7話
キーンコーンカーンコーン
六限目の終わりのチャイムが鳴ったら、みんな自由になる。
部活に行く人、友達と遊びに行く人、アルバイトに行く人、誰もが自分のやりたいことができる権利を持っているのだ。
僕はこれから、作詞部の見学に行かなくちゃいけない。
この学校から駅前のカラオケ屋まで歩いて二十分くらいだ。
別に席が隣なのだから一緒に行けばいいのに、遥香はもういない。
僕は特に急ぐことはせず、だらだらと帰る支度をして下駄箱に向かう。
お気に入りのスニーカーを履いて、校門へ向かっていると、僕の横を二十人くらいの集団が走って通り過ぎた。みんなお揃いの練習着を着ていて、背中には『男子バスケ部』と『ONE FOR ALL ALL FOR ONE』と書かれている。
ピロリン
スマホをポケットから取り出し、画面を見てみると
――― もう部活始まってるよー。まだ? ―――
いくらなんでも早すぎる。チャイムが鳴り、少しゆっくり帰る支度をして、靴を履き替え、男子バスケ部の背中を見ている間に部活は始まっていた。
走るなんて絶対に考えられないので、直行してもあと二十分は掛かる。
――― ちょっと遅れるわ。ごめん ―――
送信ボタンを押して、コンビニへ向かった。やはり自分の足はあまり焦っていないようだ。
二人分のチョコレートとカフェオレを買って、今度こそ寄り道せずに遥香のところへ向かい始めた。
ピロリン
――― 部屋は一番奥のKだよ。久保のK! ―――
遥香から部屋の連絡がきた。
――― 北野くんのKでもあるね(笑) ―――
追加でこんなのも送られてきた。
僕達の仲が良くなった理由として、久保と北野で名前順が近かったこともあると思う。
……いや、嘘だ。実際は全く関係がなかった。