帰国・前編
いつから一話目で幻想入りすると錯覚していた…?
「お客様…。お客様…。」
そんなCAの声に呼ばれて、僕は起きた。
「お客様、到着しましたよ。成田です。」
どうやら目的地に着いたようだ。
「あぁ…。ありがとうございます。」
「大丈夫ですか…?」
「…………?」
「いえ、あの、うなされていたようなので…。」
「………夢見が悪いんです。」
僕は足早に空港を出た。予めとっておいたホテルに早く行きたかった。この嫌に張り付く汗を一刻も早く流したかったからだ。
ホテルのロビーでチェックインを済ませ、客室へ向かう。中々いい部屋だった。奮発してスイートをとっただけはあるなと思った。
シャワーを済ませ、着替える。ふとテレビをつけると、アメリカとイギリスが南米連合に空爆したというニュースが流れてた。それについて最もらしくキャスターが喋ってる。
「平和だな…。」
魔術テロも反魔術運動もない平和な国。僕の故郷。
そんな事を思っていると、お腹が鳴った。
「食べに行くか…。」
久しぶりの日本のご飯は予想以上に美味しく、我ながら食べすぎたかと思うぐらい食べた。食後の一服を済ませ、時計を見る。ホテルのバーはまだやっている時間だ。
ホテルに戻り、バーに向かう。適当な所に座りバーボンを頼む。何も考えずにバーボンを味わっていると
「隣、いいかしら?」
と紫色のドレスを着た女性に声をかけられた。
「構いませんよ。どうぞ。」
彼女はマティーニを頼んだ。
「それで、何か僕に用でも?」
「あら、いい男がいたから捕まえただけよ。」
「積極的な女性は嫌いでは無いですよ。」
「ありがとう。」
しばらく無言で飲む。
「ねぇ、あなた今仕事は?」
「無職です。こないだ無職になりました。」
「なら私の所で仕事しない?」
「どんな仕事ですか…?」
「濡れ仕事。」
「水回りの仕事ですか…。」
「いいえ、あなたが最も得意な仕事よ。佐山亮さん…。」
そう言い、目の前の妖怪は不適に、美しく、残酷に、不快に微笑んだ。




