雨宿り[スピンオフ?]
これも番外編的なスピンオフ的なやつです
これからの展開に少なからず関わってくるかも…
人里。幻想郷で唯一の人間の集落。
その人里で雨に降られている少女がいた。
「クソッ……ついてないな…」
白いシャツに赤のもんぺのようなパンツと同じく赤のサスペンダー、白髪と赤い目が特徴的な少女は雨宿りできる場所を求めて走っていた。
通りに面した店の軒下を借りる。雨を凌ぐには十分な大きさだ。
少女はポケットを探り、タバコを取り出すが
「あー、ホントに今日はついてないな………」
タバコはびしょ濡れだった。少女は酷く落胆した表情になる。
「………どうぞ」
少女は声のした方向へ顔をむける。するとスーツを着た男がタバコのソフトパックを差し出していた。
「いいのか?」
「構いませんよ……」
スーツの男は視線を中空に漂わせながら言った。
見覚えの無い男だった。和装の多い人里でスーツ姿は相当目立つ。故に少女は男の素性が少し分かった。
「お前外来人か?」
「えぇ…まぁ…」
男はライターの火を出しながら言った。
「あ…すまないね…」
10分程経っただろうか。少女と男は無言でタバコを吸っていた。
「雨……やまないな…」
「そうですね…」
短い会話。会話が続かない。
このスーツを着た男、よく見ると顔立ちは整っている。短くも長くも無い、夜の帳を下ろしたように黒い髪。普通に見れば器量のいい青年だ。
だが、少女は気づいてしまう。少女に限らず気づいてしまう者はいるだろう。この男の発する哀しさや寂しさに混ざる濃密で甘美な死の薫りに。
「どんな仕事をしてるんだ…?」
少女は男に探りを入れようとする。しかし、
「無職ですよ…」
かわされてしまう。
さらに10分程経った。すると日差しが見えた。
「雨……上がったな…」
「そうですね…」
少女は軒下から光の射す道に出た。男は軒下に留まっている。
「タバコと火、ありがとうな」
「礼には及びませんよ」
「お前とはまたどこかで会いそうだな」
「そうですか」
「だから……またな」
男は無言で少女を見送る。男は少女が離れてから呟いた。
「会いたくないね……」




