31話
それは同じクラスの男の子だった。
確か名前は、遠藤 直道。
クラス1のイケメン、いや、学年1のイケメンかもしれない。
性格も良くて、みんなから好かれる人気者だ。
そういえば、遥香に彼氏がいないとクラス中に広まった時、教室の端から僕を見ていたのが彼だった。
「あっ、北野じゃん」
「お、おう」
まさか話しかけてくるとは思わず、挙動不審な態度をとってしまった。
「北野もカラオケとか行くんだ。なんか意外だわ」
「いや、一応部活なんだよね」
「えっ? 部活?」
遠藤は目を丸くして驚いた。
「うん。まだ部としては認定されてないけど」
「作ったってことか。何部?」
理解の速さが彼の優秀さを物語っている。
「作詞部」
「作詞? なんか凄そう」
「まだ二人しかいないけど」
「へー」
「遠藤くんは何部に入ったの?」
聞いてはみたもののハッキリ言って興味はないし、そこから話を広げられる自信もない。
「俺は部活入ってないんだよなー」
「あー、そっちの方が楽だもんね。なんでも出来るし」
「そうそう。入りたい部活もないしな」
思っていたよりも話しやすいタイプだと感じた。
申し訳ないが、正直もっと気取っている奴だと思っていた。
やはりクラスのみんなから好かれているだけある。
「祐。めちゃくちゃ良かったよ~」
僕の作った曲を聞き終わった遥香が後ろから歩いてきた。
「わあ~! 遠藤くんだ!」
「えっ。久保さんじゃん」
「そうだよ~。今部活中なの」
「おぉ、例の作詞部か。まさか北野と久保さんの二人だと思わなかったな」
「お互い少し才能があってね」
遥香は僕の顔を見てそう言った。恥ずかしげもなく。
「ちなみに遠藤くんは誰と来てるの?」
「あー。ちょっと待って」
遠藤はGの部屋の扉を開け、中にいる誰かに手招きしている。
その部屋から出てきたのは、また同じクラスメイトの女の子だった。




