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迷惑ゲーマー、美味しいご飯を食す。

 格ゲー初心者の健人が、迷惑ゲーマー九頭竜を倒した事で、やんややんやのお祭り騒ぎになるゲーミングカフェグランプリボス。

 強いだけでデカい顔をし、迷惑行為を働いていた奴が、ボコボコに負かされたのだ。店の常連達も、溜飲を下げただろう。


 歓喜あふれる店内だが、バンッと、何かを殴りつける音が響き渡る。九頭竜が自身のアケコンを、殴りつけたのだ。

 最近ではあまり行なわれない行為に、カフェ内が静みかえる。


「アイツが2F目押しの、カウンターを毎回込めてくる化け物だってのは分かった。だが、毎回俺の必殺や超必殺を、ガードして来るのが理解出来ない。最速、遅らせ、どんなにタイミングをずらしてもガードして来やがる……」


「あんた、アケコン大事にしていないだろ。だから分かったんだよ」


「は?」


 健人は人差し指で、右耳を指さす。


「レバー音、離れていても丸聞こえだったんだよ。後は分かるだろ」


 九頭竜はこの指摘の真偽を確かめる為に、急いで席に戻り、通常攻撃、必殺技、超必殺技のコマンドを入力する。


 パァン。ガシャ! パァン。ガシャガシャッ、バァン!


「言われて、分かった。俺の必殺技、↓↘→レバー音がうるせぇ。超必殺は、↓↘→の×2だから、必殺の比じゃない位に。まさかこんな事で、負けんのかよ」


 負けた事が余程こたえたのか、椅子に座り俯く九頭竜。そんな彼に健人は、一歩ずつ近づきへこんでる彼を見下ろす。


「落ち込んでる所悪いけど、九頭竜さん、約束は覚えてるだろ。僕が勝ったんだ、肇先輩に二度と関わるな」


 肇へのストーカー行為に余程苛ついていたのか、健人は普段よりも2段くらい低い声で、彼に告げる。


「マイハニーに、二度と関わるな? んな事、出来るわけねえだろぉぉぉぉ!?」


 机に置いていた瓶をたたき割り、擬似的な凶器を作り上げる。九頭竜のまさかの凶行にカフェは騒然となる、この僅かにできた隙を見逃さなかった。

 彼は全速力で肇に近づき、腕をねじ上げる。


「ちょっと、九頭竜君何を。ひっ!」


 そして凶器の割れた瓶を、肇の首元に突きつける。


「みんなから最低な奴と聞いていたけど、ここまで腐ってるとは思わなかった。肇先輩から離れろ」


「うるせぇ、みんなてめぇのせいだ」


 九頭竜の血走った目は、彼が正気で無い事は明白だった。そして凶器を首元に突きつけられた肇は、ガタガタと震え涙ぐむ。


「いや、助けて。助けて、健ちゃん……」


 肇が健人に助けを求めると、九頭竜はさらに苛立つ。


「健ちゃん、健ちゃんて、コイツの何処がいいんだ。これからは俺と幸せになるんだから、他の男の名前を呼ぶんじゃねぇ。さあ、道を開けろ! マイハニーがどうなっても良いのか?」


 彼の脅迫に、店内の人間は左右に分かれ、モーゼを思わせる道が出来る。


「そうだ、俺がそのまま大人しくしてろよ。大人しく、いでっぇ!」


 筐体の陰に隠れていた少女が、九頭竜の凶器を持っていた右手を掴み上げる。


「あんたはんなぁ、やんちゃするのもそこまでにしとき!」


 腰まで黒髪伸ばした、黒い制服の少女は、黒タイツに包まれた足で、九頭竜に足払いを決め足をすくい地面に叩きつける。


 確保しろー!


 店長のドスの効いた声が響き渡り、健人は九頭竜から肇を引き離す。そして常連達は、犯罪者にのしかかり羽交い締めにした。


「健ちゃん、梓姉ちゃん。あああああああああ」


「良く頑張ったねぇ。ええ子や肇」




 ゲーミングカフェグランプリボス前には、何台ものパトカーが赤色灯を灯しながら停車している。

 そして店内からは、手錠を掛けられた九頭龍が連行されていた。

 

 ストーカーでは警察に捕まらなかった彼も、凶器を振り回し人質を取ったとなれば、腰の重い警察でも動いた。


 連行される所を見ていた黒尽くめの少女は、離れた位置から話しかけた。


「あんた、九頭竜はん言うたね。お巡りはんのとこのご飯、健康的で美味しいらしいなぁ」


 彼女の言葉に、コレから起こるであろう事を想像し、顔は青ざめ慌てふためく。


「いやだ、いやだ」


「ウチの可愛い従姉妹を追い回し、泣かしたんや。怖いお兄さんのおるとこで、死なはったらええわ」


「助けてくれぇぇぇ」


 足をバタつかせ暴れる九頭竜が、パトカー入れられるまで、悲鳴は館外の街に響き渡るのであった。


解説 レバー音


 レバーは動かすと、ある程度音が発生する。

 その為、格ゲーの強者の中には、レバー音で癖を見抜けるものが、居るとか居ないとか(本作品は、レバー音で癖を見抜く強者が居る)

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