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スーパーコンボ、夢想乱舞

「やれる事は、やった」


 対戦相手の上原に挨拶終え、椅子にだらりと寄りかかる健人。プロ相手に全てを出し尽くし、精も根も尽き果てたと言ったようだ。


「おーい」


 透き通った、女性の声が聞こえる。だが、疲れ切った健人に、対応する元気は無い。


「おーい……えいっ!」


 自身のほっぺに、ひんやりとしたペットボトルが押し当てられる。


「ひゃい!?」


 健人が左の方を振り向くと、スタイルの良い、ポニーテールの長身女性が立っていた。


「やっとこっちを向いてくれたね、高島健人君」


「上原プロ、何やってんですか?」


「なにか? 君が燃え尽きていたから、冷たいエナドリを持ってきたんだが、反応が無かったんでね。まあ、冷たいのを押し付けるのは、少々強引な手段だったね」


「エナドリ、有難うございます」


 綾乃からエナドリを受け取り、カシュッと言う開封音と共に、グビグビと一気に飲み切る。


「どういたしまして」


 健人がエナドリを受け取ってくれたのが嬉しかったのか、綾乃が満面の笑みを見せる。

 数多くの人間を魅了してきた、上原綾乃の王子様スマイル。男女問わず、メロメロにして来た笑みを前に、健人の心拍数は上がり、顔を赤らめた。


「所で高島君、君はトウカ・サカザキが好きなのかい?」


「はい!? 原作のイリーナ・バニングとの、熱い激闘。何度負けても、立ち上がる姿。それからそれから」


「分かる。トウカとイリーナの対決は、名勝負ばかりだからね」


 原作キャラトークで、盛り上がる2人。

 共通の愛するものは距離を近づけたのか、健人君、綾乃さんと呼び合うようになっていたのだが、彼女が唐突に提案をしたのだった。


「そうだ、トウカとイリーナ好きのよしみだ。面白いコンボを、授けよう」


「面白いコンボ? 気になるから、教えてください!」


 キャラが切っ掛けで、仲良くなった2人。その流れで、健人は綾乃はPC画面に目を向ける。



 ゲーム画面には、綾乃が操作する和風女剣士トウカが居た。相手のキャラに画面左端まで追い詰められ、後ろに下がる事が出来ない状況。


 普通に考えれば絶体絶命のピンチなのだが、トウカが青白く光る。次の瞬間、鞘から抜いた太刀で相手を、上下左右あらゆる角度から太刀で斬りつける。

 マナゲージを消費し、マナバーストで強化された必殺技、飛燕で相手を滅多切りにする。そして最後は、股下から顔まで斬りつける勢いで、太刀を振り上げた。


 斬りつけられたキャラは空を舞うが、トウカが追い打ちをかける。


 超必殺ゲージを2本消費し画面が暗転すると 、チャキッと言う納刀音が鳴ると同時に、太刀を水平に振るう。


 「奥義弧月」と、画面内のトウカが発する。


 青白く輝く弧月状の飛び道具が、先程空中に吹き飛ばし落下してきた相手キャラに襲いかかる。稲妻を思わせる、バリバリとした音をたて3回程当たり判定が発生した。弧月が3ヒットし、相手キャラが再び宙を舞うのだが、その軌道がおかしな挙動だった。


「カス当たり?」と、健人がボソリと口にする。が、次の瞬間。

 綾乃の操るトウカが、今度はノーマルの飛燕で、相手キャラが落下する前に空に打ち上げる。そして打ち上げたキャラが、弧月に当たり吹き飛ぶ。

 それをまた飛燕で打ち上げ、弧月に当てる。それを画面端まで続ける。最後にフィニッシュと言わんばかりに、超必殺ゲージを1本使用しレベル1超必殺、神無月で相手を斬りつけまくった。


「ナニコレ、このコンボダメでしょ……」


 よく分からんコンボで相手を画面右端に運び、最大体力の半分を越える5300も削ったのだ。だが、健人がダメと判断した物があった。


「ダメージと運びもヤバイけど、ゲージ回収量が異常すぎる」


 超必殺ゲージの最大蓄積値は、コンボ返し前には3本あり、コンボ中に3本消費したのだが、コンボ終了時にはゲージが1.5本まで回復していたのだ。


「2ラウンド目の最後に、このコンボを使用したら、3ラウンドの最後にもう1回撃てる」


「凄いでしょ、この夢想乱舞」


 名前を付けたオリジナルコンボを、新しい玩具を手に入れた子供のように見せつける綾乃だが、健人を含む周りのギャラリーはドン引きをしていた。


「凄い、けど。何でこんなもんが出来たんですか?」


「トレーニングモードでトウカを、1年ほど触っていたら出来た」


「メインキャラじゃないのに、そこまで触るのか……」


「トウカ楽しいキャラだし、触っていて飽きなかったよ。まあ、使用キャラじゃないから、披露する機会がなくてとても悲しかったけど」


 一昔前にあった、バスケや宇宙旅行と呼ばれた永久コンボ系では無いものの。現代格ゲーで許されるか怪しいコンボを伝授。いや、押し付けたと言うべきだろうか。

  

 そんなコンボを伝授された健人だったが、彼はコンボと向き合うために、レバーレスコントローラーを手に取る。



「マナブースト飛燕→奥義弧月、飛燕、飛燕、レベル1超必殺」


 呪文のように、これから行うコンボを健人は、何度も復唱をする。夢想乱舞の、レシピを覚え込む。イメージは出来た、後は実行するのみと、画面内のトウカを動かす。

 


「弧月を放つのが、1フレーム速い。気持ち遅らせる位で」


「分かりました」


 健人はアドバイスを元に、2回目で激ムズコンボを成功させる。ギャラリーは(おおー)と声を上げ、綾乃はウンウンと我が子を見守る親の様に、黙って頷く。が、一つの疑問が浮かぶ。


「ところで、1フレームは何秒だい?」


「0.017秒」


「君、本当に初心者?」


 少し健人は黙り込むが、「格ゲー初心者です」と答える。


「成る程ね」


 健人の含みを持たせた回答に、綾乃は何故か満足そうだった。




解説1 マナバースト必殺技。


 キャラがラウンド開始時から、6本保有しているゲージのうち、2本を消費し放つ強力な必殺技。

 マナバースト必殺技は、通常の必殺技より強力なのだが、使用しすぎてマナが枯渇するとキャラが弱体化をするので、過度の使用にはご注意を。


解説2 超必殺技。


 試合開始時は0本ゲージからスタートし、最大保有数は3本まで貯める事が出来る。

 相手にダメージを与えるか、ガードをさせる事でゲージを増やす事ができ、次のラウンドまで持ち越せる、超必殺技の使用に必要なゲージ。

 



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