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夢見の悪い幻想録  作者: ごまみりん
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藍さんといい感じ?





「そいつだよ……そいつが今回の目標だよ。確実に処理してね」


M40A5のスコープの中心に見える異形の生物。妖怪。月明かりに照らされてその醜い姿を晒している。

この醜い妖怪が率いる反体制派組織が人里を襲撃するとの情報を八雲紫が手に入れた。この妖怪の排除が今回の仕事だ。


「わかった……」


にとりからの通信を切る。


目標との距離は900メートル。充分狙える。


900メートル先の醜い頭に狙いを定める。



「フー………」


息を止める。



引き金を引く。


パシュンという音と共に7.62ミリ魔術弾が頭に撃ち込まれ妖怪が倒れる。作業を終えた。


月明かりに照らされながら血を水溜まりのように流す妖怪が見えた。



「いつも通りだよ……回収してくれ」


「わかった。スキマを開くよ」


僕はいつも通りスキマをくぐった。










仕事の後の一服は最高だ。八雲邸の縁側で紫煙を燻らせる。居間では橙がいるから吸えない。


「これで………18か……」


そう、18だ。僕がここに来てから奪った命の数。人間も妖怪も関係無く、呆気なく僕の手で奪われていった命の数。


でも大した数じゃない。外で奪った命や物の数と比べれば極々僅かな数。



あの後、八雲紫が流した情報を元に警備部隊が襲撃を計画した妖怪達の本拠地を制圧したらしい。しかし、5名の殉職者と2名の重傷者を出したという話だ。



「またここか」


ぼんやりしていると隣に八雲藍がいた。


「全く亮は縁側にいる時はいつもぼんやりしているな…」


「落ち着くんですよ、この場所………」


そう……何故かは分からないけど懐かしさを覚える…。


「そうか…」



「今日は月が綺麗だな……」


この人は意味が分かって言ってるのだろうか?


「死んでもいいとでも言えばいいですか?」


「え……?」


やっぱり分かっていないようだ…。


「紫さんにでも意味聞いてください……。」



八雲藍は何が何だかという様な顔をしている。しかし、しばらくすると神妙な表情になり僕に聞いた。


「亮は、生きることをどう思っている?」



これまで聞いたことの無い芯の通った声。僕の瞳をどこまでも深く覗き込む八雲藍の吸い込まれそうな瞳。月明かりに照らされて改めて分かる肌のきめ細やかさ。仄かな甘い香り。



「どうもこうもないですよ。ただ……」


「ただ………?」


僕はどこまでも魅力的な彼女にこう言った。


「僕は早く死にたい」
















砂漠。中東だろうか。テントが沢山建ててある。砲撃の音。ヘリのローターの音。銃声。様々な音が聞こえるが人は一人として見当たらない。


「ここは……」


「こんばんは、先輩」


ベンが後ろに立っていた。


「ここは俺と先輩の思い出の地、アフガンですよ…」


言われてみれば確かに見覚えが無いことも無い…。


「先輩、新天地には慣れました?」


「まあ…ぼちぼちな……」


「もう先輩が幻想郷に来てから一ヶ月ぐらいですかねえ…。幸せそうですね……」


「…………」


ベンが何処からかハンドガンを出した。


「ベン…何を…」


「黙れ」


パァン


銃声と共に肩に衝撃と痛みが走る。撃たれたのだ。


「僕は早く死にたいか…。だったら俺が殺してやるよ。」


ベンが僕の頭に銃口を突きつける。


「死人に……自分が殺した奴に殺されるか……ざまあないな。じゃあな佐山亮」




<あなたは………どうして………………き………るの……?>


二度目の銃声と共に僕の視界は真っ黒になった。


















「……………ッ………!」


また夢を見たらしい。汗が滝のように出ている。


額に触れる。穴なんて開いてる訳も無いのに。


「あぁ…クソッ…」


とりあえず汗を流そうと忌々しい気持ちに襲われながら風呂に入りに行った。





風呂で少し冷静さを取り戻し台所へ向かう。するといつも通り八雲藍が朝食を作っていた。

「おはようございます」


「あっ…あああ…うん……おはよう……」


八雲藍は僕を見るなり顔を赤くして、しどろもどろに喋り全体的にあたふたしている。いかにも挙動不審だ。熱でもあるのだろうか?


「どうしたんですか?慌てて…」

「いや、その……何でもないんだ!!うん、何でもない!」


そう言って調理を再開するが…


「痛っ……」


包丁で指を切ったようだ。


「大丈夫ですか?」


「あぁ…すまない。でも大したケガじゃ…」


「貸してください」


「えっ…」


僕は八雲藍の手の傷口を消毒し、絆創膏を傷口に貼り付けた。


「す…すまない…ありがとう…」

まだ顔が赤い。やはり熱があるのだろうか…。


「ちょっとすいません…」


「えっ…なにを…!?」


僕は八雲藍の額に自分の額を当てて熱を測ってみた。すると案の定熱があった。顔もさっきよりも赤い。


「やっぱり熱があるじゃないですか…。藍さんは休んでいてください。今日は僕がやります」


「ふにゃあああ……」


八雲藍が沈んでいた。すると珍しく八雲紫が起きてきた。


「紫さん、藍さん熱があるようです」


八雲紫は僕と八雲藍を交互に見て何かを悟ったように


「分かったわ。藍、今日は休みなさい。あなたは藍の看病よろしくね?」


「はい」


「紫様!!私は…!!」


「あなた最近働きすぎよ。ちょっとは休んでも罰は当たらないわよ?」


そう言ってスキマで何処かに言ってしまった。


「とりあえず朝食は僕が作ります。食べられますか?」


「あ…あぁ…いつも通りで大丈夫だ…」




僕は台所に戻った。橙のお弁当も作らなければならない。



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