表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キレイの定義  作者: 他紀ゆずる
結編
78/80

未来1 リーリア(ファミリア?)編

拍手小話再掲です。

 レリレプトに対する女たちの反応は、半々だ。

 

 『汚れた存在』と蔑むか『革新的な存在』を寵を望むか。

 前者は天使に多く、後者は悪魔に多い。

 それでも両種族の主要人物に重用され、さらには見合った実力を備えたレリレプトは、短期間で己を周囲に認めさせるだけの功績をいくつも挙げてきた。『合いの子』などと愚かな事を口にする頭にカビの生えた旧態依然とした連中を駆逐する、若い勢力の急先鋒になりつつある。


 だから、こんな光景は日常茶飯事なのだ。


「レリレプト様、踊っていただけません?」

「あら、次はわたくしと踊るお約束でしてよ」

「いつそんなお話になったの?」

「ずうずうしいのじゃなくて」

「そちらこそ」


 寡黙で、表情のほとんど動かない男は、周りで始まった女たちの諍いに爪の先ほども興味を示さず、ただ静かに佇んでいる。

 王主催の舞踏会、という名の若者たちの見合いの席では、めぼしい男女の周囲に大勢の異性が集るという馴染みの光景が広がっていた。

 中でも今回、目玉と思しき存在は3人。


 混じり子でありながら、天使や悪魔のトップクラスの者たちが到底敵わぬ力を有するレリレプト。

 悪魔と人間の混血ハイブリッドのリーリア。

 天使と人間の混血ハイブリッドのイオ。


 何れも影でエンペラー(王より権力を持った存在)などと渾名される双子達を後見人とする、今最も華やかな玉の輿(逆玉)候補たちである。

 しかも彼らは容姿も抜群に麗しい。優れた姿かたちが種族特徴である天使や悪魔から見ても、それは抜きんでていて、美しいを通り越し麗しいと評されることが彼らの代名詞であった。


 けれど、そんな華やかな席で群がる男どもを邪険に追い払って、飲んだくれる娘もいる。

 今回の主役の一人、リーリアである。


「なに、やさぐれてるわけ?」


 何杯目かのワインを煽ったところで、背後から人の悪い声がかかった。

 ゆるりと首を巡らせると、神出鬼没の猫娘、ファミリアが立っている。

 リーリアの五つ下のこの幼馴染は、身分制度が好きではない母のおかげで生まれた時から彼女の屋敷に当然にいて、十になった現在では種族は違えど妹だとあちこちで公言するほどリーリアとイオにとってかけがえのない存在となっている。

 そして、本来ならばおいそれと獣人が入り込めないはずの王宮に突然現れても、誰も咎めない。騎士ですら見て見ぬふりを通す、宮殿内のイレギュラーだ。

 理由はその出自と実力に裏打ちされているのだが、それはともかく。


「あれ、おもしろくないんだもん」


 唇を尖らせたリーリアは、ほんのり色づいた白磁の頬を膨らませて、視線でレリレプトを示して見せた。 その表情に周囲の男どもが色めき立ったのに口端を上げながら、少女は姉と慕う娘の腰に抱きついて落ち込む姉に同調する。


「ああ、レリってばひどいよね」

「うん、ひどいわ」


 ファミリアの言を得てますます頬を膨らませるリーリアは、文句なしに可愛らしい。

 王宮では『冷徹姫』と呼ばれるほど滅多に感情をあらわにしない彼女だが、身内の前では我儘を言い、拗ねる姿が通常運転だ。

 この顔を見られるのも、こんな風に接してもらえるのも、彼女のうちに入れてもらっている証拠。

 優越感で尻尾を揺らめかせたファミリアは、ますますリーリアに絡み付きながら、彼女に触れ始めてから向けられる刺さるような殺意に、心の中で舌を出した。


 焦ればいい。そして、思い知ればいい。


 寄せられる好意に甘えて蔑にすれば、宝物は易々と指の間をすり抜ける。誰かにうっかり奪われる。

 年齢に見合わぬ老成を覗かせたファミリアは、大好きな姉の為なら人肌でもふた肌でも脱ぐ。

 さて、どうする?未来のお義兄さま。


 するりと女の輪を抜けて、此方に足を向けたレリレプトに悪戯猫は意地悪く笑った。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ