤原さん、もう一杯如何ですか?」


「あぁ、頂く」


「お強いですね」


「鬼には負けるよ」


「はい、もつ煮込み一丁」


荒事の前とは思えないリラックスした雰囲気に飲まれてしまう。




「ほい、お待たせ」

私の隣の席に伊吹萃香が現れた。毎度毎度心臓に悪い現れ方をする。


「あ、萃香さん。もつ煮込み食べます?」


「ん。食べる」


伊吹萃香はもつ煮込みをつまみ、瓢箪の中の酒を煽った。


「ふぇぇ…、やっぱここのもつ煮込みは最高だねぇ」


「それで、何か分かったのか?」


「ん……あぁ、分かったよ。メディスンとか言う妖怪が監禁されてる場所とお前が探している連中の溜まり場。同じ場所だったよ」


「じゃあ、すぐにでも踏み込めるんだな?」


「まあまあ……慌てなさんな。後一時間程で連中の頭が戻ってくる。踏み込むならその時さね」


「そうですよ、藤原さん。慌てても良いことなんてありませんよ……。あ、もう一杯如何ですか?」


「……………頂く」


「もつ煮込みもどうぞ」


「もぐもぐ……美味いな……もぐもぐ……」


それから40分程飲んでいた。



「さ〜て、お前ら出るよ〜」


「は〜い」


店を出て郊外へ向かう。全く荒事の前とは思えない。


「藤原さん、私達にとって荒事は日常茶飯事なんです。故に藤原さんからしたらふざけている様に見えるかもしれませんが、どうぞご容赦ください」


星熊配下の鬼に丁寧に説明、謝罪されてしまって逆に申し訳なくなってきた。


鬼の口車に乗せられていると目的の地底の郊外にたどり着いた。


「あの建物か?」


「そうだよ。あの廃墟が連中の根城。ほら………来た。あいつが連中の頭さ……」


伊吹萃香が指差した先に1人の鬼がいた。鬼は廃墟の中に入っていく。


「人質の位置は?」


「分かってるさ。人質は私が押さえるよ。藤原の某は勇義の舎弟達と突入してくれ」


「妹紅だ」


「お前らも宜しく頼むよ」


「はい。お任せを」


人の名前を覚えない伊吹萃香はまた霧の様に消えた。


「藤原さん、では私達も……」


「待て」


「………何でしょう?」


「私の名前を言ってみろ」


「…………妹紅さんですよね」


八つ当たり等ではない。
















廃墟の扉の前に立つ。星熊配下の鬼達が合図を出すと同時に炎で扉を吹き飛ばす。



「何だ!?」


「何が起こった!?」


「人質は……?」


廃墟の奥から声が聞こえた。一気に廃墟の奥へと駆け進む。


「てめえら、動くな!!」


星熊配下の鬼が突入と同時に叫ぶ。


「てめえは星熊の………ずらかるぞ!!」


鬼達が逃走を図るが


「逃げんなあ!!」


死にはしない程度の爆発を起こす。


爆発が収まると鬼達は地を這いつくばっていた。



「おお、こっちも終わったようだね」


伊吹萃香が背後から声を掛けてきた。


「人質は?」


「ほれ」


伊吹萃香の腕にはメディスン・メランコリーが抱かれていた。


「無事だったか……」


「特に乱暴された跡も薬物を投与された形跡も無い。気絶してるだけだよ」



地に這いつくばっていた鬼達は星熊配下の鬼達に取り抑えられ、連行されようとしていた。


その時、連中の頭が笑い出した。

「何がそんなに可笑しいんだい……?」


伊吹萃香が連中の頭に詰め寄る。


「そのガキを出した所で、あいつは、風見幽香は止まらない………………」



「萃香さん、藤原さん、これを………ッ!!」


星熊配下の鬼が切羽詰まった声を出しながら此方に何かを持ってきた。持ってきた物をみた伊吹萃香の顔が曇った。


「これは………」


「何なんだこれ?」


錠剤とビンと注射器


「先日、勇義さん主導で地底の浄化作戦が行われました。その際地底の薬物の一大闇市場を摘発しました。そこから生産元を突き止め押収した筈の薬物です。妖怪が摂取すると強力な幻覚作用をもたらします」


「まさか……これを……」


「そうだよ………風見幽香に飲ませたんだよ。そこのガキをエサにしてな……」



「藤原妹紅………早く地上に戻れ」


伊吹萃香が俯きながら言った。

「こいつはこっちで処理させてもらう……」

明らかに怒りに震えていた。


「藤原さん、これを投与されたという事は極度の錯乱状態にあると思われます。こいつらを絞り上げないと分かりませんが、最悪洗脳状態にあることも考えられます。今すぐに地上へ戻って地上の有力者へこの件を伝えてください」


「分かった。えっと………」


そう言えば散々世話になったこの鬼の名前を私は知らなかった。


「名乗るのが遅れましたね。厳紡(げんぼう)と申します。また一杯やりましょう藤原さん」


「妹紅でいい。今度は生意気な腐れ縁も連れてくる。じゃあな」



私は地上へと走った。

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