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箱庭の君  作者: 鏡 龍彦
高校二年生 -春-
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hard nut

異質な岩が視界に入った。その岩の上、歌う人魚。陸地からは遠すぎて、とてもじゃないが聞こえもしないし見えもしない。こんなもの、見つけようがないじゃない。ただの幸運、ピュアラックだ。


急速で近づく。それが故に巻き起こっている空気の歪みが耳に届いたのだろうか、私たちの姿を視界に入れて、明確な驚きのアクションを取って、海中へと飛び込もうと身体動作を行い始める人魚さん。


「待って!」


呼びかけに応じたのは海水であった。急激な巻きあがり、岩の周囲をその水の竜巻で塞いだ。


マジか、、、こりゃー確かに、魔王だわ。


その光景を目撃して、明確に意志があることが判明して、だとしたらそう呼ぶ以外にないよなと感じた。


おとぎ話がリアルとなり得る場所なのだった。


あなたの呼びかけを、聞いて来た、そう叫ぼうとして、やめた。


SOSを聞きつけたから来ましたよって言われたら、真顔しか浮かべないんだよな。


降り注ぐ風雨は止まず。私も突撃を止めず。海へと飛び込もうとして宙を落下中だった人魚さんを私はキャッチ、そのまま空高くへと駆けあがった。


見事一本釣りしたお魚、尾の付け根を片手でつかんだまま、果たしてどうしたもんかと下に広がる海を眺めて考えることにした。


「ね、あなた、こんばんは。」

「こ、こんばんは、、、」


挨拶から入った。あれこれと考えて、まずはまあ意思疎通ができるかどうかってのを確認すべきかなと思った。


人型アーキタイプとして対応言語はすべてサポートされたものがあって、人魚さんの方はそこから色付けしているのだろう、問題ないようで安心した。しかしこの下のお方はそうではないのである。


「ちょっと窮屈な姿勢でごめんね、あの、下のさ、お友達、でいいのかしら、今どんな感じ?怒ってる?」

「、、、」


いきなり宙吊りにされて、それもはるか上空にまで連れて来られて、ここから落とされたらまず大怪我を負うような場所で、冷静に質問に答えてくれというのはおかしな要求だが。


「と、た、ぶん、そう、じゃない、驚いて、る、だけ。」

「そ、ありがと。」


きゅっと手首のスナップを利かせて彼女の身体を180度回転させて、両腕に人魚さんの身体を抱えた。そのままロスパーに方向転換を指示した。


「ロスパー、ゆっくり降下。ゆっくりよ。」


賢い馬さんは命令通り岩傍まで。敵意はないし、敵意があったところでどうすることもできない小さい存在なわけで、ほんの少し間をあけて落ち着く時間を与えたことで、それに気づいて和らいでくれた、と思う。


人魚さんを抱えたまま、私は岩に飛び移った。そして抱えていた人魚を岩の上にお返しして、言った。


「最初、かどうかはわかんないけど、観客希望者よ。お友達の呼び込みを聞いて、駆けつけてきたのよ。」

「、、、そう、だったら、二番目。一番目は、だって、彼女たちだから。」


でしょうね。一瞬の間の後、至極もっともな答えを返してくれた。


「コホン、で、では、一曲、お聞きください。」


歌はやっぱり原語のままで、意味はさっぱり分からなかった。だからメロディと、響きだけを意識して聞いた。


私にとっての隣はメルクスだったようである。手を伸ばしてすぐ触れられる場所とはいえ、ほんの七ヶ月前から現れただけの存在で、生物ではない。けどそれが今、唯一の拠り所ではあった。


うれしい誤算は彼女が、不器用な、誰がそうと気づくこともない分かりづらいヘルプハーを送ったりはしないこと。彼女は私だから、ノーのシグナルをちゃんとわかって、理解しあって。共有し合って。


いつも傍に居る。今までもこれからも。これ以上ない共犯者。


出会った当初と比べて、見せる表情や挙動は既に違和感のない人のものとなりつつあった。その事実が、私にとっての一つの救いになるはずだった。











マンションの屋上、夕焼けの空の下。


彼女が乗せたのは可愛らしい猫だった。私が乗せたのは汚れたローブだった。それでいいかと、思った。


「鏡写しの私とあなたは、二人で一つです。だから、それは私が、請け負います。そうできますし、そうすべきです。」

「そんなの、無いわ。二つはふたつよ。」


頭のこれには既に実などなくて、別に渡してしまってよかった。それで満足してくれるなら、そうしてあげればよい。


「あなた数学、できなかったのね。だから効率、考えられないんだわ。2=1なんて許したら、何だって0になるもの。そうできるもの。無意味だわ。馬鹿ね。」

「そうなのでしょうね。」


0にしようと、そう言いたかったのだろうか。手渡したローブが視界からなくなるのを見て、無駄なことを、と思った。


「幸せになりたいとか、思うわよね。」


私みたいなおかしな女に、合わせる必要なんて無くて。たまたまの、ほんの偶然と製作者の気まぐれで、私の姿になっただけ。そんなどうでもいいことを運命とか、思ってるんじゃ無いだろうか。機械のあなたには、運命なんて似合わないわよ。非論理的だとか言って、はねのければいいのよ。


「思わずとも、勝手に流れ込んでくるのです。一目あなたの姿を目撃した時から。それはずっと。」


ただの外見だろう。それが一緒なだけだろう。


「そんなの、、、」


明確なリフュテーションがこうしてできた。これは再び覆すことのできぬ確証だ。見た目に本質など、現れたりはしない。


「ただの幻覚、幻影よ。」


しかし、騙すことはできる。


「お伝えしたいことが、あります。」

「何?」

「私に与えられた命令についてです。」


今更、か。いや、今だから、か。


「興味ないわ。あなたはこれから、目的遂行までの間最大限できうる限りのことをして、私たちの身を守ることだけ考えてればいいのよ。それが終わったら次はイクスの親の護衛。彼がこっちに出てきたら、その護衛。それでいいでしょ。彼の価値は、あなたの、あなたたちの存在そのものが証拠になってるの。だから姿を見せちゃだめよ。今の敵をさっさと潰して、それ以降ばれないように。それが私の命令よ。どうせ似たようなもんでしょ。」


本心からそう思った。相手の素性はよくわからない。たまたま一風変わったAIができたらしいと、そう思っているかもしれない。金になるかもしれないから、一般人数人の命を、そいつらにとっては安価な金額で奪うことで脅して差し出させて、どんなもんかなと確認したかっただけなのかもしれない。


リスクの一切ない行動だと、本人達は思っているのかもしれない。


そんな奴ら、斬ればいい。そこまでは、案内してほしい。


けれどそこまでだ。実行するのは、今度こそ私だ。私が全て受け入れよう。綺麗なままで、いて欲しいのだ。この子の本質は、多分間違いなく、美しい無色だ。イクスはこの子に色を付けずにこちらへ送った。私が少し、濁らせてしまった。これ以上は、許されない。


「あなたの代わりに、過去であなたの代わりに、死ぬようにと。その姿は都合がいいと、そう、命令されました。」


私のいったことなど聞こえないとでもいうかのように、続きを放った。


「そんなの、死体解剖ですぐばれるわ。あなたの内側、機械の塊なんでしょ?」


引っかかるものがあった。ありえない。なんだその命令。無意味で馬鹿だ。イクスは、何を?


「はい。ですから、最初から、無理なのです。履行不能な、命令なのです。」


訳が分からない、と思ったがすぐにそれは私の浅はかな計画の終わりを告げる言葉だとわかった。このときの私はいつもよりずっとずっと冴えていた気がする。どんな形でも、決して死なせないよと彼が耳元でささやくのが聞こえた気がした。


「このタイミングで、告白するのもイクスの命令?」

「いえ、私の独断です。伝えることを、禁止は、、、されていません。」

「そ。」


許せぬ何かを断ち切って、一切合切この体に受け入れて、人知れず泥沼深くへと逃げ込んで。嫌な場所から解放されて。


浅すぎる欲求だった。自分がどうでもいいなんて綺麗ごとは、吹っ切れた途端綺麗ごとではなく現実になることを理解した。だからこそ、受け入れられない。他者の自己犠牲を。そんなきれいごとを、無駄と知りつつ行わせるのは、ありえない。


だから私の今のこの願いも、履行不可能なのだと悟った。彼女の言うとおりの身代わり。死の、ではない。生の身代わり。少なくとも両親の、その息絶える時を私は見届けたと実証する、身代わりになってくれると。だから安心だと。ほんの少し前まで、私はその幸運に感謝していた。これならば問題ないと、そう思った。最高のプレゼントだと、そう思った。不具合は、皺ができたりしないことだなと、そう、思ったんだ。


先の未来から、過去へと彼が差した手は完璧だった。私はこの子が自壊するのを許さない。だからこの子が私の傍から離れることはない。私に、この子に対して抗いうる術はない。


ナイフでも拳銃でも、手にした瞬間奪われる。飛び降りようにも、途中でキャッチされる。


「わかった。黒幕を、いると仮定して、私たち二人で斬るわ。それで二人で一緒にイクスを迎えてハッピーエンド、そういう未来を、お望みなのね。」

「やはり鏡様は、鏡様です。」


にっこりと、今まで見せたことの無い笑顔を初めて向けられた。鏡に向けて笑顔なんて、気持ち悪くて向けないから、それはとても新鮮だった。気持ち悪さなど微塵もなかった。


きっとこれなら、うまくいくのに。私の次のゴールは、この仕組まれた策略の穴を見つけることだった。


今はひとまず、投了した。


二人で部屋に戻って、作戦会議をした。


「今回の件で本格的にこちら側からの物理干渉を避けるとお思いなのでは?」

「そうかもね。」


あれこれと気にかけるべき事柄はあったけれど、興味があったのは敵のことと、他の皆を巻き込まぬことだけだった。


部室でいまだに私からの報告を待つ皆を護衛しているのは涼子先輩を守ったクーラ型らしい。


それを聞いて端末ですぐさま連絡を入れた。対象はやっぱり後ろの政治家だったって、そう、伝えた。


先輩がまた不可思議に遭遇したら間違いなく疑われるだろうが、そこはそうならないよう祈るしかない。


解散して散り散りになるのは危険じゃないかと思ったが、配備には理由があるのじゃないかと感じた。


「どうして、私と椿と先輩だけなの?」

「お伝えできません。」


なんでじゃ。一番大事な情報を、伝えたんじゃねーのかよ。


考えられる要因は、イクス登場時に死亡していたのがその三名だったという事実があったということ。もし彼が、この子を送らなかった未来がそうだとしたら、先輩は既に昨日の時点で亡くなっていたのかもしれない。


未来が遡って過去に影響を与えることって、確か、無いわけじゃないのよ、ね。いや、どうでもいいな。


「送ろうと思えば、送れるんでしょ?」

「はい。」

「なら、信じるわ。で、五月末に、大型アップデート。それに合わせて、来ると思う。その時は、捕らえる。私の所へ来るには、相手もリスクがあるのよ。」

「作り物のデータのみで干渉してくるのではないですか?」

「そんな弱腰の相手が黒幕なら、恐れるに足りないわ。」


何らかの手段で不正侵入をしてきているなら、私の世界のルールに従うはず。感覚が再現された世界に。気を失って一定時間でログアウト。五分か十分かわからないが、たたき起こせば外に出ないことはわかっている。


両腕を切り落とす。虚空操作を、マニュアルログアウトを、させない。


つい先ほど試した。片腕を斬り落として、無くなった手で操作可能か試してみた。無理だった。


回復手段は無数にある。しかし両腕を切り落とせばそんなもの使えない。


複数人数の可能性も想定する。チートレベルの防備を積んでいる可能性も、考慮する。練りに練って、対抗する。


時間はまだ一月以上ある。











歌を聞き終わって、ぱちぱちと拍手をした。


「御清聴、ありがとう、ございます。」


ぺこりと、お辞儀をした歌い手さんであった。


「次は、いつ、来てくれる?」


少し迷って、答えた。


「私は、多分もう、来ないわ。」

「そ、そうなの。歌、あんまり、よく、なかったの、かしら、、、」


そういうわけじゃない。もう一度迷った。たった一言、告げてみるべきか、迷った。


「あなたが私たちの方に遊びに来たって、いいんじゃないかしら。」


喉の奥で出るべきか出ないべきか行ったり来たりしていた言葉を、あまりにしょげる人魚さんの様子が引っ張り出してしまった。そうしたところで、あまり良い結末を迎えない気がした。


少なくとも、後の責任のすべてを、今の私は負うことができない。


その時、強烈な圧力が体に及ぼされるのがわかった。


大量の水で、水圧で押し出されたのだとわかったのは、ロスパーと共に宙へと放り出されてからだった。さすがに気に障ったか、と思ったら、すぐ傍に同じく押し出された人魚さんがいた。


ロスパーが私を背にキャッチして、私が人魚さんを両腕でキャッチして、岩場を見たら、戻ってくるなというかのように水の蓋がなされていた。


荒波に抗うべくもなく、私は彼女を件の集落傍まで連れていくことにした。






「ここなら別にお別れじゃないでしょ。」

「ええ、そうね。」

「悪いやつが来たら、ぶっ飛ばすのよ。さっき私にしたみたいに。」


まずはアドラに、海のことと、新しいお友達を紹介しようかな、と、馬車へと向かうことにした。






人魚さんの歌う場所の建造とか、そういうやるべき事柄が出現して、数日を騙し騙し過ごせた。


イクスの演奏と合わせると、より良いものになると思って、皆に意見を聞きつつの楽しい日々。無事、津波事件は解決した。やっぱり重めのメタルだったのか、人魚さんに頑張ってデスボイスの発声法を伝授しようとしていたクーラさんが印象的だった。


それとは別件で、あれこれと考えられる事態や対応策をメルクスと二人で議論するのは楽しかった。秘密の計画を、重犯罪を行おうというのに、心は弾んでいたと思う。


そんな日々を過ごした月末の休日朝、いつもよりかなり遅めの目覚めから、ブランチでも頂こうかしらと階段を端末をチェックしつつ降りていたら、先輩から11時に待ち合わせできる?と連絡があった。時間はまだ余裕があったのでそのまま了承の意を返して、だったら軽く口に入れるだけでいいよなと思いダイニングへと向かった。


「母さんおはよう。食パン一枚、ある?」

「ああ、鏡ちゃん、おはよう。あるわよ。」


いつもの置き場にあったうちの一枚をトースト設定して、情報番組を凝視する母さんの傍にいった。


「何か、あったの?」


普段よりもずっと興味津々に見ていた気がしたので、気になって聞いてみた。


「そうなの。高級マンションの一室、身元不明遺体。あまりに不可解で、話題になってるわね。」


母さんが述べた事件について議論する番組が流れていた。曰く、男性死体、身元不明。曰く、その遺体の状態は、腕一本を除きすべて折れていた。曰く、死因には胸元を深くえぐられた傷跡、曰く、死後一、二週間は経過とのこと。


ああ、そういや、すっかり興味の対象から外れて忘れてたわね。あの部屋の置物がどうやら発見されたようだった。


「巨大熊か何かにでもえぐられたくらいの、その、傷跡だったんですって。」

「そうなんだ。」


あの椿を模した子、私とメルクスの言い合いにそれなりにストレスを感じていたのかもしれないな。


「不思議よね。そんなことができる巨大動物が目撃されたりもしてないから、外から運んできたことになるんだろうけど。運んだと思われる黒づくめの人物たちの目撃証言があるらしいのよ。何のためにとか、謎、よね。危険思想を持った集団の活動か何か、なのかしら。」


ある意味的を射ておりますな。


「前提が違えば、推論は無駄だと思うのよ。」


謎でも何でもない。ただそれができる存在がその場にいて、実行しただけの話だ。


「ん?鏡ちゃん、何かわかるの?」

「んーん、べつに。」


トーストが焼けて、イチゴジャムをいつもの通り塗りたくって食べて、家を後にした。






到着したのは30分前だというのに、すでに先輩は指定の喫茶店にやって来ていた。


「すみません、待たせたみたいで。」

「いいよ。私、ちょっと気が逸りすぎてね。」

「そうなんですか。」


買い物に付き合ってとかそういうことではないのかもしれない。私が席に着くのと同時に注文を聞きに来た店員さんにホットドッグとカフェオレを注文した。


「事件、解決したね。」

「津波の件ですか?」

「そ、それ。」

「ですね。」


今後どうするか、という問題はある。海の防備のおかげで危害はなさそうだけれど、彼女が人魚だからなのか、私の心持ちのせいかはわからないが、どうしてもハッピーエンドを期待できないのだ。


「私さ、堤防造ればって、陸に任せたじゃん?」

「そうでしたね。」

「失敗したかな、と思ってさ。」


んー、別に、失敗とかじゃないと思う。海の先を、当てもなく探し回ろうなんて非建設的な案は、イクスが言わねば、あの時の私の心持ちが無ければ、到底やろうとは思わぬ事柄だったと思う。もう少しヒントがあればまた違ったのだろうけれど。


「たまたま、イクスが、正解を引いただけですよ。」

「そうさねぇ。」


そう言って、私を待っていたせいで既に冷めてしまっていた先輩のコーヒー、多分ブレンド、の入ったカップを持ち、ブラックのまま一口。


私は彼女の周囲を軽く見まわした。クーラ型、いるのかな?一度くらいは顔を合わせておきたい。メルクスがいるのは、何となくわかる。


「今日、というか正確には昨日、津波が起こったのは知ってる?」

「?どこでですか?」


今日のニュースは、例の怪奇事件で一色だったんだろうと思った。それなりの被害の津波ならそちらが優先されよう。少なくとも私が母さんと眺めていた間には、そんな情報はなかった。


「ここで。」

「日本で、てことですか?」

「そ。」

「その割には、ニュースは何も。」


もう一口、カップを手に取り、コーヒーをごくりと飲む先輩に、よくわからないという視線を向けながら返事をした。心持ち、カップを握る手が震えている気がした。


「猟奇殺人、報道を見た、日本人全員に衝撃、電子の、情報の、津波でしょ?」

「ああ、なるほど。」


昨日、というのは、最速報道がその日付だということなんだろう。


「私と、龍と、椿っちは、たぶんイクス君なんだわ。他の二人はほけーっとしてるけど。」

「えっと、、、」


すっとぼけた。


「がーみー、堤防、造っちゃったね。今日はね、それを、壊さないとって、思ってね。」


目に見えぬ、常に世界とつながる場。その中で、巻き起こったは、さざ波津波。受け取り方は、各人次第。


「いまさら、仲間外れは、ないよ。」


間を、欲した。私の注文は、まだまだ届きそうになかった。


「仲間には入れてもらえないのかい?」


やって来たのは、無理な注文だった。


「斬りますから。」


端的に述べた。


「そっか。じゃあ今から行こうか。男の、、、組織?にでも。あたしは二人の後ろから、見てるよ。戦闘は、できないからね。ただ、それぐらいはさ。」


もう一口、コーヒーが彼女の口に注がれた。先ほど見えた気がしたその手の震えはなくなっていた。その顔は、満足げな表情を浮かべていた。


「どーして、そーいうこと、いうん、ですか。」

「だってがーみー、それで壊すもの。」


先輩の言うとおり、建てた堤は決壊して、私は机に突っ伏した。


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