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箱庭の君  作者: 鏡 龍彦
高校二年生 -春-
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nayami_ha_tsukizu

「朝四時起きとか何の拷問かと思ったけど、あんなに早い時間からぐっすりだと自然と目が覚めるものね。田舎暮らしってこういうものかしら。」

「そうかもね。」


民宿へと戻り寝る前のもろもろを済ませた時点で八時過ぎくらいだったろうか。そう間を置かず同室の二人は寝入ってしまった。私も、朝は得意な方ではないので布団をおっかぶって眠ろうとした。二人ほど疲れてはいないと思ったけれどそのまますぐにちゃんと寝れたのであろう。まだ日も昇っていない薄暗闇の中、ごそごそと動き始めた二人につられて私も無事目を覚ますことができた。いそいそと準備を済ませて寺までの道を三人で進む。


「化粧一切禁止ってのは逆に新鮮よね。」

「私は普段そんなのしないけど、そういうもん?」

「ゴテゴテなのはさすがに先生に突っ込まれるだろうけど、軽くファンデーションぐらいはさ、普通よ。」

「そうなの?」


こくりと同意のうなずきを返す結城ちゃん。二人とも今日はノーメイクということなんだろうが。むしろ昨日していたという事実の方が驚きだ。


「昨日と別に変わってなくない?」

「誉め言葉と取っておくわ。」


誉めも何も、実際にそうなのだが。何が違うのかさっぱりわからぬわ。僧侶の方の誰かに指摘されたわけだから、違うには違うのだろうけど。いや、ただの忠告だったと思おう。私だって目は、それなりに良いはずなのだ。






昨日指定された堂へと着き、すぐに朝の読経が行われた。何語か判別のつかぬ言葉が響く。これが噂のサンスクリット語、というやつであろうな。


「では、皆さまも坐禅を。」


読経が終わって、坐禅の開始。やり方は昨日迅雷さんから教わった。指示された通り皆壁を背にして座禅を組む。私もそれらに習う。


雑音の一切ない道内、静かな呼吸音のみ響く。数メートル先の床を見つめる。木。茶色い。木造のお堂。私が受ける地球の重力を、垂直抗力で支える床。だから落ちないし浮かばない。絶妙なバランス。均衡。ド安定。


私の体の表面から先空気が広がって、それがほかの誰かや何かとつながって。遥か彼方には別の星。太陽系と同じように、神の位置取りで生命が生まれた場所もあるかもしれない。


ハロー、ニイハオ、ボンジュール、こんにちは、どれを選んでも、もちろんサンスクリットだって、伝わったりはしないだろう。


じゃあ2,3,5,7,11、・・・はどうだろう。


ちっぽけな、相対的な、面積体積ほぼゼロ一点青ドット。その中の、さらに小さな人ひとり。けれど内面無限大。世界のすべてはその内に。


一時間ほどだっただろうか。思考は巡り続けて、ほんの一瞬で過ぎ去ったような気がした。


「では朝食にいたしましょうか。」


今日から準備は自前。材料は他前。汁物と野菜の質素なおかずで白米をいただいた。






朝食後、午前の作務が全て終わって、昼食準備までの自由時間になった。坐禅するもよし、経を紐解くもよし、ぶらぶら散歩するもよし、持ち込んだ何かで消費するもよしの指定命令一切なしの時間。


「ちょっと、龍、それはないんじゃない?」

「何でだ?悟りの境地に至ってる人物だと俺は思うぞ。」

「いや、まあ、そうなのかもだけどさ。」


以前、冗談交じりに読んでいると言っていたが、冗談ではなくガチだったようだ。手にしている書は凄腕スナイパーの活躍を描いたもの。


「一発の銃弾が神様ってのも割かしいい意見だな。」

「迅雷さん、あなた、本当に破戒僧ね。人殺した経験とか、無いですよね?」

「どーだろうなぁ?」


思わずちょっと失礼な感じになってしまった私の物言いに対して、迅雷さん、寺内で一番若いが故の生徒たちの世話役、は不敵に口元をほころばせた。


「ほっほ、今年は曲者が二人か。」

「ですね。境内をジョギングしてる子に、気に入ったのか坐禅に勤しむ子ら。経の追加講座に興味津々の子らも。その辺りは毎年恒例ですが。」


お師匠さんまで登場して会話に混じって来た。


「自由時間と言われても、特にすることも思いつかなかったもので。掃除でも何でも、やれと言われればやりますが、自分から進んでやろうとは思うものでもないですし。」

「そりゃそうだな。」


ちらとお師匠さんの方を見てみる。特に文句はないようだ。


「それに坐禅に打ち込んだところで、四日で得られるものなんて。」

「それもそうだな。」


再びちらとお師匠さんの方を見てみる。少し悲しそうな表情に変わった。


「すいません。こいつは万事が万事こういう感じなので。龍、四日で無理とか、一年でも二年でも同じことが言えるのよ。」

「同じじゃないだろ。馬鹿か?俗な例で、、、そうだな、数学書一冊理解で百万としようか?文献の記述内容の再構成が空でできるかどうかでチェックできるしな。んで、制限時間四日でとか言われたら端からあきらめるが、一か月なら本気出すだろ?」


ぐ、確かにその通りだ。こいつ、精神論への耐性はばっちりか。


言い返しに詰まっていると、ほっほ、とお師匠さんの笑い声が響いた。


何となく、聞いてみるなら今かな、と思った。燻ぶっていた一つの疑問をぶつけてみることにした。


「そもさん。」

「説破。」

「しゃべる猫を拾いました。とても賢い猫なのです。当然物珍しくて、取り合いになります。その猫はやはり、斬り捨てられるべきなのでしょうか。」

「樹上に乗せよ。」


間髪入れずに返答が来た。


「ありがとうございます。」


深々と頭を下げて、脳にその言葉をしっかりと刻んだ。顔をあげたところで、ピクッとお師匠様の顔が私の少し横の方に向いた。視線が私の横の見えない何かに向けられていた気がした。







「剣筋からは、深い悩みを抱えているようには思えなかったがな。」

「私の問題じゃあないですから、ね。」

「そうでもないがな。」


お師匠様が出て行って三人、再度会話に興ずる。


「お師匠様の言葉、わかりやすく意図は察せるが、それで正解かと問われるとな。」

「そうですね。」


そこから飛び降りて、無事着地できるかどうかはもちろん、どこへ向かうかも彼次第。周りがどうこう決めることではないといいたいのだと推測した。けれどこの解答は論理的に過ぎる。


「殺人経験のある破戒僧さんとしてはどう思います?やはり猫程度、騒動の種になるなら斬るべきと思いますか?」

「南泉斬猫に絡めたのは、その公案の意図も知りたいということか?」

「それもありますが、シチュエーションが、疑問を想起させたもので。」

「難題よな。殺生を行ったのはなぜか。そして越州の解答がなぜ解答たりうるのか。拙僧にはわかりかねるよ。なんせ、破戒僧だからな。」


自嘲気味にこぼして、はにかみ笑顔を向けた。


「そういえばその公案を見たとき気になったんですが、討論の内容が記述されていないのはなぜなんですか?」


龍からの質問。


「ったく、俺に聞くなよ。けど、そうだな、、、言い争うという弟子たちの様子自体が問題なのであって、内容は関係ないからじゃないか?」

「なるほど。そうですか。」

「が、俺ならその猫、自分で独り占めするね。そんな話し相手がいれば、生活に潤いが出そうだ。猫だからうざったくもないだろうしな。弟子たちの中に、猫を見つけた最初の奴がいるはずだろ?責任という意味なら、輪に持ち込んだそいつのせいだ。誰にも知らせず一人で世話してやってれば、問題なんて生まれなかったろうさ。」


間接的な説教を受けてしまった。


「俺も同意見ですね。なんせしゃべる猫だ。知れ渡ったら騒動が生まれるのは必定。」

「だよな。」


龍からの追撃。そして男二人賛同して、首を二度ほど縦に振った。


「けれど、その猫の元の飼い主経由で困ったことになる可能性も残ってるんですよ。そうなると一人占めしてたことがばれて余計にめんどくさくなるかもしれません。」

「なんだよ、元の飼い主って。こまけぇー設定の問題だな。が、確かにそうなると、うーむ。」


龍からのフォロー。敵がいると想定したら、そこからか、未来からぐらいか。


「うん、めんどくせぇな。師匠の言った通り、樹に乗せよう。皆の見える位置に置いたら、より取り見取り、有象無象が集まって来んだろ。んで、公平に取り合い合戦だ。」

「その取り合いが駄目なんじゃなかったでしたっけ。」

「ああ、そうだった。んー、わからん。」






あれこれ話し合う二人から言い出しっぺの私は離れて、昼食までの自由時間の残りを一人境内を良さ気な木を探してさまよった。普通だったら孤独になれる場所など自分の部屋か一人入ったカラオケボックス、ぐらいしかないのだけど、ここでは探す必要もなくどこでも一人だった。


言われた通り、木にでも登ってみるかと思い立ったのだ。


とっかかりの多い一本を見つけて早速木登りしてみる。一番上まで、行けるだろうか。


「鏡様、危険ではありませんか?」


地上5mくらいに差し掛かったころ、メルクスから小言が下りた。地面まで確かに結構ある。


「落ちたらあなたがキャッチしてくれるでしょ。」

「それはもちろんですが。」


忠告を気にせず登り続ける。さすがにそこまでどんくさくはない。ほぼ水平に伸びていた太目の枝に腰を落ち着けてそこから上を眺めて、これ以上は無理かなと思った。ストン、と衝撃を相当に殺した着地音が横からして枝が揺れた。


「あなた、目が合った?」

「そうですね。近づきすぎたかもしれません。」

「まあ、仕方ないんじゃないかしら。」


存在であふれかえっている都会とは違い、葉っぱ一枚動くだけでも感じ取れるような気がする場所だ。長くここで生活を行っている人にとっては不可視とはいえど欺けないのかもしれない。見えないからいないということは無い。視覚ほど頼りにならぬものもない。彼女が動けば空気は揺れるし振動するのだ。


「あの者の言葉、お気になさらぬように。ただの戯言です。」

「そうかもね。」

「お猿さんがおるな。一人でぶつぶつ、何をしてる?」


いつもよりずっと高いところからきょろきょろとあたりの景色を見ていると、初めて聞く声が下から聞こえた。女性の声だった。この寺関係のどなたかで間違いない。


そのまま上から下を見る、のは失礼かと思って、降りることにした。とっかかりを使って、登る時よりも少し慎重に降りていった。


「おちびさん、背の低さに嘆いて木に登っていたのかい?」

「そうかも、知れません。」


別に私の背が低いわけではない。平均ちょいぐらいだ。目の前にいたのは私と同じか少し低いくらいの女性の僧だった。頭を見れば判断がつく。きれいに剃りあげられているから。


「それで、高いところから眺めて、いつもと違うものは見えるのかい?」

「角度が変わったところで、見えるものは同じです。種類や量は増えますが、地面でだって場所を変えれば同じことです。」

「そうか。して、同じなのは見られるものの方か見るものの方か。」

「見て触れて、あれこれ調べ上げれば、同じと判断はできますが、見るものの方は見ることも触れることもできません。」


問われ、答えて、右手でペタペタと自分の顔を触れてみる。形がどうとか触覚だけでは判然としない。


「ふふ、そうかもな、おちびさん。が、私が見ることができるのは逆に、自分だけだな。」


言葉に詰まる。確かに、そうなんだろうけど。


「昔私が言われた言葉だ。そっくりそのまま、な。猿知恵では悩みは解決せんよ。いくら詰め込んだところでな。欲しいのは、どうするかであってどうしてか、ではないんだろ?」

「そうですね。」

「面壁して坐禅でも組んではどうかな。自己を見つめるには最適だ。」

「はい、やってみます!」

「ちょっと、おい、、、」


礼をして辞して、早速昨日の道場へと駆け足で向かった。中には誰もいなくて、私は壁のすぐ傍、直面して坐禅を組むことにした。


今度は板の壁。やっぱり茶色。すぐ目の前にあるそれは、だんだんと私を圧迫し始める。押しつぶされそうな感覚が走る。今にもこちらに倒れてきそうな、ありえない不安が溜まってくる。一枚の鏡が今写しているのはゆがんだ虚像。


(・・・)


そのまま数分間経過した。壁の方を向いて行うのはかなり気持ちが悪かった。だから私は竹刀を取り、壁に立てかけ、その前に座ることにした。それならきっと違うだろう。


「やはりこっちにいたか。先ほどは名乗らずに失礼した。阿水という。主に女の子たちの世話のために呼ばれた。昨日は所用で来れなくてな。三日間、短い間だがよろしく頼む。民宿でも、ご一緒させていただくことになる。」


壁にバランスを取って竹刀を設置していたところで後ろから先ほどの尼僧さんの声がした。すぐに振り返り、私の方も名乗りの挨拶をした。そういえばさっき、いきなり駆け出してしまった気がする。失礼だったかもしれない。


「どうやら集中はできなかったようだな。しっかりやっているようだったら背だけ見て出ようとも思ったが。映されるものが何もない壁では、退屈か?」

「壁の中にいると、息ができずに死んでしまうのです。」

「なんだ?何かのとんちか?」

「いえ。」


ちょっと前に龍から借りてプレイした古のゲームでの出来事が思い出されて口から出てしまった。敵にやられるのに比べて、何とも言えない気持ち悪さのある全滅である。戦士の私は今、そういう不運に見舞われないために信心をプラスしようと修行に励んでいるのだ。何かをつかんでロードへとクラスチェンジできたら御の字である。


「そうか。で、その竹刀は?」

「村正です。」

「そうか。それなら知ってるが、なんで村正だ?」

「追い求めるものだからです。」

「ふむ、さっぱりわからん。他の者から聞いた通り、本当に変わった娘のようだな。」


そうではない、と思った。私が反射で答えすぎて、選ぶ語句を不味っただけだ。何を答えているのか、自分でもよくわからない。


「まあいい。さっきも今も、いきなりですまなかったな。少し、話さないか?他の二人の子とはもう話したんだ。んで、お前はちょっと変わったことで悩んでいるそうじゃないか。思春期特有のものならお手上げだが、違うようだし。何か私で力になれることもあるかもしれん。」

「はい。」

「うむ。で、そうだな、、、ここはちょっと、想像と違ったろう?」

「そうです、かね。バイクとたばこには驚きましたが、他を知らないので何とも。」

「そうか。が、まあ、欲求は捨てきれんということさ。生物ならば、当然だ。あいつのそれはだらしなさ過ぎだがな。」


生物ならば、か。


「生物でなければ、捨てられるのでしょうか。」

「そもそも捨てるものを持っているかの方を考えるべきじゃないか?機械にそんなものはないだろう。」


確かに、そこは重要かもしれない。様子を見るにメルクスはかなりの程度実行できたらうれしい行動というものがあるようではある。


この間も何かない?と聞いたら飛行機にもう一度乗りたいと言っていた。なんでわざわざ飛行機?と更に聞くと風の衝撃がなんたらとか言っていた。乗る、が機乗じゃなくて機上の意味だったことに閉口した。


けれど、阿水さんがここで言及しているのはそういう表面的な、享楽的な欲求についてではないと思う。


上手く言えないけど、もっと奥の方でぐちょぐちょとうねっている白黒判別つかぬもの、そういったものをこの子が抱えているかということだろう。それには確かに腕を組み頭を傾げざるを得ない。


イクスの方は、どうだろうか。外への憧れは、まっさらな透明色だと感じる。それは違うんだろうか。


「まだ、無いかもしれません。」

「まだ、とは?」

「これから見つけるかもしれないからです。」

「ほう。機械のことか?あいつら、と言っていいのか知らんが、それもまた、この生き地獄にわざわざ落ちに来るというわけか。その崖下へのひと押しは、我々が行うのかな?」


飛び出した単語の一つに強く震えそうになった。


地獄、そうかもしれない。この人もまた、何かを抱えているのかもしれない。私よりずっとずっと考えた上で、経験も積んで、そう感じているのかもしれない。


ここに比べれば向こうは、天国か?判断できない。


「悩ましそうな顔をしているな。物の喩えだ。しかし、悩みの根源は欲求だ。悟りの境地とは、簡単に言ってしまえばそれと上手く折り合いをつけること。無くすわけじゃない。無くすことなどできないからな。ただそれが原因で悩まなくなるほどの何かを持つということだ。だからまずは俗世のしがらみから解かれたこういった場所にこもるのさ。それでまずは表面的な欲が強制で無くなる。踏み切ってさえしまえば、簡単だろ?あいつ、迅雷はそれすらできん未熟者だがな。私もまあ、そうだな。悟るなど、遥か彼方さ。」


一言一言、しっかりと耳を傾ける。そして考える。欲が無ければ迷わないのか。メルクスは、根元の欲がないから、いつも黙って私の傍に居続けて、文句の一つも出さずにいられるのだろうか。彼は最近、文句が多少口に出るようになった。


「日々あれこれと迷ってばかり。けれどもし、最初からそんなしがらみなどなければ、悟るまでもなく迷わなかろうさ。ロボットとか、そういった類はそうだろう?時折、うらやましくもなる。」

「だとしたら、そうだとしたら、欲が無ければ迷わないなら、悩みが生じたなら、迷うならば、それは欲求を持っているということですか?」

「そうだろうさ。」


そう、なのか。


彼は既に、本来無かった悩みを手に入れた。本当に外へと行くべきなのかと、問われた。透明な青が、濁り始めてしまった。


私は崖から、彼を突き落としてしまったのか。私は彼を、地獄へ落してしまったのか。それを知って垂らされた蜘蛛の糸を、私は知らずにぶちぶちと払ってしまったのではないか。


違う、そんなんじゃない。違う、そもそも原因は私じゃない。違う、そういう風に思うのは、違う。違う、違う、違う、違う。今まで通り、のんびりと、それで、良いんだ。それで、それで、、、


「何が原因かはさっぱりわからんが、機械にあこがれても詮無いとは思わんか?」

「そうじゃあ、ないのです。そうじゃあ、、、ないのです、、、それは、間違え続ける、私のせいなのです。」


久しぶりに、水が目からあふれてしまった。






「落ち着いたか。」

「はい。すみません。」

「もう、昼食の時間なんだがな。このまま向かうのは、格好がつかんな。」

「いえ、大丈夫です。」


目元をしっかりとこすって立ち上がりかけた私の作務衣、その先っぽをつかまれて、無理やり床に押し戻された。


「私の格好がだ。お前のじゃない。話せ。」

「無理です。」

「どうしてだ。」

「荒唐無稽すぎるからです。そんなことを信じる自分も、そんなことに悩む自分も、愚かしいほどに、あほな話だからです。ファンタジーにのめり込みすぎて、現実がわからなくなっただけなのです。」

「鏡様。」


禁忌が、顔をのぞかせた。


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