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夢見の悪い幻想録  作者: ごまみりん
22/85

化物

[生きるとは何かを喰らい糧にすること]



「………こうするのさ」


軽く咀嚼し、飲み込む。


食道を通り胃に落ちる。




「!?……あ゛ぁあ゛あ゛ああああぁあ゛ああああああ゛あ゛!?うぅ……ア゛あ゛ぁあ゛あ゛ああぁあぁあ゛あうあああああ゛あ゛?」


筆舌に尽くしがたい痛みが僕を襲う。身体中の細胞という細胞が組み変わるような、細胞が暴れるような痛み。全身の血液が沸騰するような感覚。ブースタードラッグの副作用なんて比じゃない。



「……………!!」


藤原妹紅が何か叫ぶが聞こえない。五感が狂っている。視界は極彩色に煌めき、聴覚は耳鳴りのような高音に支配されている。意識を保つ事が出来ない。もう限界かと思った時………


<お兄ちゃん………>


梨佳の声が聞こえたような気がした。


「ぁああああ゛あ゛ああああぁあ゛ああああああ゛あ゛!!」


そうだ生きなくちゃいけないんだ。梨佳の分も、ベンの分も。だからこの痛みも喰らい尽くす。痛みを糧に………






「その姿……………お前………あり…えない……」


痛みが消えた時藤原妹紅が呆然と立ち尽くす姿が目に入った。


「何故だ!!何故バケモノになった!?何故人間のまま終わろうとしなかった!?」


藤原妹紅は僕を親の仇のように睨み付け、憎しみと哀しみが入り雑じったような声で叫んだ。


「僕は人間だ…。アンタだって人間だ…」


「ふざけるな!!こんな身体になって……何が人間だ!!私は………私達は死を許されないんだぞ!?愛する人が死んでも……死ねない……」


「そうか……やっぱアンタとは合わないな」


「何を……」


「僕は生きなくちゃいけないんだ。守れなかったみんなの分も生きなくちゃいけない。愛する人の最期を見届けたい、どんな代償を払ってでも……」


「死を許されなくても?」


「死なんていらない」


「私もお前とは合わないよ…」





僕達は………


私達は………


似た者同士だ。


死を望み


誰かを憎み


愛に飢え


思想に殉じる。


幸せを願い


幸せに敗れ。


だけどアンタは


お前は


死を恐れバケモノになった


死を望む人間だ。


形が違ったなら


友になれた。


だからその友の為に


殺せなくても………











[報復編]も佳境です。

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