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夢見の悪い幻想録  作者: ごまみりん
33/85

急襲

[あなた如きに理解できる訳が無い]



[会議]から6日後。幻想郷中に張りつめた空気が漂っていた。


それもその筈、各勢力は風見幽香の襲撃に備え迎撃体制を整え至るところが物々しい事になっていた。人里や妖怪の山は完全武装の警備部隊と天狗が四六時中警戒してる始末だ。


そんな事態の中、僕は自室で茶を啜りながら装備の点検を行っていた。我ながら呑気だと思う。だが、まだ動ける状況に無い。


しかし、状況はすぐにやってきた。


「り、亮!!」


八雲藍が僕の部屋に駆け込んできた。


「どうしたの?橙が宿題やらないとか?反抗期とか……」


「命蓮寺が襲撃された!!被害は……」


僕は彼女の声を遮るように部屋を出た。


「被害は?」


「本堂は全壊、重傷者が数名……」


「時間は?」


「30分前だ……」


そのまま八雲紫の部屋へと向かう。


「紫さん」


「私達も動くわよ……」


八雲紫は笑みを浮かべていた。

「紫様、如何様に……?」


「そうね………亮さんはいつも通りに。あなたの裁量で動きなさい」


「了解」


「私と藍は霊夢と魔理沙への妨害工作よ。既に霊夢は動き始めているわ。今回の件、勝手に解決されては困るのよね……」


「亮!!」


にとりが入ってきた。


「藤原妹紅から連絡だよ」


「繋いでくれ」


インカムから藤原妹紅の声が聞こえる。


「私だ。収穫があってね……。メディスン・メランコリーは確実に地底にいる。裏も取れた。地底から出てきた妖怪の証言だ。これから私は地底に行って星熊勇義に話を通してからメディスン・メランコリーの救出に行く。それと風見幽香を脅迫している連中なんだが、恐らく鬼だ。鬼を中心にした反体制………いや反地上勢力の仕業だろう」


「そうか……わかった。地底は頼む」


「命蓮寺の件は聞いた。地上と風見幽香は任せるからな」


「楽な仕事じゃあないな」


「私だって鬼とやりあうんだ。楽じゃない…………終わったら一杯奢ってやる。何かあれば連絡してくれ」





「風見幽香を脅迫している連中の素性が大体分かりました。地底の反地上勢力との事です。そちらには藤原妹紅が向かいました」



「分かったわ。取り敢えず命蓮寺に向かいましょう………」


八雲紫は命蓮寺にスキマを繋げた。








話の通り、命蓮寺の本堂は見る影も無く壊されていた。と言うよりは本堂のあったであろう場所にクレーターが出来ていた。


「これは………、マスタースパークか……」

八雲藍が呆然と呟いた。


「まあ、十中八九そうでしょうね……」


境内には人里の警備部隊や八意永琳等の姿が見えた。瓦礫の撤去作業や重傷者の治療等で慌ただしく動いている。



「紫さん…………」


聖白蓮が覚束ない足取りでこちらに歩いてきた。


「随分手酷くやられたわね………被害の詳細は?」


「本堂はご覧の通りです……。それと………一輪、星、水蜜が怪我を………一輪と水蜜は意識が……」

「そういうあなたも余り良い状態とは言えないようね」


立っているのもやっとのような聖白蓮を見て八雲紫が言う。


「私は大丈夫です……。紫さん、1つ聞いてもいいですか…?」


「何かしら?」


「………風見さんはどうなるんですか?」


この期に及んで、他人の心配と来た。


「それは分からないわ。他の勢力がどう動くかは分からないけど、霊夢は動き出したわ……」


「霊夢さんはどうするのでしょうか………まさか風見さんを…」


「さあ………まあ殺しはしないでしょうね」


聖白蓮は安堵の表情を浮かべた。


「じゃあ………紫さんは?」


「…………………」


「紫さんは………風見さんをどうするつもりですか?」


聖白蓮は八雲紫を見据えている。



「どうもしないわよ……。私達はね厄介事が嫌いなの」











「亮さん……」


帰る直前に聖白蓮が声をかけてきた。


「あなたは………彼女の命を奪いますか?」


「どういう意味でしょうか?」


この魔法使いは僕にまで風見幽香の命乞いをするのだろうか?


「そのままの意味です」


「そんなリスクの高い事、好きでする筈無いでしょう」



聖白蓮は八雲紫と同じように僕を見据え言った。


「何故、そんなにも命を合理的に扱えるのですか?」


「………………発言の意図が分かりません」


「あなたなのでしょう?人妖問わず反体制的な者を殺していたのは……」


「………………」


「それに寺子屋で私に向けたあの目…………あなたは何を憎み苦しんでいるのですか?」


「あなたには関係無い」


「でも………」


「あなたには理解できない」


魔法使いの言葉を遮る。聖白蓮は僕から目を逸らさない。


「あなたに救いがあることを祈ります」



僕は魔法使いに背を向けた。








「僕はもう救われていますよ」








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