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旅の目的地


色とりどりの、でも決して適当に配置されているわけではない街並みは圧巻だった。


人通りも門の外ほど多くはなく、前を歩く蜂蜜色を追いかけながら、ルナリアは彼が歩幅を合わせてくれていることに気がつく。


大きな足が、ちま、ちま、と歩きづらそうに進む。

なんだか可愛らしい気がして、くすりと笑みがこぼれた。


大きな手に促されてひとりで足を踏み入れたのは、細道を通って奥まった場所にぽかりと空いた暗闇の穴。


もうすぐ。もうすぐ、ルナリアの願いが──いや、望みが果たされる。

やりたいことというより、必ず成すべきと己に課した義務。

このために、ルナリアはここまで駆けて来た。


どこか心配そうな蜂蜜色に微笑みかけてから、一歩踏み出す。

瞬間、周りがすべて暗闇に覆い尽くされ、目の前にひとりの女性が現れた。


「……」


『そなたの会いたい者の姿を取っている。気負わずそこにいろ』


姿とはかけ離れた音が、頭の中で言葉を紡ぐ。

この国の言語ではない、ルナリアの母国語を。──なるほど、これが魔法か。


「……望みを一つ、聞いていただけますか」


多くの言葉はいらないと思った。

叶ってもそうでなくても、ルナリアはここに来なければ始めることもできない。


『対価は?』


「ここに」


自分の胸に手を当て、緊張で強ばる頬を叱咤して笑顔を浮かべる。


「どうぞ、如何様にも」


『……いいだろう、望みを』


「わたしは────」





ふらふらと危うい足取りで、ルナリアはようやく門へと辿り着いた。

案内してくれた蜂蜜色の彼が、おろおろとしながらも送ってくれたのだ。


「やっと……」


ほろ、と涙が落ちた。


小さなひと雫が、焼けた地に吸い込まれて消える。


泣いたことなどほとんどない。

最後に泣いたのは、義弟だったあの子と別れた時。

しゃくりあげて、いつも冷静な侍女が狼狽えるほど泣いた。


父の悪事を知った時も、トリスタンと偽りの駆け引きをしていた時も、すべてと決別した後も、一度たりとも泣いたりしなかった。


「……やっと、始められる」


ルナリアの、ルナリアだけの人生を。

ここから、罪を背負いながらも、希望を持って行ける。


悲しくて悔しくて、でもどうしようもなく嬉しくて、罪深さにまた泣けた。


「……許さないで……」


両手で顔を隠し、嗚咽を漏らす。


許されたくなどないのだ。許さないでほしいのだ。

背負うには重すぎる荷を、それでも抱えながら生きていきたいのだ。


────生きていることだけ、許してほしいの。


くらりと揺れた衝撃に抗わず、ルナリアは意識を手放した。



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