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夢見の悪い幻想録  作者: ごまみりん
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議決

[頭に血が登った子供]



紅魔館の一室。円卓に座った者達の視線は館の主、呼び出した張本人に向いていた。


「それで……[会議]を召集した訳を聞かせなさいよ」


口火を切ったのは博麗霊夢だった。


「…………咲夜」


「はい」


レミリア・スカーレットの後ろに控えていた十六夜咲夜が前に出た。


「皆様、現在この紅魔館の警備レベルは最上位に設定されています」


「それがどうしたのよ?」


「1週間前から」


そこで何人かの円卓に座る者達の表情が変わる。理解したのだ。


しかし理解できない巫女が食ってかかる。


「だから、勿体振らず言いなさいよ!!」


メイドは半ば、巫女の洞察力の無さに呆れながら続けた。


「単刀直入に言います。8日前、紅魔館は襲撃を受けました。被害は一部設備の損壊。怪我人、死亡はゼロ」


「なら良かったじゃない。で、誰があんたらにケンカ売ったのよ?」




「風見幽香です」



その瞬間その場の空気が変わり、その場にいた者達の表情は驚愕へと変わった。


風見幽香。幻想郷にいる妖怪の中でもトップクラスの実力を持つ。四季のフラワーマスター。太陽の畑を活動拠点としつつも幻想郷中を点々とするどこにも属さない。藤原妹紅(蓬莱人)と同じく相対する事を禁忌とされる者達の1人。

その禁忌が紅魔館を襲撃した。その事実は各勢力の存続を脅かす物であった。


「我々、紅魔館は[会議]連合による風見幽香の討伐作戦をここに提案します」


メイドは高らかに宣言し後ろに下がった。


しばらくの間円卓には沈黙が重くのしかかった。


「私は賛成だわ」


また巫女が口火を切った。


「幽香と言えども今回はやり過ぎだわ。博麗の巫女として見逃せない」


「紅魔館が風見幽香の逆鱗に触れる事をしたんじゃないの?」


そう言ったのは目玉の飾りを付けた帽子を被った少女。守矢神社の神だった。


「その可能性もあるな。レミリア殿如何か?」

警備隊長も同調する。


「それは無いわ。私達と風見幽香には接点は1つも無い。今回の件は明らかな宣戦布告よ。紅魔館以外の勢力にも矛先が向くかもしれない。だから今の内に叩くべきじゃないかしら?」


「講和という訳にはいかないのか?」

商工会会頭代理の上白沢慧音は護衛の藤原妹紅に見守られながら発言する。


「私も慧音さんと同意見です。先ずは風見さんと話してみなければ…」

聖白蓮も上白沢慧音に同調する。


「私らは戦になればうれしいが正直地上の件だからなあ。ま、取り敢えずは賛成派だな」

地底代表代理、星熊勇義は盃を片手に賛成した。


「永遠亭と妖怪の山は?」


「我々は先日の件の事後処理が片付いて無い故、いずれにしろ協力は出来ませぬ」

妖怪の山の代表、天魔と呼ばれる男は棄権。


「私達はそういう荒事には向いてないの。せめて怪我人の治療ね」 永遠亭代表代理、八意永琳も棄権した。






「さて、あなた達はどうするのかしら……?八雲紫?」


館の主の言葉と共に、視線が僕達に向く。幻想郷の管理者の決断を、賢者の言葉を待つ。




僕の主、八雲紫は








笑った。鼻で笑った。




「…………何がそんなにおかしいのかしら?」


館の主は怒りを顕にしている。

「私の館が、私達の家が襲撃された事がそんなに面白いかしら?年増」


「えぇ、面白いわ。まんまと相手の術中に嵌まって踊らされているあなたの姿がね……………お子様。ねえ幽々子、永琳」


八雲紫はレミリア・スカーレットを憐れむような目で見た。幽々子と呼ばれた女性は終始笑顔で八意永琳は呆れた表情を浮かべてた。



「どういう事よ!?私が踊らされている?答えろ!!」

館の主は牙を剥き出しにし、手には紅い槍を携えた。



だから、四肢を切り落とした。


「なっ!?」


吸血鬼は何が起きたか分からないようだった。四肢は再生しない。

メイドがこちらに向かってきた。周りの風景が白黒になり動きが止まる。時が止まっているようだ。


だが別に問題は無い。



平然と動く僕がそんなに信じられないのか、何かを悟ったのかメイドは吸血鬼を抱え逃げようとする。


逃げられても困る。だからメイドの足をP226で撃ち抜く。


すると周囲の風景が元に戻る。



メイドの頭にP226を突き付け引き金を引こうとする。


「もういいわ亮さん」


八雲紫がストップをかけた。八雲紫は倒れる吸血鬼とメイドの元へ行き愛玩動物へ喋りかけるように言った。


「だからあなたはお子様なのよ。痛い目を見ないと分からない………」


お子様は涙を浮かべている。自業自得だろう。力量が離れた相手にケンカを売ったのだから。


「亮さん、戻してあげて。永琳はメイドの足をお願い」


八雲紫に言われて、吸血鬼の再生能力を侵食するのを止める。吸血鬼の四肢はすぐに元に戻った。


「さて、お子様の躾が終わった所で。私達は独自で動くわ。そっちはそっちでやって頂戴」


「よろしければ理由をお聞かせ頂きたいのですが…」

聖白蓮の質問。


「そうね………亮さん、あなたから説明して」


視線が僕に突き刺さる。






「八雲紫様、藍様の護衛の佐山亮と申します。今回我々八雲一家が独自行動をする理由は3つあります。1つはこの[会議]自体意味が無いからです。この[会議]が召集され風見幽香を共同して討伐する事が敵の狙いでしょう。2つ目、風見幽香の行動に関する謎です。彼女程の妖怪が何故このような自ら戦争を起こすような真似をしたのでしょう?更に1人として怪我人や死人が出てないのもおかしい。この館ごと消す事など造作も無いでしょう。彼女は何処の勢力にも属してない。孤立無援の中戦争をするとは思えません。3つ目、幻想郷中で起きつつある不審な動きです。その中でも我々が注目した物は地底への入口周辺で妖怪数体が金髪、赤い服の少女を無理矢理連れていく様子が目撃されたという事です。風見幽香の身辺情報の中にメディスン・メランコリーという妖怪との交友関係があります。随分と仲が良いようです。今回目撃された少女とメディスン・メランコリーの特徴は一致しています」



「つまり………」

踊らされていたお子様が呟く



「風見幽香は何者かに脅迫されています。その何者かからの指示で襲撃したというのが妥当でしょう。怪我人や死人すら出さなかった理由は分かりませんが、レミリア・スカーレットさん。あなたの性格を利用しようとしたのでしょう。被害が奇跡的に少なかったからすぐに報復準備をし、[会議]で提案する。相手の思惑通りです」



場は静まり返る。


「私達も独自行動するわ〜」

西行寺幽々子が発言したと同時に全勢力が棄権した。















[会議]は終わった。

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