26話
母が旅立ってからは、おばあちゃんと一緒に住むことになった。
おじいちゃんはもう亡くなっているから、今まで一人で暮らしていたおばあちゃんにとって、家に話し相手がいるのは嬉しかったらしい。
夕飯の時間は、おばあちゃんのマシンガントークが止まらない。
おじいちゃんの昔話や母の子供の頃の話を永遠と教えてくれた。
幸いなことに、話し方が上手で、何より話が面白いから、僕も聞くことに飽きることはなかった。
学校もほとんど休まなかった。
休んだのは母と別れた後の三日間ぐらいだった。
最後の別れはやはりつらかった。
しかし、いつも僕のピアノの発表会の応援に来てくれた母だから、またいつか僕の目の前にフラッとやってきて「頑張れ!」って言ってくれるんじゃないかと思うと、寂しさも少し薄れた。
そういえばこの前、やっと遥香に歌詞の感想を伝えることができた。
それは駅前にあるいつものカラオケ店で行われた部活の時のことだ。
「ねぇ、今日こそ教えてよね~」
「あー、感想のこと?」
「そうだよ」
「うーん。もう忘れちゃった」
「もお~。まだそんな日にち経ってないじゃん」
遥香は怒ったようにそう言ったが、本当は怒っていないことくらい僕には見え透いている。
「じゃあ、もう一回見せてよ」
「いいよ。でも、聞きたいのは第一印象だからね。今読んで感じたことじゃないから! ファーストインプレッションだからね!」
「はいはい。分かってるって」
彼女は横文字を使うことがカッコいいとでも思っているのか。
オーマイガーを口癖のように多用する小学生に似ている。
遥香から渡された歌詞の書かれたルーズリーフ。
僕がこの紙に触れるのは二回目だが、この歌詞を読むのは何回目だろうか。
多分、二十回は超えていると思う。
しかし、いつ読んでも感情が震える感覚がある。
それは、読むたびに意味が変わって伝わってくることではなく、同じ言葉、同じ意味が毎回ストレートに伝わってくるのだ。
「最初に読んだ時に思ったのは……」




