表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見の悪い幻想録  作者: ごまみりん
13/85

約束

ラブコメのかほり





八雲邸


僕は困っていた。非常に困っていた。どうすればいいのだろう?


「………………ふん……」


八雲藍が拗ねた。本当にどうすればいいのだろう。


「藍さん…どうしたんですか?」

「いきなり……いきなりは……卑怯だぞ……!!」


と朝食後から僕に突っかかってきたり怒鳴ってきたり…。結局、熱は無かったらしい。


「何かよく分かりませんが、僕が何かしたのなら謝ります。ですから機嫌直してください」


「じゃあ………と」


「え?」


「じゃあデートしろ!!」


「いいですよ」


「んー明日あたり……ヘァッ!?」


今度はよく分からない声を出した。リアクションの多彩さに感心する。


「いいのか!?」


「いいって…良いも何も、僕はあなたの護衛ですから」


「…………なんだ……そうだよな…」


「でも、それを差し引いてもあなたとだったら良いって思うから」


「………………」


八雲藍は口をパクパクさせ始めた。しばらくパクパクさせると


「うわああああああああああ」


と叫んで自室へと走り去っていった。情緒不安定なのだろうか?







八雲藍が自室に引き込もってしまったため僕が夕飯の買い物と橙の迎えに行かなければならなくなった。


「橙、帰るよ」


「あ、亮さん!!慧音先生さようなら!!」


「迎えが来たか……橙さようなら」


橙が此方に駆けてくる。上白沢慧音も此方に来る。


「あれ…藍様は…?」


「あぁ…藍さん、部屋に引き込もっちゃったんだよ。だから今日は僕が代わりなんだ。すまないね」


「いえ…そういう訳では無いんですが…。何で引きこもっちゃったんですか?」


「それは私も気になるな」


上白沢慧音も疑問を投げ掛けて来る。


「こうして話すのは初めてかな?私は上白沢慧音、知っての通り寺子屋で教師をやってる。君の事は橙から聞いているよ」


「佐山亮です。いつもは藍さんの後ろに控えてますからね」


「で…何かあったのか?」


僕は大方の話のあらましを話した。すると何故か


「あなたは、女心を理解すべきだ」


「亮さんはあれですか?天然たらしという奴ですか?」


等と責め立てられた。僕としてはいつも通り接しただけなのにこの言われようは少し不服だ。



「橙!?天然たらしだなんて何処でそんな言葉を!?」


「紫様が亮さんは無意識でたらすタイプだー天然たらしだーって…」


「八雲一家の教育はどうなっているんだ…ッ!?三者面談だアアアアアアアアアア!!」


あぁ、うるさい…

「橙、今日は何が食べたい?」


上白沢慧音の熱い三者面談ラブコールをやりすごし、僕と橙は人里を歩いていた。


「んー、何でもいいですー」


「何でもいいか…」


何でもいいが一番困る。


「じゃあハンバーグにしようか」

「はーい」




僕らは人里の精肉店に向かう。合挽肉を買うためだ。精肉店の店主は八雲藍と顔見知りで会計の時世間話をしているのを何度か見たことがある。


「お、らっしゃい!!八雲の若旦那!!」


僕には非常に困っていることがある。それがこれだ。


「いや…だから僕は若旦那では無くて……」


「あら〜、藍ちゃんの旦那さんじゃない〜」


精肉店の女将も僕に気づくとこう言う。


人里の中での僕の認識は少なくとも護衛では無いようだ。


「今日は藍ちゃんはいないのかい?」


「えぇ…まあ…具合が悪いようで…」


「………若旦那よぉ…ウソはいけないぜ」


「は…?」


店主の目付きが変わった。


「ケンカだろ…?見りゃ分かるさ。さっさと謝っちまえよ」


「ケンカなんか……」


「そ〜よ〜、藍ちゃんいい子なんだから〜」


「……………合挽肉ください」


疲れた……


「あら橙ちゃんも一緒だったのね〜」


「おばさん、こんにちは!!」


「今日は合挽肉ってことは、ハンバーグかしら?」


「そうです、亮さんが作ってくれるんです」


「やっぱ藍ちゃんはいい人捕まえたわね〜」


「今日のお弁当も亮さんが作ってくれたんです。藍しゃまと亮さんすごく仲いいんですよ。夜、縁側で2人でお酒飲んだり…」


「あら〜」


誰か助けてくれ……






八雲邸の台所で調理を始める頃には、ヘトヘトだった。人里で立ち寄る店という店で若旦那と言われ、買い物そっちのけで世間話に付き合わされ、八雲藍はいつもこんなのに付き合ってるのかと思うと少し八雲藍に尊敬の念を抱いた。



僕が作った夕飯は概ね好評だった。しかし八雲藍だけ食卓に顔を出さなかった。



「部屋に持っていってあげて♪」


八雲紫は胡散臭い笑みを浮かべながらそそくさと自室へ繋げたスキマに消えた。





「藍さん……入りますよ」


八雲藍の部屋に入ると、布団が丸くなって饅頭のようになっていた。



「…………夕飯持ってきましたよ」


枕元に夕飯を乗せたトレーを置く。


八雲藍は起きない。


「藍さん起きてくださいよ…」



布団が蠢く。


「………べ……てよ」


「…………?」


「食べさせてよ…」


「………はい」



ハンバーグを切り分けてフォークに刺す。それを八雲藍の口に運ぶ。


「ん……」


「どうですか…?」


「……美味しい…」


「なら…良かった」



「あのな……明日なんだかな…」


八雲藍が俯きながら言う。



「なんですか?」


「あのな…紫様が休みをくださったのだ……だからな…」


「一緒に……何処か行かないか?」



言い終わると不安そうな表情で俯く。



「…………僕は甘いものは好きじゃないんです」



「え…?」


「でも前、藍さんと行った甘味処のみたらし団子。橙の迎えに行く前に食べてみたらすごく美味しかったです。だから、またみたらし団子が食べたいんです。明日辺り」



「あぁ…行こうか……甘味処」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ