化物
[生きるとは何かを喰らい糧にすること]
「………こうするのさ」
軽く咀嚼し、飲み込む。
食道を通り胃に落ちる。
「!?……あ゛ぁあ゛あ゛ああああぁあ゛ああああああ゛あ゛!?うぅ……ア゛あ゛ぁあ゛あ゛ああぁあぁあ゛あうあああああ゛あ゛?」
筆舌に尽くしがたい痛みが僕を襲う。身体中の細胞という細胞が組み変わるような、細胞が暴れるような痛み。全身の血液が沸騰するような感覚。ブースタードラッグの副作用なんて比じゃない。
「……………!!」
藤原妹紅が何か叫ぶが聞こえない。五感が狂っている。視界は極彩色に煌めき、聴覚は耳鳴りのような高音に支配されている。意識を保つ事が出来ない。もう限界かと思った時………
<お兄ちゃん………>
梨佳の声が聞こえたような気がした。
「ぁああああ゛あ゛ああああぁあ゛ああああああ゛あ゛!!」
そうだ生きなくちゃいけないんだ。梨佳の分も、ベンの分も。だからこの痛みも喰らい尽くす。痛みを糧に………
「その姿……………お前………あり…えない……」
痛みが消えた時藤原妹紅が呆然と立ち尽くす姿が目に入った。
「何故だ!!何故バケモノになった!?何故人間のまま終わろうとしなかった!?」
藤原妹紅は僕を親の仇のように睨み付け、憎しみと哀しみが入り雑じったような声で叫んだ。
「僕は人間だ…。アンタだって人間だ…」
「ふざけるな!!こんな身体になって……何が人間だ!!私は………私達は死を許されないんだぞ!?愛する人が死んでも……死ねない……」
「そうか……やっぱアンタとは合わないな」
「何を……」
「僕は生きなくちゃいけないんだ。守れなかったみんなの分も生きなくちゃいけない。愛する人の最期を見届けたい、どんな代償を払ってでも……」
「死を許されなくても?」
「死なんていらない」
「私もお前とは合わないよ…」
僕達は………
私達は………
似た者同士だ。
死を望み
誰かを憎み
愛に飢え
思想に殉じる。
幸せを願い
幸せに敗れ。
だけどアンタは
お前は
死を恐れバケモノになった
死を望む人間だ。
形が違ったなら
友になれた。
だからその友の為に
殺せなくても………
[報復編]も佳境です。




