12話
母が家に帰ってきた時、僕はリビングのソファーに座っていた。
「ただいまー」
「おかえり」
「朝ご飯今から作るからちょっと待ってね」
「全然ゆっくりでいいよ」
「あら、そう」
母はそう言ってトイレに行った。
毎週土曜日の午前中はテレビを見て過ごしている。
ソファーに座って、スマホを片手にテレビを見るのがルーティンだった。
とはいえ、特に見たい番組があるわけではない。
しかし、今日だけは違う。いつものようにゆっくりとテレビを見る余裕はなかった。
なぜなら、雨予報だった天気も結局降ることはなく、晴れているからだ。
昨日の時点で遥香に「明日は予定がある」と言っておけばこんなことにはならなかったのに、雨予報を信じてしまったばっかりに、遥香にチャンスを与えてしまった。
土曜日の朝がこんなに憂鬱なのは久しぶりだ。
もちろん遥香に会うのが嫌なのではなくて、休みの日に外出することが何よりも嫌いなのである。
ピロリン
――― おっはよ~~。いぇぇ~~~い! 晴れたぜ~! ―――
遥香から連絡がきた。字面から嬉しそうなのが全面に伝わってくる。なぜか腹立たしい。
――― おはよう。どうしたら天気なんて変えられるの? ―――
――― 天気はね、祈ってても変わらないんだよ。
雲さんと太陽さんに相談するの。
明日は晴れにしてくださいってね(笑) ―――
全然面白くないと思った。
――― へ~ ―――
――― いや、そこもっと膨らませないと。北野くんが聞いてきたのに~(怒) ―――
――― ごめん ―――
――― 謝らなくていいよ(笑) それで、今日何時がいい? ―――
僕は時計を見た。今はAM9:20だ。
――― 昼の十三時とかはどうかな? ―――
――― じゃあそうしよう! 場所はまた後で連絡するね ―――
――― わかった ―――
スマホの画面を閉じて、ソファーに横になった。
あと三時間半近くある。ゆっくりする時間を確保することに成功したようだ。
いつの間にか母は台所で味噌を溶いていた。