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第六章 踊銃使いの錬金術師 ~知らない人についていっちゃいけないって親御さんに教わらなかったんッスか!?~

 表通りの屋台。

 ダージリンの葉を使った紅茶とビスケットが販売されており、四人は屋台のパラソルの下で立ち飲みすることにした。

「お姉さんたち、さっきはありがとうなのです。カウンターで拍手をくれたことも、ロッソたちから助けてくれたこともなのです。あらためまして、私はピエリーナ・マルゲリータと言うのです」

「呉空です。よろしくお願いします」

「アレット・ドイルッス!」

「河上ひまりと申す」

 アレットがグラスを掲げ、釣られるようにして空たちもグラスを掲げ合った。

「で、さっきの連中は何だったんッスか?」

「あ、はいなのです。ナイフを乗っていた子は、『リッコ・ロッセリーニ』、あだ名は『ロッソ』。ロッソのママは我が家と同じく『パダーノ共和国』出身の舞台女優で、パパはその劇団直属の衣装の仕立て屋さんで、ロッソのノノ(祖父)であるロッセリーニ家の家長はこの町の町長で、だからロッセリーニ家やロッソには誰も逆らえなくて。……ある時センターをもらった私について、その家柄を使ってなのかロッソはあることないこと言いふらして、私をセンターから下ろしたどころか劇団を追い出すように仕向けたのです」

「あまり面白くない話みたいッスね。ピエリーナ氏は何て言われて劇団を追い出されたんッスか?」

「はいなのです。私が団員のみんなを陰で悪く言っているとか、劇団のお金を盗もうとロッソたちを誘っているとか、私のお父さんが社長をしているのはその座を前社長から金で買ったとか、なのです」

「あ、最後のはねーわ」

「探偵さん?」

「人ん()の財布事情は知らないッスが、社長または経営者として会社を経営するだけの手腕やがあるなら、前社長からその手腕を買われて任されるのが普通ッス」

「あのー、前社長はお爺ちゃんだったのです」

「つまり世襲制ッスね。はーい、余計に社長の座を金で買う必要が無くなったッス。そのストーリーをでっちあげるなら、コーヒーに神経毒仕込んで社長として働けなくなったとか考えるッスね」

 うんうんとうなずくアレットに、空とひまりは「えげつない」とドンと引く。

「ところで、ピエリーナ氏のお父さんの会社は何屋さんで、どこと取引があるッスか? あ、コンプライアンス違反にならない程度で構わないッス」

「各種シューズメーカーで、バレエのトゥーシューズはバレエ教室にも販売、調整しているのです」

 アレットは頭を抱えた。

「自分らが所属する教室の取引相手の娘いじめるとか、無能にも程がねえか……?」


 シューズメーカー兼錬金術工房『株式会社白き翼(アーラ・ビアンコ)』。

 二階から五階までが貸しアパートになっているが、その半分が社員の寮となっている。

 一階の店舗兼工房のドアを開けるとベルが鳴り、数人の客とカウンターの向こうにいる社員たちが購入や取引などの話をしている。

「おかえり、ピエリーナ! ステージはどうだった?」

 社長のネームプレートを提げた男性が、両手を広げて笑顔でピエリーナを出迎えた。

「お父さん! はいっ、大成功なのです! お客さんからたくさん『投げ銭』を頂けましたし、観客のお姉さんたちもこうして来てくださったのです!」

「そうか、あなたたちが。……ごほん! 大変失礼いたしました、お客様方。私、株式会社アーラ・ビアンコ社長、ジャコモ・マルゲリータと申します。本日は娘が大変お世話になりました」

 客人の前となるとビジネススタイルで礼儀を尽くす。プロだと空たちは感心した。

「はじめまして。わたしは冒険者の呉空。旅仲間で探偵のアレット・ドイル、冒険者の河上ひまりです。娘さんのダンスと銃捌き、本当にお見事なものでした」

「お褒め頂き感激にございます。ところで、冒険者様方は靴をお求めでございましょうか?」

「いえ、娘さんにお招きいただきました」

「然様でございましたか。ではピエリーナ、お茶のご用意を」

 はいなのですと元気よく返事をし、空たちを奥の賓客室へと招いた。

「お茶、何杯目でしょうか……」

 話の続きは、アレットの質問から再開された。

「でも見た感じ、お店は繁盛しているみたいッスね?」

「はいなのです。ロッソとしては、私をセンターから外せればそれでよかっただけだと思うのです。服を破り捨てて表に捨てようって言うのはさすがにやり過ぎだと思うのですけれど、それでも貴族としてのプライドがそうさせるのです」

「貴族としてのプライド、ッスかぁ。町長の孫娘という肩書きは本人にとってもプレッシャーなのかもしれないッスね。まぁ、自分に言わせれば実力で勝ち取れって話にしかならないんッスが」

「うむ。しかしプライドがそうさせないのでござろう。認めたくないものでござるな、若さゆえの過ちというものは」

「ひまり、あんたはどっかの公国の赤い大佐ッスか……。まぁその若さやプライドやプレッシャーが道を踏み外させたんッス。でもガンマンとしての生き方でピエリーナ氏が納得しているのなら自分らが口をはさむことはないッス。バレリーナに復帰したいと言うことであれば、別の楽団に入りなおすってのが手っ取り早いッスが」

 アレットはピエリーナを見やるが、彼女はうつむいて首を横に振って答える。

「そんなことはないのです。もともと何か習い事がしたいって言ってお父さんにねだったくらいなので、本気でバレリーナになろうとは思っていなかったのです。教室の講師さんから筋がいいって褒めてもらったのは嬉しかったですし、ステージの上で踊るのもとても好きだったのですけれど」

「そッスか。ところで、あのタップダンスと銃は誰から習ったんッスか?」

「はいなのです。途方に暮れて裏路地の空き樽に悪態ばっかりついていたら、ファーストインパクトで顔のいかついおじさんが声をかけてきて、それでついていって」

「それ危ねえやつッス!」

「教えてもらったのです。タップダンスのほかに、『カポエラ』と『ガン=カタ』を!」

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