報復
[それは歪んだ愛故でしょう……]
部屋に男が入ってきた。何らおかしいことは無い。この部屋は本来、男の部屋なのだから。むしろ招かれざる客は僕の方だ。
「誰だ…?」
流石に気付かれる。こんなにも血の臭いを漂わせて、気付くなという方が無理があるだろう。
「いや…お邪魔してるよ。大天狗さん…」
部屋の主に挨拶する。
「貴様、何者だ……」
「あぁ、そんなに構えなくていいよ…。大して名乗る程の者では無いよ。でも一つ言わせて貰えるならこの山、警備ザルだね。もっとしっかりしなよ?」
「貴様……何者だ?それにどうやって此処に忍び込んだ…?」
「んー、強いて言えば通りすがりのか弱い人間。此処には玄関からお邪魔した」
大天狗の表情が更に険しくなる。それと同時に妖力を開放しようとするが
「ダメだ」
「!?」
僕がそれを許さない。
「何故…妖力が…!?それに身動きも…」
「侵入者が目の前でじっとしていて何も怪しまないの?それでも本当に大天狗の一人なの?」
目の前で転がっている大天狗は僕の拘束術式で妖力を封印され身動きも取れなくなっている。
僕は少しの間ソレを見下ろしてたが、ある事を思い出した。
「あ、そうだ。お土産があるんだ。気に入ってくれると思うんだけど…」
ボトンボトンボトン
僕の持ってきたお土産を見た大天狗の顔が青ざめていく。
「えーっと、何だっけ…白狼天狗と烏天狗だっけ?アンタと同じ[幻想郷の夜明け]の幹部連中だよ。まあ首だけなんだけどね…。強いのかなーって思ったら直ぐ死んじゃって、つまらなかったなあ…。あ、それとこいつらは人里の警備部隊の奴等だよ。八雲藍を狙撃した犯人と、警備部隊の副隊長……。こいつらもアンタのお仲間でしょ?犯人君が全部吐いてくれたからもう全部分かってるよ…」
大天狗の顔はどんどん青ざめていき、やがて体を震わせて怯えた表情を見せてきた。
「さて、曲がりなりにも大天狗のアンタなら察しはつくと思うけど、アンタにもこうなってもらう。」
「待ってくれ!!今回の計画に儂は関わっていない…!!全部あいつだ!!あいつが進めたのだ!!だから儂は関係ない……だから助けてくれ!!頼む!!」
「そうか、貴重な情報をありがとう。でもここで僕が見逃した所でアンタはどうせ死ぬよ」
「何!?」
「アンタの表向き所属する勢力は妖怪の山だ。妖怪の山に所属する妖怪の指示で他勢力の要人を人里で暗殺未遂。しかも指示を出し、支援したのは大天狗の一人。明らかな人里との条約違反、ひいては八雲一家への宣戦布告。御山はアンタを庇うか?庇ったとしても行き着く先は戦争だ。戦争の最中に第三の勢力が御山を落とそうとするかもしれない。泥沼だ」
大天狗は絶望した表情をして、視点が定まっていない。愉快。滑稽極まりない。
「はぁ…もう言いかな?アンタと話すのも飽きたよ。じゃ、さよなら」
「まっ「パシュン」」
9ミリパラべラム弾が大天狗の額に穴を開けた。今夜だけで何回この光景を見たか。若干辟易しつつ大天狗の首をナイフで切り落とす。
「一時間早いな……」
予定よりも一時間も早く事が進んでいる。悪いことじゃない。早く終わらせて彼女の傍に行きたい。
「あと一人……」
そう。あと一人。あと一人殺せば彼女を傷つけた奴等を、[幻想郷の夜明け]の幹部を全員殺したことになる。そう考えると自然と笑みがこぼれる。
「行かなきゃ、藍さん待ってて。皆殺すから…殺して、殺して…」
夜はまだまだこれからだ。僕は妖怪の山を後にした。最後の一人を殺すために僕は迷いの竹林へ向かう。
風邪ひいたので一日執筆できます。やったね!!ごまみりん!!執筆できるよ!!




