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七十九学期 BBQする者達

 夜になって、私達は別荘の庭に集まっていた。海が見える広い庭で、あちらこちらに雑草が生えているのは少し残念だが、良い眺めの場所で海風も気持ちが良い。



 そこで私=日下部日和と友達たちは、一緒に夜ご飯の準備をしていた。セットしたBBQグリルに私達は、次々と食材をぶちこんで、焼き上げていく。



 お肉や野菜の香ばしい香りが海風に乗って、私達の元へ辿り着く。




「……良い匂いですね。日和ちゃん」


 隣で愛木乃ちゃんも感動している様子だ。当たり前だ。私だってこの香りだけでご飯が進みそうだよ。




 今日の晩御飯は、BBQ。しかも、結構いい食材を使ったBBQらしい。焼き上げる前の生の状態をチラッと見たが、この時から既に美しく綺麗で美味しそうな食材だなと感動していた。




 焼くとこんなに良い匂いがするなんて……。



「……ほら、あなた達! そろそろお肉とってくれませんと、焦げてしまいますわよ!」



 お肉を焼いているのは、神楽坂さん。ここへ来た時は、いつも1人の時であろうと必ず一日は、BBQセットを引っ張り出して、お肉を焼くらしい。彼女曰くその方が美味しいし、研究の疲れも癒せるとの事。





 私達は、彼女の焼いてくれたお肉や野菜をそれぞれお皿の上にのせる。そして、一斉に大きな声で私達は「いただきます!」を言い、かぶりついた。




「んふ~! うまい!」


 最初からお肉をかぶりついた私は、このあまりのおいしさのあまり……ニヤケが止まらなかった。頬っぺたが落ちそうになるとは、まさにこの事を言うのだろう。凄い旨味だ。肉汁が口いっぱいに溢れてきて、ジューシーで柔らかくて香ばしい極上のうまさだ!


「当然ですわ。わたくしの焼いたお肉ですもの。BBQでわたくしの右に出るものなどおりませんわ」




 凄い自信だ! しかし、確かにうまい。実力は、本物だ。てっきり、お金持ちのお嬢様で家事とか全般苦手で、勉強とか以外はすっからかんなのかと思ったらそうではなかった。




「……てっきり、貴方の事を誤解していたみたいね。神楽坂さん……」



「金閣寺ですぅ! というか、誤解ってなんですの! もう良いですわ。貴方の分のお肉は差し上げませんわ!」




「えぇぇぇぇぇ!? そっ、そそそそそそ……そんなぁぁぁぁぁぁ! それだけは……それだけは、ご勘弁を! 神楽坂のお嬢!」



「金閣寺ですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」



 私達が話をしているのを近くで聞いていた瑞姫ちゃん達が、ニコニコ笑いながら食材を次々と口にしていく。



 瑞姫ちゃんがコーンをリスのようにポリポリかじりながら喋るのだった。


「……でも、ほんとにこれ……おいひいでふね。わたひ、はーへひゅー初めてで……かんほーひました」




「瑞姫ちゃん、頼むから食べ終わってから話そうか」




「……うふふ。しかし本当に今回は、両面宿儺さんに感謝しかありませんね。こんなにおいしい物を食べさせてくれて、しかも海にまで連れて来て貰っちゃって……」




「金閣寺です……。あの……その間違え方は、ちょっとバレたら色んな方面に怒られるので勘弁してくれませんか……。木浪さん」





「……うんうん! 美味しいよねぇ~。おばさんもお酒が進んでとっても幸せな気分だよ! いやぁ、ほんっとうにありがとうね~。虎杖さん」



 と、火乃鳥先輩は神楽坂さんではなく、神楽坂さんの隣に置いてある別荘の壁に向かって感謝の言葉を告げていた……。




 この人……今日は何杯、お酒飲んでたんだ? 酔い過ぎだろ……。話す相手間違えるどころか、壁と人間違えるとか……。





 神楽坂さんは、鋭くツッコミを入れた。



「……アウトですわ! もう完全にこの流れでそれは、アウトですわ! 削除依頼来てもおかしくない位に喧嘩売ってますわ!」




「……まぁまぁ、大丈夫だよ。五条さん。この作品、削除依頼来るほど人気でもないから」




「色んな意味でそれは、大丈夫じゃないですわ! そもそも一応、貴方は主人公なのだから発言には気を付けてくださいまし!」




「ははは、今回の問題発言のほとんど神楽坂さんなんだけどね……」




「金閣寺です! あなた方がいつまで経っても名前を憶えないのがいけないんですぅ! いい加減わたくしの名前を憶えてください!」





「いやぁ~」










 ――と、そんな楽しい時間を過ごした私達は、食事が終わって片付けも終えるとしばらくして、別荘のリビングに自然と集まった。そして、全員が集まったのを見計らってか、突然……乃土花ちゃんが皆の前で言うのだった。




「……皆さん、知ってますか? この辺りで昔から語り継がれているお話……」




「ん? お話?」


 私達が興味本位で彼女の事を見てみると、乃土花ちゃんは話始めた。



「……出るんだよ。お兄ちゃん! この辺りって……」




「え……!?」



 この瞬間、私達の場は凍り付いた。しかし、乃土花ちゃんは全く気にする事なく話を続けた。




「……昔、この場所で戦死した旧日本軍の霊が……夜な夜な、この辺りを歩いていてね……」





「ひゃぁ!」


 一番最初に恐怖のあまり声を上げたのは、瑞姫ちゃんだった……。しかし、それ以外の子達も皆、若干怖そうにしている。そんな彼女達の前で乃土花ちゃんは、言った。





「……と、いうわけで……その実際に霊が出ると噂の場所に皆で行ってみませんか?」




 彼女は、少しだけ口元を吊り上げたいやらしい笑みを浮かべながらそう言っていた。



 私は、彼女がそんな顔をしているのを見逃さなかった。




 ――この子、もしかして……。




次回『振り向いて欲しい者』

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