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八拳演義 – A Saga of the Sky-Color Warrior Girl ~記憶喪失の武術少女・空(クー)は、自分探しの旅を始めました。~  作者: 旅わんこ
第十二章 王都攻/抗/交/鋼(こう)戦 ~ エピローグ 帰郷、そして旅立ち
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第十二章 王都攻/抗/交/鋼(こう)戦 ~拙者の参拝の旅、最後の目的地に到着でござる!~

 ハバレーより北、

 アヴァロン区、国立公園『セイクリッドアース』。

 広大な緑の大地を、砂塵舞う荒野を、動物たちが駆け回る丘を、力強くうねる川のほとりを抜け、はるばる訪ねれば、そこはずいぶんと……。

「これをどう形容すればよいでござろうか?」

「荒れ果てている、自然のまま、神々しい、のです……? とにかく、参拝路以外はあまり人の手入れがされていないと言うことだけはよく分かるのです」

 セイクリッドアースのほとんどが草原で、ところどころに木々が立っている程度。さらに進めば木々が密集し、林、そして森になってゆく。

 ジグラスの基本形は、正方形の砦とその角に円塔、その内部にメインとなる祈りの塔と付随する施設がいくつか、それが今までのジグラスに共通する特徴である。だがプリモディアル・ジグラスは砦の内外に草木が生い茂り、完全に森に呑まれている。南にある正門からは参拝路が整備されているようだが、それ以外は様々な虫や動物が徘徊している。ちょうど、ヘビを仕留めたヤマネコが空たちの前を横切って行った。

「まさに弱肉強食、生存競争……。毒蛇に噛まれないうちに、祈りの塔に参りましょう」

「そうッスね」

「害獣除けのスプレーもかけておきましょうか。ピエリーナ」

「はいなのです! アーラ・ビアンコ特製アウトドアスプレーなのです!」

 砂利と踏み石を敷き詰められ簡単な木の柵が施されたた参拝路を行けば、その先にはどのジグラスよりも小さく彫刻も華美ではない、おそらくは火山岩を削って作られたであろう大人の男性の背丈ほどの大きさの祈りの塔がある。塔には苔が生い茂り、その苔を食べる小動物もいる。

 更に祈りの塔の周囲には八つ、やはり苔まみれの石像がある。明らかに人を模ったものだが、それが何を意味するのかはひまりが語ったレアガルド伝記を知らなければ推測すらできない。

「これがおそらく、ドラゴンを討ち果たした八士の英雄像。立派なものでござったろうに、今ではこのようなお姿に。これが時の流れと言うものでござろうか。ここは荒れ果てているのではない。この森そのものが、まさに神域なのでござろう」

「神域、ですか……」

「人の(つく)りしものはいつか滅びゆく。ここも雨風にさらされゆっくりと滅んでゆくのでござろう。しかしここには確かに美しい命の営みがござる。神々と英雄たちも、未来永劫ここであまたの命を見守り続けてくださるのでござろうな」

 そこに、空たち以外の足音が聞こえた。

「珍しいの。参拝者か?」

 空たちが振り向くと、そこにはこの祈り手と思われるエルフの美しい女性がいた。

「あなたは?」

「うむ、ここの祈り手をしておる、リールー・ジグラスと申す者じゃ。そなたらはどこで、ここを聞いたのかの?」

 代表して、ひまりが答えた。

「はい。海軍アンカーボルト分隊中尉、ミオ・ナカハラ殿にございます」

「そうか。最後に参拝に来たのもあの者であった。もっとも、北方の町への使いで道に迷ってここにたどり着いたと言うのが近かろうがの。それで、お主らは何をしにここに参った。あの者のように迷ったわけではあるまい」

 そう尋ねるリールーに、ひまりは自分の旅の目的を話し、それならここに来ればいいとミオに教わったことを説明した。

「ならばそのご遺骨、北東にある英雄像に捧げるがよかろう。その英雄は『古き大倭皇国(ヤマト)葦原中国(あしはらのなかつくに)』よりからやってきたとされる英雄『倭建命(やまとたけるのみこと)/通称ヤマトタケル』を祀る像じゃ。稲妻を操る神剣を手に邪なる者を薙ぎ払い、その稲妻で川を引き裂いて道を開き、闇さえも照らし、気象を操り荒野に雨と実りをもたらしたとされておる」

「ヤマトタケル。名が示す通りヤマトから来たりし英雄にして、英霊が一柱。ヤマトタケル様、大倭皇国の平和に尽くした我が主の魂が安らかに眠り続けるべく、あなたの御許(みもと)に主の魂を捧げます。そして我が主よ、ジグラス巡りを夢見たあなたの旅は終わりました。この地で安らかにお眠りくださいませ」

 ひまりは懐からお守りを取り出し、それを北東の位置にある英雄像にかけ、跪いて祈りを捧げた。

 ひまりは、祈り続けた。

 今は亡き主の冥福を祈り、その主を見守り賜るよう英雄神に願い続けた。

 これまでの旅の思い出を、何度も何度も思い返しながら。

 ――我が主。拙者はこの旅で、得がたき家族を得ました。彼女らとの出会いに感謝し、旅の仲間として共に強くあり、肩を並べ、笑い合って生きていこうと存じます。穏やかなる天界より、拙者らをお見守りくださいませ。

 いつの間にか、まるで森がひまりの願いに応えるかのように、枝葉がざわめき、薄暗い英雄像と祈りの塔に木漏れ日がさす。

 最後に四人そろって祈りの塔に祈りをささげ、最後に一礼して踵を返す。


 森の出口。

 空が蒸気エンジンを温めている間、ひまりはリールーに尋ねた。

「リールー様。拙者は最初のジグラスでエンシェントエイゼルンサーガに関する書物を目にし、レアガルド中のジグラスの書庫にはこれと同じレアガルド伝記が収められていることが気になり、旅の中で考察し、これは古の黙示録ではないかと拙者なりに思った次第でございます。リールー様がご存じであればお教えいただけますでしょうか。これはただの物語なのか、拙者が考察した通りの、国が亡ぶ可能性を綴った黙示録なのかを」

「ほう。また懐かしい書を持っておるなあ。これを最後に読んだのは何百年前じゃろうか」

「……大変失礼とは存じますが、リールー様のご年齢をお伺いしても構いませんか?」

「とうに忘れたわい。しかしレアガルドの前身『大ノルド帝国』が滅ぶ前の記憶がかすかに残っておるゆえ、千五百は生きたじゃろうなあ」

「せ……」

 さすがエルフ、生きる年月の単位が違う。

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