41話
次の日はずっと拓実と一緒にいた。
昼休みは一緒に弁当を食べて、放課後は屋上でグラウンドを一緒に眺めた。
色々な競技を一気に見渡せるこの場所は、とても居心地が良かった。
「拓実はなんで部活行かないの? もう始まってるよ」
「いいんだ。なによりも北野っちと話してる方が楽しいしなぁ」
拓実はサッカー部の練習を死んだような目で見下ろしている。
あの緑色と赤色のビブスを着て走っているのがサッカー部だろうか。
目が悪い僕にはサッカーボールを蹴っているのかまでは確認できなかった。
「サッカー上手いらしいね」
「ふっ。まぁな」
拓実は分かりやすく鼻で笑った後、僕の言葉を肯定した。
「割と素直なとこあるんだ」
「まぁ事実だからな、わざわざ否定なんてするかよ」
なんて強気な男なのだろう。相当サッカーに自信があるらしい。
「やっぱり部活行かないと、あの人が怒るんじゃないの?」
「あの人?」
「さっきからすごい勢いで怒鳴ってる人」
さっきからというより正直ずっと怒っている。
顔は全く見えないが、背の高い男が部員に怒号を飛ばしているのが、屋上からもよく分かった。
「あー、あれがキャプテン」
「あの人キャプテンなんだ」
「そう。一個上の先輩なんだけど、見ての通りあんな感じだから、後輩からは嫌われてる」
三年生はもうすでに引退しているらしく、一個上の二年生がキャプテンを務めているようだ。
「だろうね。あんなに怒らなくてもいいのに」
「キャプテンとしてチームをまとめようとしてるのはすげぇ分かるんだけどさ、そのプライドが空回りしてるんだよ」
「もしかして拓実もあの人と何かあったの?」
「ああ。実はそうなんだ。ちょっと愚痴ってもいいか?」
「もちろん。なんでも聞くよ」
グラウンドを見ていた僕と拓実は体を反転させ、その場に座り込んだ。