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孤独詩  作者: めけめけ
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狂った果実、禁断の果実

 その実を口にした途端、世界が色あせて見えてきた

 きらびやかなネオンサインもビルの屋上から眺める景色も

 夜を着飾る少女たちもスクリーンに映し出されるヒーローも

 狂った果実

 狂った果実


 その実を口にした途端、世界が煩わしく思えてきた

 街に流れる音楽も悲劇を報じるニュースペーパーも

 喜劇を演じる議会放送もあの子が載ってるグラビアも

 狂った果実

 狂った果実


 その実を口にした途端、世界が悲しみに暮れてきた

 訃報を告げるニュースサイト、Replyするeveryone

 消耗するHeart&Soul、涙かれて声も出ない

 狂った果実

 狂った果実


 その実を口にした途端、世界が憎悪に溢れ出す

 暴かれる嘘と現実、知りたくもないback side

 拡散するhate speech、対立するLeft&Right

 狂った果実

 狂った果実


 その実を口にした日から、世界を不機嫌に眺めるようになった

 母の口癖はいつも耳障りで、オヤジは終末朝からゴルフ

 妹は毎晩帰りが遅い、今日の晩飯、チンして食べる

 彼女は今日もバイトで遅い、LINEの既読がなかなかつかない

 友達は相変わらず仕事が見つからないと嘆く

 探してないから当たり前だと、そんなことを言ったりしたら

 ブロックされて、それまでよ

 禁断の果実

 禁断の果実


 その実を口にした日から、世界を疑ってみるようになった

 テレビはいつでもご機嫌で、都合の悪いことは言わない

 ネットでつぶやく政治家たち。どんな顔して書き込んでいるのか

 偉くなるためには努力が必要、そんなことはわかっていても

 すべての努力が報われていたら、きっとあいつは死なずに済んだ

 あいつの歌が今でも聞こえる、こんな夜にはheavy rotation

 頬を伝わる心のかけら

 禁断の果実

 禁断の果実


 その実を口にしなかったら、こんな気分にならなかったのに

 あの子が言うの。彼が好きだと、相談に乗ってとそう言うの

 私はずっと彼を見ていたし、密かに思いを寄せていたのに

 たった一度のパーティーナイト、あの子はみんなの人気者

 誰とやろうが別れようが、関係ないと思っていたのに

 まるで初恋でもしたかのように、しおらしく、可愛らしく

 そんなあの子が許せない

 禁断の果実

 禁断の果実

 

 口にせずにはいられない

 口にせずには眠れない

 その実をあなたにあげよう

 その実をあなたに捧げよう

 僕がかじったその果実を

 狂った果実を

 私はかじったその果実を

 禁断の果実を

 世界が素晴らしいから

 世界が美しいから

 世界が煩わしから

 世界が妬ましいから

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