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アイをトル  作者: 冬夜風 真愛
20/54

20話


 部屋に設置された白いベッドに誰かが寝ている。


 それが一目で母なのか認識できなかった理由は、顔の位置に白い布が掛かっていたからだった。

 

 ベッドに近づき布をめくろうとしたとき、自分の手が震えていることに気付いた。

 この布を取ってしまったら、僕の幸せな日々が終わってしまう気がしたからだろう。

 薄い布を下から上にめくった時、まず口元が見えた。

 

 信じたくなかった妄想がその瞬間に確信へと変わった。

 


 ここに寝ている人は、やはり僕の母だった。



 声が出なかった。


 頭の中に『絶望』の二文字が突然現れて、そこにいた『思い出』や『愛情』を追い払っているみたいに。

 一粒、二粒と目からこぼれる涙が、母の顔に落ちていく。

 大好きな母との別れはあまりにも突然で、呆気ないものだった。

 色鮮やかだった幸せな世界が、白黒の錆びついた世界へと変わっていくことは明らかだった。



「北野祐さん。お母さまが運転していた車の中にこちらがありました」



 感情を見せない警察官が白い大きな袋を渡してきた。

 僕はその袋を手に取って中身を見る。

 涙でよく見えなかったが、すぐにそれが何か分かった。



 中身はバドミントンのラケットだった。



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