許諾
藤原妹紅目線[日本酒は好きですか?]
地底・星熊勇義邸
私は鬼の頭領の前にいた。
「蓬莱人が鬼に何の用だい?ケンカかい?」
「顔を見れば分かるだろう。おふざけはナシだ」
星熊は杯を煽ると、一つ息をついた。
「…………で?」
「先日の風見幽香の件。あの件に地底の鬼が関わっている事が分かった」
「……………」
星熊は無言のまま、もう一杯杯を煽った。
「メディスン・メランコリーも地底にいる。その鬼達の部下に誘拐された」
「………………」
尚も沈黙の星熊。
「今回の件に関わった鬼達は反地上的思想をもった組織に属している。何か知らないか?」
「………………確かかい?」
やっと星熊が口を開いた。
「その情報は確かかい?」
「あぁ、確かだ」
更に一杯、杯を口に運ぶ星熊。
「……………いるんだろ?萃香?」
星熊が言うと、傍らに2本の角を生やした少女が現れた。
「何だ……気付いてたのか」
鬼の四天王の一角を成す伊吹萃香はさぞつまらなさそうに言った。
「お前は何処にだって居るだろう……。それより話は聞いてたな?」
「うん。それで私に何をしろと?」
「お客さんの手伝いをしてくれ。私の配下も何人かつける」
「あいよ」
「おい、誰かいるか?」
星熊が叫ぶと配下の鬼が来た。
「お呼びでしょうか?」
「地霊殿に行って、一つ大きな捕物をやるから宜しくって伝えてきてくれ」
「分かりました」
配下の鬼が部屋を出ていくと
「さて、藤原妹紅。後は好きにやってくれ。只、出来ることなら生け捕りにしてやってくれないか?」
「善処する。それとありがとう。協力感謝する」
「いいってことよ」
星熊はそれだけ言うと酒を煽った。
星熊邸を出ると伊吹萃香が隣にいた。
「さて、藤原の某よ」
「妹紅だ」
「反地上主義の鬼なんて、この地底にはわんさかいる」
「そうか……足を使うしかないか」
長くなりそうだ。急いでいるが、まあ仕方無いか。
「が、地底と地上には不可侵条約がある。大抵の奴は不可侵条約のせいで目立った事が出来ない。目立った事をした奴が地底の中心部にいられる訳が無い。ここの連中は目ざといからな。それにそのメディスンとか言う妖怪も、見慣れない妖怪が中心部にいれば気付く筈だ」
「という事は……」
「おい」
伊吹萃香が声を掛けると、星熊の配下が地図を出す。
「地底の郊外、勇義や地霊殿の影響力が弱まる場所にいるだろうね。それに地上から比較的近い場所って言ったら…………ここらかね?」
伊吹萃香は地図の端を指差す。
「藤原さん、萃香さん、先遣隊を潜り込ませますか?」
星熊配下の鬼が提案する。
「いや、私が見てくる。お前らはどっかで酒でも飲んでてくれ」
そう言うと伊吹萃香が目の前から消えた。
私が呆気に取られていると隣にいた星熊配下の鬼が
「藤原さん、日本酒は好きですか?」
「あ……あぁ」




