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第八十四話 出生の真実

「殿下…」


「牢を開けよ」


そう言うと、見張りの者に鍵を開けさせて、皇太子殿下が牢の中にゆっくりと入って来た。


「体は…大丈夫なのか?どこか痛いところは?」


殿下は、いつもこうやって私の体を心配してくださる…

そのお優しい眼差しも、何一つ変わらない。


けれど…一歩一歩近づいてくるそのお姿に、思わず一歩後ずさる。


「凌雪…」


「……」


「話は凌孟昊(りょうもうこう)から聞いた」


「……」



「戦場にいる寧王に、今凌雪が捕えられたことを伝令した。投降しなければ凌雪の命を絶つと」


「……」


「心配するな。そなたの命は私が必ずや守る」


「殿下!寧王殿下は今、どうされているのですか」


「まだ返事はない」


「……」


「私がそのような事をするはずがないと、高を括っているのだ。凌雪の命を取るなど絶対にないと…」


「…あ‥ぁ…」


「そこで頼みがある」


「……」


「私は、どうしても寧王が、慶淵王の子だとは信じられないのだ。」


「……」


殿下は、もうすでに父から話を聞いたのだ…

きっと、寧王殿下は殺される。


陛下の子でない上に、この様な事を起こしてしまったのだ。

それが許されるはずもない…


「陛下は…」


「…えっ…?」


「父は…私の子だと申している」


「……」


「実は…私達陛下の子は、生まれてすぐにある道具で司天監(してんかん)の力のある巫女により、本当に親子かどうか鑑別されるのだ」


「ある道具?」


「代々の帝が所持している緋玉鑑親鏡ひぎょくかんしんきょうという宝器で、司天監の阿伽(あか)にしか取り扱えない…」


阿伽あかとは?」


「阿伽は、司天監の巫女で絶大の霊力を誇る。司天監には数年に一人、彼女の様な者が現れるが、その力がなければ緋玉鑑親鏡は正しい結果が出ないとされている」


「それは…本当に実在したのですか?」


「知っていたのか?」


「え…あ…いえ…その様な物が実在するのかと…」


「伝承によれば数百年前、天帝が人間界の王に「血統の真を護る」ため授けたとされる神器だと伝説がある。鏡面は緋色の玉髄を磨き上げたような艶を放ち、裏面には龍と鳳凰の文様が刻まれているらしいが、私もまだ見たことがない。


本来は王家の血統を守るためだけに使われ、代々の帝が厳重に秘蔵しているそうだ」


「そのような不思議なものが…その結果は本当に正しいのですか?」


「鏡の中央に、二人の血を一滴ずつ垂らし鏡面の文様で判別すると父が言っていた。

龍と鳳凰が互いに近づき交わるか、背を向けて離れるかで瞬時に結果が現れると。


一度の判定で得られる結果は絶対で、偽ることは不可能だそうだ」



「……」


「私も李璿も、生まれてすぐにそれで確かめたので、間違いがないと――陛下はそうおっしゃられている」


「そんな…。でも蘇貴夫人が…」



「その存在と結果を知るのは陛下のみ。正室や側室には知らされぬのだ」


「……」


「もし陛下のお子でないなら、蘇貴夫人も李璿もすぐに処刑されている」


「……」


寧王李璿(ねいおうりせん)は、間違いなく私の弟だ」


「……」


「凌雪…私が寧王を必ず助ける」


「殿下…私にできる事はないのですか?!」


「……それは…」



「殿下…」


その時、牢の外から韓昭(かんしょう)さんがそっと殿下を呼んだ。

そして、一度頭を軽く下げ牢の中の殿下に近づくと、何やらこそこそと耳打ちをする。


「何?!凌雪、またくる。私は行かねばならない」


そう言い残すと、韓昭さんと慌てて牢を後にした。


何も聞こえなかったし、何も言われなかったから、一体何が起きたのかは知る由もない。


だが、皇太子殿下のご様子を見れば、大変な事が起きた事だけは間違いがなさそうだ。



私は深いため息をつくと、牢の中の石椅子に腰を下ろす。



寧王殿下が…陛下の本当のお子?


一体何が何だかよくわからない…

王家の血筋の事は絶対だと、兄上からも聞いたことがある。


≪もし陛下のお子でないなら、蘇貴夫人も李璿もすぐに処刑されている≫


確かにそれはそうだ。


そんな不思議な鏡が本当に実在するのかしら…


そんな事をぼんやりと考えていたら、すっかり夜は更け私は壁にもたれてうとうとしていた。


「凌雪…」


その時、誰かに名を呼ばれ、ふと目を覚ます。


「凌雪…起きるのだ…」


蕭烈微(しょうれつび)?」


そこには、男の格好をした蕭烈微がいる。


どうやって入ったのか牢の入り口は開いていて、見れば護衛は二人とも倒されて意識がない。

音も無く彼らを倒すとは…


あまりにも驚き、倒れた護衛と蕭烈微を交互に見る。



「凌雪…よく聞いて」


彼は小さな声で優しくそう言うと、私の手をそっと掴み目の前に跪いた。

私は何も返事をしないまま、彼をじっと見つめる。


「今からここを出よう」


「え?今から?」


「凌雪は身重だ。こんなところにいてはいけない」


「でも…」


「景国の隠密の報告では、寧王殿下がこちら側に付かないと天黎は持たない」


「……」


「もうすでに、皇太子殿下が軍を率いて戦地へ出立された」


「殿下が?!」


「寧王殿下が指揮を執っている全ての軍と蒙成の軍が、共に景都に進軍している。

辺境の軍を大将軍の軍が抑えている間に、それが一気に攻め込んでくるだろう。

慶淵王が…」


「慶淵王殿下?」


狼牙寨(ろうがさい)熊覇(ゆうは)と手を組んでいた…」


「…誰なのですか‥・それは…」


「詳しい事は今話している場合ではないのだ。とにかくここをすぐに出ねば凌雪の命もどうなるかわからない。皇太子殿下と大将軍は既に戦地に向かわれた。私は、皇太子殿下に託されたのだ…」


「皇太子殿下に?」



「急ごう、凌雪!早く!」


こうして、私は蕭烈微の言うがままに石牢を後にした。


表に出てみれば、全ての護衛が倒されて意識がない。

蕭烈微が強いのは知っていたけれど、これほどまでとは…。


「行こう!凌雪…」


私は恐る恐る彼について行き、外に用意してあった馬車に乗り込んだ。


それから私は、景都の外れにある屋敷に連れて行かれてそこで蘇璃(そり)韓碧心(かんへきしん)と再会する。


「お嬢様!!」


「蘇璃!!韓碧心も!」


そしてその侍女と―――私達四人は抱き合い、涙を流して再会を喜んだ。



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