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孤独詩  作者: めけめけ
19/52

終わりよければすべてよし

『煩わしい』と対になっているような、いないような

僕はあなたにとって特別な誰かでありたいと思った

何故そう思ったのかはわからない


誰かが言う

それは一目ぼれだと


僕が初めてあなたと出会ったのは、何年前のことだったか

あの時僕は、特別な誰かを求めていなかったし、そうであろうとも、そうなりたいとも考えていなかった

あの時のあなたに、何一つ特別なものを見いだせなかった僕は、はたして変わってしまったのだろうか


僕は変わった

あなたも変わったのだろう


いつしかあなたを近しく思い、いつもそばにいるような錯覚に陥った僕は、間違っていたに違いない

あなたの手に僕の指先が触れたとき、僕は何か特別な感情を抱いたのだろうか

あなたは何かを僕から感じ取ったのだろうか


思い出すこともできない儚い思いが、そこにはあったのだろうか

感じることすらできない心の揺らぎが、あなたにはあったのだろうか


綴ることのできないほどの淡い想いを抱いて僕は浅い夢を見る

見えていなかったものが見えてきたり、聞こえていなかったものが聴こえてきたり

それはあなたの影だったのか、それはあなたの吐息だったのか


あなたは僕に微笑む

僕は微笑みを返して言葉を添える

それはやさしさなのかもしれない

それは好奇心なのかもしれない

それはアンチテーゼなのかもしれない


あなたはあなたが望むものを注文し

僕はなみなみと注がれた酒を一気に飲み干す

眠らない街に繰り出せば、楽しい仲間が集まるだろう

僕は言葉で自分を表現し、過去から連なる今を語る

あなたは問いを投げかけ、未来に繋がる今を語る


男であること、女であることを忘れ、じゃれ合ったりなれ合ったりできるほどふたりは無邪気じゃない

何も捨てることなくさらけ出す互いを、労わりながら、感じあいながら言葉を紡ぐ

やさしさと言う温かみもない、甘えと言うぬくもりもない

それぞれの個を意識して積み上げられる積み木は、賽の河原のようでもあり

また、天国への階段のようでもある


それを壊してしまうのが恐ろしくて、最後に僕は言葉を詰まらせる

ぎりぎりの傾きでそびえ立つ塔は、いずれ天の怒りを買ってしまうのだろう


わずかなボタンのかけ違いで、ぎくしゃくとしてしまうような

そんな畏れをあたなに見透かされているような気がしてならない

眠れない夜は千の目が僕を見つめているようで切ない

殺せない感情を吐き出すこともできずに僕はもがいている


狂わしい想いを胸に抱いて、僕は今夜にあなたを思う

僕が思いうかべるあなたは、なぜあんな表情をしているのだろうか

僕と一緒にいるときのあなたは愛くるしい笑顔で僕の話を聞いてくれる

その間、あなたを僕はずっと見つめてくれる

それなのにあなたと別れた後に思いだすのは、物憂げな表情のあなた

真夜中に時より見せる別の顔なのだ


この胸の痛みは何なのだろうか

焼けつくような

ともすれば煮えたぎるような

どす黒く、熱い思い


僕はそれを知っている

あなたはどうだろうか

あなたはそれを知っているだろうか

そして僕がそれを持っていることを知っているだろうか


だから僕は口をつぐみ、目を閉じ、耳を塞ぐ

あなたが僕の耳にささやかないように

あなたが僕の瞳の奥を覗かないように

あなたが僕の口から何かを言わせないように


僕はきっと嘘をつく

あなたもそれを知っている

あなたは嘘を受け入れる

僕らは嘘で縛られる


そんな話は全部嘘だとわかっていても

すべて作り話だとわかっていても

僕はあなたの物語の住人になることを望んでいるのかもしれない

僕が書いたシナリオにあなたの演出が与えられ喜劇の幕が上がる

一度幕が上がれば、カーテンコールまで演じ続けなければならない

僕の演技は酷い物で、とても客は満足させられやしない

あなたの演技は完璧だ

でも終わりが近づくにつれて僕の書いたシナリオとは違う結末に向かっている


僕はいつの間にか主役の座を追われ、舞台から姿を消してしまう

僕にその場にいる資格など最初からなかったのだと悟った時

ため息交じりに観客の一人が言う


終わりよければすべてよし


あなたは深々と頭を下げ、幕は下りる

もうここに居る理由を見いだせないあなたは、きっと帰っていくのだろう

居るべきところへ


そう、終わりよければ、すべてよしなのだ

僕は鏡に向かってそう言い続ける

下手な役者が一言だけもらったセリフを何度も練習するように

終わりよければすべてよし

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