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箱庭の君  作者: 鏡 龍彦
高校二年生 -春-
87/100

investigation -tyousa-

「ふー、そろそろ時間ね。んじゃ、ギア頂戴。」

「はい。」


何があっても死守すべきそれ。信頼度的にも覚悟の重さからもこの子が常に持っているべきものだ。今後未使用時は常にメルクスに保護してもらうことに決めた。


「んじゃーちょっくらみんなと海を相手に戦ってきますよ。あんたがいるから私は安心だけど、他のみんなは怖くないのかしら。」

「?お聞きになっておられないのですか?」

「何を?」


思い当たる節はない。何かあったのだろうか。


「以前申し上げた、人員の追加です。無生物ならばこちらへ持ち込めるのはご存知でしょう。」

「え?あれマジだったの?」

「はい。探知タイプを。」


聞いてねーな。ほんの冗談だと思っていた。皆も私には一言もなかったぞ。






「は?メルクスから?ああ、そういやこの間ドラゴンの模型を部屋に置くように言われたな。結構造形が凝ってるやつ。後キーホルダーサイズのも。」

「それなら私も。ライオンのでしたね。」

「僕も。亀をもらった。」


なるほど。小型の索敵レーダーか何かってことか。そりゃ言われなきゃただの親睦のプレゼントだと思うわな。メルクスにしては、、、いや、あの子の案じゃないな。うん。


「結構大事なものらしいから、ぞんざいに扱わないようにってさっき伝えられたわ。捨てたりしてないでしょうね。」

「好かれてるとは思えんしな。ただのプレゼントだとは思ってねーよ。」

「いただきものを捨てたりしませんよ。」

「だね。質感とかどっしりしてて気にいってるんだよね。未来の技術が使われてるのかな?」

「間違いないわね。」


想像とは別のところでな。中身はおそらく現状解析不可能水準の超技術が用いられた構造になっているに違いない。索敵レーダー兼通知端末ってとこだな。模型の方は自律機動可能かもしれない。


「そういえば、あなたは?」


一人沈黙を続けていたカメリアにも問うてみた。


「私は、、、姿見を。」

「?造花じゃないの?」


意外である。てっきり椿の造花だと思ったんだが。そういう流れだろ。それぞれゲーム内の名を模したものだ。


「ええと、はい。姿見です。」


私用の物を流用したのかな。


「あのー、、、」


カメリア以外の三人とは初顔合わせのアドラが会話についていけずにいたたまれなくなったのか声を上げた。


「おっと、ごめん。えーと、明日到着の予定だったけど、こいつらの魔法の力を借りて今から一刻で目的地だから。」

「んー?」


状況がわからず疑問顔を浮かべるアドラ。その横でいそいそとウドーが枝先を伸ばし、それに気づいてしっかりと握手を交わしてあげるカメリアの姿を見た。


「体験するが早しよ。んじゃ早速リュウ、馬車にフロート。レオは馬たちにスカイウォークね。直線距離で港町まで突っ切るわ。」

「馬力足りるか?頭数が少ないが。」

「私のロスパーちゃんをなめんじゃないわよ。この子この間、エンストも覚えたのよ。一頭で千馬力は余裕よ。」


メアは当然だが、このロスパーも差異なんじゃね?って気がする程度には稀だ。マギホースなんて早々当たることはないらしい。


この間、遺跡への早駆け途中私がちょっとでもスピードアップをとかけたエンハンス・ストレンクス、これもまた見よう見まねで習得してしまったのである。思い返してみれば玲央の指導によるスカイウォークも数度目で習得した。何だって受け続ければ覚えるのかもしれない。今のところ補助効果限定とはいえすごい。


「マジか。」

「マジよ。」

「エンスト習得は他に例がないんじゃない?いや、スカイウォークだけでもレアなんだけどさ。」

「んじゃ早速、出発よ。皆は馬車。酔いそうなら馬。」


リュウのかけた魔法で浮かび上がった馬車。各々配置についたところでそれを引っ張るようロスパーに伝達した。今日も全力出していいわよと声をかけたら、他の馬を引きずる勢いで駆け出した。これなら半刻かからないかもしれない。


「良い風だわ。」


春の夜のまだ少し冷たい空気が頬にぶつかり続けた。


「すごー、、、」


以前と同じく我が背で相乗りしているアドラ、首は先ほどから後ろを向きっぱである。空中遊泳がもう半分は過ぎたであろうという所でようやく口を開いて出てきたのは素直な感想。


「何で馬車、落ちないの?魔法効果、きれてるでしょ?」

「落ちるのに、合わせて、上に引っ張ってる、からよ。」

「それも魔法?そんな魔法、聞いたことないけど。」

「魔法じゃないわ。知恵よ。」


水平ラインに対してほんの少しの角度をつけて馬車を引っ張る。そのほんの少しで鉛直成分が釣り合わせる。文字通りの力技である。そのことを大雑把に説明した。常時魔法で浮かせても良いのだが効果時間が短く面倒なのである。この方法だと進行方向に対して真横から見ると上下に波打ったような軌道になってガクガクするので乗り心地は最悪であろうが。


「なるほど、斜めに引っ張り、続けてるのね。それならわかる。」

「そゆこと。」


理解が早い。


「あ、見えてきた。あれ、そうよね。暗い中だと、真っ黒ね。」

「そうね。」


目的地が眼下に見えた。夜に見る海の姿はアドラの評した通り真っ黒で、吸い込まれそうな深い闇を連想させる。水精から伝えられた通り東へ普通の速さで二日ほどの道のりを一時間かからず飛翔してきた。海だ。陸との境界ラインはきつめの弧状の入り江になっていて、陸には人家の明かりが見える。ここで間違いないだろう。


「到着ね。地上に降りるわよ。」

「ほいほい。」


ロスパーに指示を送って進行角度を今度は少し斜め下に変える。地面に衝突して馬車が壊れるのを避けるのにある程度の距離を滑走した。静止地点は集落の入口すぐ傍。相変わらず乗り心地は最悪であったろう。


「ったく、言ってくれればフロートかけたのに。」


馬車から出てきたリュウが文句を垂れた。気分が悪くなってはいないようだ。


「善は急げ、よ。」


そう返事をして、今回の差異の舞台に目を向けた。視界におさまる人家の集まりは漁村というには大きく、街と呼ぶには少し足りないくらいの規模だった。


「んじゃ、こっからは分かれて情報収集しましょう。私とカメリアはウドーを連れて二人の寝床の手配をするのに宿のありそうな区画に行くわ。他のみんなも各々散らばってお願い。アドラ、あんたは情報収集メインよ。あ、誰か一人は一応アドラに付き添ってあげてね。」

「了解。」


その場で四人と別れた。アドラは人見知りしない性質だし、観察眼があるし、物怖じせず会話できるし、こういう仕事はピッタリだと思った。


「んじゃ、ウドー、カメリア、良い宿探すわよ。」

「はい。」


シーサイドからのビューが素敵なお宿を求めて海側の区画へと向かった。


「こりゃ、、、襲撃でもあったのかのう。」

「津波でしょうか。」


夜間遠くの視界からではわからなかったが、海岸からほど近い範囲にあった建物はどれも半倒壊していた。要因となった衝撃は海側から与えられたもので間違いない。いずれの家屋からも人の気配はしてこない。既にどれも打ち捨てられたか一時避難しているか。


「襲撃、じゃあないわね。モンスターの類じゃない。これは自然の猛威ね。」


同方角から同程度の衝撃を受けている。もちろん海側から。ここまで一様な痕跡は津波で間違いない、だろう。穏やかなさざ波を立てる海を見ながら言葉をこぼした。普段温厚ではあっても牙をむく時は一瞬だ。


「どういうことじゃ?」

「前に洪水を引き起こす計画を立てたことがあったでしょ?」

「そうじゃな。わしの作った道、氷の球が通ったのう。なかなかの迫力じゃったわい。」

「あれのちゃんとしたバージョンを、時折引き起こすのよ。ほら、あの波が、時折でかくなってね。それがここにぶつかったみたい。」

「誰がそんな面倒なことをするんじゃ?」

「自然に起こるのよ。天気が変わるみたいに。」


受けた被害から小規模のものだったことが推測できる。超級のものがやってきたら、地形による増幅効果も相まってこの集落全域が被害に遭っていたと思う。そのまま返しで海に引きずり込まれてジエンドだ。


もう二点、おそらくレアケースだということと、比較的最近の出来事だったことも推測できた。頻繁に起こるようなら家屋の配置場所を考えるだろうし、損壊の様子からは時間経過がさほど経っているようには思えない。


「なんにせよこの辺りの家屋は全滅なようですね。」

「そうね。他で無いか探してみましょ。最悪悪いけど、馬車になるかも。」

「ハルモスから転移で毎回通うのもよいんではないでしょうか。」

「そうね。そっちの方がいいかも。」

「わしはどっちでも構わんぞ。」


そういやこいつは、生物と自然の二極で仮に分けるとしたらかなりの程度自然よりだよな、と思った。


「そういやさ、ウドー。」

「なんじゃ?」

「あの、南の大樹姿と今とだと、マナ総量とか違ったりするの?」

「そうじゃな。3ぱーせんと程度になっとるんじゃないかの。」

「それは、すごい、でいいんでしょうか。」


ランクダウンしたわけだから素直に称賛するのは違うと思ったのだろうコメントであった。


「いいんじゃない。本気出したら災害クラスってことだわね。」


規模が違う。自然というのはそういうものなんだろうな。


「ま、しばらくは戻りはせんがな。どこかに根を下ろしてまた数百年、かかるわい。次は人のおる場所の傍で、子らを見守りながらが良いのじゃ。」


ふむ、つまりはそれぐらいの時間があれば元に戻るっつーことか。ちょっと気になった私は早速調べてみることにした。


「んじゃさ、ウドー、そうね、、、30秒ほど、今この場所、、、いや、集落の入口辺りで、根を張って落ち着くことにするか、って考え続けて。結構本気で。」

「?わかったのじゃ。」


カメリアも誘って久しぶりにゲーム内機能で未来へ飛んでみる。設定だと数百年先だったはずだ。ここだと視点は上空からの俯瞰も選べる。位置情報は継続だ。


一際目立つ大木が一本。その周りは林と化している。鬱蒼としたものではなくきちんと手入れされているものだ。人の住まう集落はその林に両側から寄り添うように海側、これは今のものと、陸地側にも。こちらは新たに広がったもの。観光地として発展したのだろうか。沖合を見たが、堤防、つまりは土壁、が建ってはいなかった。これは、ヒントだな。


「なるほど。涼子先輩の言ってたものは解決策にはならないのですね。」

「そうね。人好きのウドーなら、たとえ100年に一度程度しか起こらなかったとしても、なんとかするのじゃとか言って堤防造るわよね。」

「そうですね。」


スッと元の時間軸に戻って、ありがと、もういいわよとウドーに声をかけた。他の調査員たちと情報のすり合わせをすべきだ。






「んじゃ、ミーティング開始。まずはうちらからね。カメリア、どーぞ。」

「はい。海岸沿いの建物はおそらく津波で倒壊。その被害を指して海の攻撃と捉えたのは間違いないでしょう。」


再び馬車傍へと集合して会議を始めた。その辺りは調査員たちも共通に得た事柄らしく平然と聞く面々。


「堤防建設の正否も確認してみました。結果おそらく無効とわかりました。」


律儀に説明をするカメリアである。


「確認方法、詳しく。」

「はい。ウドーさんがここで根を下ろしたら堤防建設を行うかを確認してみました。」

「で、なかったと。それでどうして無効だとわかるんだ?」

「そこは私から。ウドーなら集落の人を守る方向に意思決定すると思うの。長く根を張ってオリジナルと同程度に戻ったウドーなら数kmの堤防は土魔法で造れるわ。」

「なるほど。」


反対、というよりは確認方法が納得できるかどうかが気になったのだろう。


「うちらからは以上かな。カメリア、気付いたこと他にあったら。」

「いえ、大丈夫です。」

「わかりました。では次は私が調べたところを。対象は魔法協会員の者に絞りました。ここにもありましたので。」

「へー。」


んなもんあるのか。そのこと自体知らんかった。


「彼らの記録によると津波が発生したのは五日前と十日前の二度。それ以前については記録に残っていないそうです。」

「二度?」

「ええ。一般の住人の方にもうかがってみましたがその二度は間違いないようです。ですよね?」

「ああ。」


リュウと同じくリクとアドラも頷いた。二度、か。それだけで作為的な要因説を持ち上げてもよさそうだ。堤防についてのチェックはそのせいか。取った手法の信憑性はそう高くないが、相対的に人為説が有力になった。


「当然疑ったようですが、特にそれらしい痕跡は見つからなかったそうです。」

「僕も似たような感じだね。村長さん?の所に尋ねに行ったんだけど、結構な高齢で初めての経験だって。間を置かず二度も。三度目が来たら存続も危ういってさ。」

「この集落の存続ってこと?」

「そう。既に出ていった人も何人かいるみたい。二回とも海岸沿いだけで被害がとどまったけど、三回目がもっとでかいのだったら、って不安に駆られてらしいよ。あ、避難先はハルモスだね。並み馬車で三日の距離だし。」


ふむ、水精の情報源はそこからだろうか。それはまあどうでもいいか。


「あーあと、うわさを聞き付けてやってくる人も普段より多いって。僕らももちろんそれにカウントされてるみたい。問題は起こさんでくれ、だってさ。」


悪意が紛れ込んだ可能性がある、か。いつもより多いということは普段完全にゼロの孤立集落じゃない。人の行き来はある。何とか協会も設置されてるようだしな。


「んじゃ俺らから。おい、ほぼお前の手柄だしお前から報告しな。」


最後にリュウからの報告。どうやらアドラについてくれたのはこいつのようだ。決め方は、じゃんけんでもしたんだろう。


「ほーい。酒場で手当たり次第に聞いてきたよ。被害を憂う声がほとんどだったけど、いくつか大事そうなことも聞けた。」

「そう、お手柄ね。一つずつ詳しく教えて。」


やはり向いているのだろう。


「えーと、まず中規模の隊商が来たそうよ。ちょうど二週間前。」

「船が出てるわけでもないドンズマリの集落にわざわざだからな。」

「怪しいわね。」


通いの行商なわけではないのだろう。特に儲けなど転がっていなさそうなこの場所へ。


「特に取引するでもなく数日休んで出ていったそうよ。それが一度目の日。んでその隊商、津波を聞いてとんぼ返り。再建設用の資材とかを捌いて相当儲けたみたいね。金稼ぎってやつ?お店で売るだけじゃなくいろんな方法があるもんねと思ったけど、話を聞くにたまたまの偶然じゃない可能性があるわ。」


匂い立つ。かぐわしい作為の香り。小銭稼ぎを行ったのか。安価に実行可能ならばやりかねないな。そうだとして手法は不明だが。


「そうね。二度目の津波には?」

「そこには居合わせなかったみたい。んで、その二度目もあってせっかく資材を買って始めた再建設も止まっちゃったみたい。」


本気の偶然の可能性もありか。んー、どうだろう。


一度目、何らかの手段で作為的に津波を引き起こす。余震のようにその後勝手に二度目が発生した。そこまでは想定してなかった、あるいは二度ともなると疑いの目を向けられかねないと判断したか。少なくとも悪い評判は立ちそうだ。商人ならば、どう思う、どう動く、、、


「鏡、一応全部聞いてからだ。」


むむむ、と顎に手を当て可能な説明を脳内でぐるぐる回していると、龍から声がかかった。そりゃそうね、とうなずく。


「次に、その隊商と同時期に来た流れ者集団。腕は立つそうよ。周囲のモンスター退治依頼をこなしまくってるらしくて。今日も酒場で大酒食らってた。」


そこまでだとよくある風景だ。


「んで、その経験豊富な傭兵集団に直接話を聞いたんだけど、どうやらここには定期的に訪れてるみたいね。競合相手がいない?って言ってた。で、その時期と津波がぶつかっただけだったみたい。」

「それだと無関係確定じゃない?」

「それがね、その人たちが言うにはいつもより少し辺りのモンスターの格が高いらしいの。」


モンスターの格とは、強さの基準を簡易な階級で表したものだ。下から順にレッサー、無形容=ノーマル、グレーター、チャンピオン、レジェンダリーの全五段階。ちなみにトレントやドラゴンは後ろ二つがエルダー、エンシェントと変わる。さらにちなみに、スケさんやセキさん、ウドーの例を見てわかる通り、個体数の少ない上位ランクと命の取り合いをする機会はほぼない。


勝手な推測だが、スケさんの信念に傾倒するわけでもないが、まともでないとそこに至れぬのだろう。そうでなかったならばあのバンドマンのように封印されるかその頂に上り詰める前に退治されるからな。後者の場合ゲームに登場したとしてせいぜい中位になる。


「ほう、それはどの程度ですか。」

「一段階、レッサーがノーマル程度って言ってた。んで今日、グレータークラスに遭遇したって。」

「ここってそういうのいたっけ?」

「通常フィールドにグレーターなんていたら街間の移動が無理っしょ。ありえないわ。」

「そうですね。」

「私の住んでた森でも中々ないわね。異常だと思う。」


ダンジョンや魔窟の下層じゃないんだから、準備もなしの遭遇ではたま取られるわ。こっち側でそのクラスがいるとしたら遺跡の奥ぐらいだよな。直接の原因か、間接的な影響を受けたのか。ますます作為説が濃厚になる。


「しかしその集団、よく生きてたわね。」

「腕が立つみたいだからねー。今日は無事逃げ切った祝杯だってさ。」

「あそう。」


ベストな手を打ったようだ。さすが、熟練である。いや、掛け値なしにな。生き残るって大事だと思うんだ。


「わかった。他には?」

「目立って関係ありそうなのはそんなとこかな。」


その後細々とした情報を列挙形式で述べ立てた。被害前の状況、被災者たちの今の居場所に被害後の住人視点で見た集落の様子とか。気になったのは普段見ない顔が増えた、という感想ぐらいだった。


さて、本日得た情報は出揃ったか。


「原因、何だと思う?」

「自然発生案は捨てていいと思います。」


カメリアの意見。消去法でつぶしていくつもりか。そうだったらそうで堤防造るぐらいしか思いつくことはないし、その想定は最後でいいよな。


「一応現状思いついたのは二つあるわ。一つは商人たちの自作自演、もう一つは水精の自作自演。」

「自作自演ばっかりだね。」

「いや、得してるのはその二つでしょ?」

「商人の方はわかりますが、水精の方はどうしてです?」

「助けを求めて崇められるじゃない。」

「うーん、、、どうだろ。水魔法なら確かに再現できそうだけど。」


私もどうかとは思う。本人それでやる気出してたみたいだし。あの様子だと一度は挑んだのだろう。可能性は低くとも、何でも浮かんだことは言っておくべきなのだ。


「一回目が商人、二回目が水精という具合に偶然噛み合った可能性も考えられますね。」

「そうね。何にせよ証拠がないと推測からは出ないわね。他に何かある?」

「そうじゃな、、、意外にきっかけは意図せぬところからの可能性もあるんじゃないかの?」

「どゆこと?」


ほけーっと作戦会議を聞いているのかいないのかといった様子で立っていたウドーが曖昧な推測を述べた。


「いや、お主が槍を抜いたように、な。モンスターの凶悪化もあったのじゃろ?」


そうですか。いや、確かに、そうですね。しかしあれがあのボスだけじゃなくここら一帯のモンスターや海の脅威も抑えていたとしたら、シャレにならんぞ。正解は既にハルモスでの役目を失った槍をここにぶっ刺すことってか?ノーヒントでそんなの思いつきようもない。


「槍?」

「いやね、ハルモスのイベントでさ。」


ざっくりまとめて説明した。その間に、関連なしだと思い至る。あれは普通のイベント、こっちは差異。絡んだりはしないはず。それにいくら強力な抑え効果があったって、相手が海じゃあね。私一人満足に吹っ飛ばせない奴を抑えるもので、果てしなく広がる海の力を抑えられようもない。


「なるほど。きっかけについては似た話の可能性はあるな。」

「私は何もしとらんぞ。」

「住民の誰か、あるいはよそ者が何かやらかしたのかも。」

「そうだな。意図的、無意図どちらにしろ、な。むしろ差異確定で何らかの抑えがあったと仮定した場合、その抑えに何の意図があったかの方が大事かもな。自然発生じゃない上、プレイヤーのアクションなしにそれが外れたわけだろ?」

「んー、一定以内に近づいたらオンになるタイプなのかも。」

「ありえるね。ハルモスに着いたのと、ちょうどタイミング合うんでしょ?」

「そうですね。えっと確か、十日前だった、ですよね?」

「そうね。一週間と三日。今日で丁度十日ね。」


今夜のこれからはすぐに決まった。


1、グレーター退治隊。私とアドラ、リク。

2、集落詳細調査隊。カメリア、ウドー。

3、隊商追跡調査隊。リュウ、レオ。


である。


じゃあ出発、という所で、衝撃音。どうやら五日のスパンで到来してくるようである。


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