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アイをトル  作者: 冬夜風 真愛
17/54

17話


「てか、今日吹奏楽部は部活じゃないの?」


 僕は遥香に聞いた。


「いつも大ホールで練習してるらしくて、音楽室は使ってないんだって~」


「そうなんだ」


「早く部員集めて、作詞部で音楽室を確保しないと」


 彼女も食べ終わったようで、一緒に紙皿とフォークをゴミ箱へ捨てに行く。

 何も捨てられていないゴミ箱にチョコレートと生クリームが付着した紙皿が堆積した。


「さぁ。そろそろ感想でも聞こうかな!」


 驚くほど大きな声で遥香はそう言った。


「あー。先に言っとくけど」


「なになに?」



「作詞部入ることにしたわ」



「え~! 本当に?」


「うん」


「めっちゃ嬉しいんだけど!」


「遥香一人じゃ寂しそうだからね」


「絶対嘘じゃん。 本当の理由を教えなさい!」


 何やら他の理由があると踏んでいるらしい。


「ほんとだって」


「も~。気づいてないと思うけど北野くんの嘘分かりやすいんだからね」


「いやいや、嘘じゃないから」


「はいはい。でもこれから一緒に頑張ろうね!」


「うん」


 満面の笑みを向ける遥香に僕は控えめに何度も頷いた。


「もっとテンション上げていこうよ~。せっかくの記念日なんだからさぁ」


「なんの記念日なんだよ」


「作詞部に二人目の部員加入記念」


「ふっ。ネーミングセンスの欠片もないな」


「あ~、今鼻で笑ったでしょ! 北野くん性格わっる~」


 遥香は目を細めてそう言った。

 僕はそこで会話の流れを止めて、音楽室に並べられているパイプ椅子に座った。

 遥香も僕の横の椅子に座ってきた。

 体重が軽そうな割に、僕よりギシギシと椅子を鳴らせた。


「それで、私の歌詞の感想は?」


 音楽室の窓から見える景色は面白みがなく、ただ白い雲が空を漂っているだけだった。


「遠慮なしで思ったこと言っていいの?」


「え、なんか怖いな」


「じゃあやめとく?」


「いや、聞きたい。北野くんが感じたことは全部正直に教えてほしい」


「分かった」


 僕はあえて少し長めの沈黙を挟んだ。


 音を楽しむための音楽室で、なんの音も流れない時間。

 遥香はキラキラした目で、僕から発せられる感想を待っている。

 しかし、その沈黙を破ったのは僕でも遥香でもなかった。




 プルルルルルル プルルルルルル





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