拷問
[何に突き動かされて、彼は修羅の道を歩むのでしょうか?]
「おそらく、今回の件に関わった組織は妖怪の山に内通者を持っているよ」
「何故?」
僕とにとりは永遠亭から戻り八雲邸の離れ、にとりの工房兼自宅でブリーフィングしていた。
「先日、妖怪の山の河童の里から光学迷彩が盗まれた。妖怪の山に侵入するのは容易じゃない。しかも河童の里の研究区だよ。白狼天狗が刀やら銃やらもって巡回している。誰の目にもつかないで光学迷彩を盗むのは不可能だよ」
「だから今回のスナイパーは妖怪だと?」
「亮はどう思っているんだい?」
にとりは訝しげに聞いてくる。
「今回のスナイパーは人里の警備部隊の隊員だ」
「え…何で警備部隊の隊員が藍さんを狙撃するんだい…」
「そんなの金でも何でも握らせれば簡単だ。だけど一番有力なのは妖怪の山と警備部隊……人里に渡って構成員を持つ反体制組織の犯行だ…」
「それって…」
「あぁ…[幻想郷の夜明け]の犯行だろうな。狙撃ポイントには妖力は無かったが、魔術弾の薬莢が落ちていた。結界が破られたのはそのせいだろう」
[幻想郷の夜明け]、人間と妖怪で構成される幻想郷反体制組織の一つ。組織を構成する妖怪の多くは妖怪の山に住んでいるらしいが全貌は未だに掴めていない。僕は五人この組織の構成員を殺している。
「確かにそれなら、辻褄が合うね。
で、裏を取るんだろう?どうするんだい?」
「それは、コイツに聞く」
僕とにとりは横を見る。そこには人里の警備隊の制服を着た男が口と手足を縛られ、椅子にくくりつけられている。勿論僕がやった。
「さて、話して貰おうか…。お前の裏にいるのは誰だ?全員吐け」
僕は男の口のさるぐつわを外してあげる。
「教えるものか!!八雲の狗が!!」
「そうか…もう一度聞く。お前の裏にいる奴らを教えてくれ…」
「誰がおしえ「パァン」あ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ゛あ」
中々教えてくれくれないから男の足を撃ち抜いた。
「教えろよ〜なぁ…、吐けよぉ…」
「クソッ…この…「シュッ」あ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ゛う゛あ゛うう」
今度はナイフで両足のアキレス腱を切った。
「悲鳴ばっかあげるなよ…耳障りなんだよね」
僕は男の顔を殴った。鼻から血を流した男の顔を見て思わず笑いを漏らす。
「アハハハハ……面白いよ、今のアンタの顔。最高だよ…けど、時間が無いんだよね。だからさっさと吐いてもらう」
八意永琳がくれた自白剤を男に射つ。
「やめっ…ろぉ……あ゛ぁ…」
「お前の裏にいる奴らを教えてくれ」
「う゛あ゛あぁあ゛あぁ……」
「教えてくれ…」
「上層部の連中は…………」
男は案外あっさりと、[幻想郷の夜明け]の幹部連中の素性を吐いた。
「頼む…命だけは、助けてくれ…。幹部連中の素性は言っただから…」
「警備部隊第四防衛部隊隊長殿。大丈夫ですよ。あなたは役目を果たしてくれた。命は保証しますよ」
「よかった…ありが…」
パァンパンパン
「役目を果たしてくれた。命の終わりを保証するよ」
男の頭に三発の銃弾を撃ち込み首をナイフで切る。
「やっぱりだ…、コイツ御山の大天狗の一人だ。私が御山に住んでいた頃から居たやつだよ…」
にとりが男が吐いた上層部のリストを見ながら言った。人数は五人。人間は二人、妖怪が三人。
「全員の首を取りに行く。準備を頼む」
「大天狗までやるつもり…!?さすがに大天狗は厳しいよ…」
「関係無い。一切合切、今回の件に関わった命を絶つ。それだけだよ」
「わかったよ…。アサルトスーツの調整も終わってるよ。環境追従迷彩も良好だよ。暴れてきなよ」
「今晩中には終わらせる。まずは御山で三人仕留める、誰にも気づかれずにね…」




