12話 フェニックスの撮影
ダンジョンには階層というものがある。
ダンジョン内にある階段を降りていくことで、次の階層へと進むことができる仕組みだ。
基本的には下の階層へ行けば行くほど、手ごわいモンスターが出現しやすくなるらしい。
つまり、1層目でヒュドラが出現したのは、レア中のレアということになる。
「このダンジョンの10層にフェニックスがいるらしいんすよ!」
「10層!?」
ネットで調べた情報によると、今まで確認されてきた一番長いダンジョンで100層。
勿論、それを攻略した者も存在する。
それを考えると、10層はそこまで凄くないように思えるかもしれないが、十分に凄い。
「ガオって、ソロだよね?」
「そうっすよ! 1人の方が撮影とか、自由気ままにやりやすいっすからね!」
「ソロで10層まで行けるのは凄いね。ガオも私と年齢同じくらいでしょ?」
「ありがとうっす! でも、このダンジョンは10層まで辿り着くのは、実は簡単なんすよ」
「簡単なの?」
「はい!」
ガオはダンジョンについて、説明をしてくれた。
ダンジョンの構造は大きく分けて、2種類存在するらしい。
1つはごく普通のダンジョン。
ダンジョンという時点でごく普通のではないのだが。
2つ目は不思議のダンジョン。
ダンジョンの内部構造が短期間で変化するらしい。
そしてこのダンジョンは、ごく普通のダンジョンだ。
「つまり、階段の場所は分かっているってことっす!」
「ボスモンスターとかいないの?」
「階層ボスのことっすか? このダンジョンにはいないっすね」
階層ボスとは、次の階層に進む際に立ちはだかるボスモンスターのことである。
しかしゲームとは違うので、スルーしようと思えばスルー出来、更にはその日に倒してしまえば復活することはない。
どちらにせよ、このダンジョンにはボスモンスターはいないようだ。
ちなみにボスモンスターと呼ばれるのは一般的に階層ボスのことを指す場合が多いので、ボスモンスターより強いモンスターが出現したとしても、区別する為にボスモンスターと呼ばれないことが多いらしい。
「という訳でサクッといくっすよ! ちなみに私も強い訳じゃないので、戦闘をするのならば自己責任でお願いするっす!」
「了解。というか、私はマネージャーだから戦わないよ」
「そうなんすか? アイドル配信者っていうのはてっきり、皆バックに強い探索者がいるものかと思っていたっす」
「イルの方がずっと強いよ」
「そうなんすか?」
「うん」
◇
その後、ガオに案内され、サクサクと階段を降りて行った。
降りていく途中で、【擬態】スキルで人間に擬態しているイルが剣を振ってスライムを倒したりもしたが、やはり人間の姿は動かしにくいのか、年相応の女の子が頑張って剣を振っているようにしか見えなかった。
ちなみに剣はこの前折れたので、新しく拾った剣を使っている。
ショートソードなので、ダンジョン内では珍しくもなんともない武器だ。
「これからもダンジョン配信者のマネージャーを続けるつもりなら、貴方も強くなっておいた方がいいっすよ?」
「私が? どうして? でも、確かに自分の身を守る為には必要かもしれないね」
「違うっすよ!」
ガオは耳元で、イルに聴こえないようにか、ささやくように言う。
「危ない目にあった時に、誰がイルちゃんを守るんすか?」
「え?」
そういうと、ガオは耳元から顔を離した。
(そんな心配は要らないんだけどね)
心の中で思う、ミナなのであった。
「10階到着っす!」
進んでいくと、10階へと到着した。
「ここにフェニックスがいるの?」
「はいっす! 毎回いる訳じゃないんすけど、私はモンスターマニアっすからね! レアモンスターについても、色々と知っているんすよ!」
「フェニックスってレアモンスターなの?」
「不死鳥っすからね!」
確かに、ゲームでもレアモンスター扱いされていることが多いような気もする。
「いいっすか? 絶対に攻撃しちゃ駄目っすよ! 相手の実力はS級っすからね!」
「分かってるよ」
そんなことを話していると。
「燃えてる!」
イルが叫んだ。
周囲を見渡すと、炎に囲まれていた。
範囲はかなり広いが、まるで炎の檻のようであった。
「しまったっす!」
「どういうこと? これもフェニックスの攻撃だったりするの?」
「そ、そうっす」
青ざめた顔で、地面に膝をつくガオ。
先程までのテンションではない。
「まさか先制攻撃をされるとは思っていなかったっす……もう終わりっす……」
泣き出すガオ。
それに対して、ミナは冷静だ。
別にミナの精神力が強いわけでもない。
この前のドラゴン戦やヒュドラ戦を通して、ミナは絶対的な安心感を得ていたのだ。
「2人共、ごめんっす……」
「どうして謝るの?」
「だって、このままじゃ……」
「あー……そういうことね」
ミナはフェニックスを動画で数秒間だけ撮影する。
その後イルに目で合図をすると、イルはそれに気が付く。
「もう撮影終わったの?」
「うん」
「食べても大丈夫?」
「うん」
「やったー! 鳥も美味しいんだよね!」




