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七十八学期 様子のおかしい者

 部屋分けが終わって私=木浪愛木乃は、水野さんと一緒に海の上をぷかぷか浮いていた。あの後、私達は金隆寺さんと火乃鳥先輩を置いて先に海に来ていた。


 金隆寺さんは、別荘の地下にあるらしい研究室のチェックをするため別荘の中に残っていた。ちなみに火乃鳥先輩は、海水に溺れるくらいなら酒に溺れてたいと言って既に酒に溺れている様子で別荘の中に残り、1人で缶チューハイを飲んでいる……。



 私は、浮き輪の上に乗ったままストローの刺さったブルーハワイジュースみたいな飲み物を口にしながら1人、考え事をしていた。





 すると、そんな真面目な顔をしていた私の元に近くでぷかぷか浮いていた水野さんが話しかけてくる。



「……どうしたんですか? 木浪さん?」



 この子が私の心配をするなんて珍しいと思ったが……あえてそれは口に出さない。私は、ボーっと砂浜で乃土花ちゃんと一緒に遊んでいる日和ちゃんの姿を眺めながら思っていた事を口にした。





「……なんか、今日の日和ちゃんは……様子が変だなと思って……。最初は、旅行が楽しみだったから普段と違う感じなのかなと思ったのだけど……」




 私は、目線の先に見える日和ちゃんと乃土花ちゃんの遊んでいる風景を見ながら余計にその違和感を加速させた。




 彼女達は、一見すると普通に遊んでいるように見える。妹と姉が仲良く戯れている仲の良い姉妹の様子のようにも見える。




 しかし、なんだか私にはそれだけではないようにも見えた。





 何と言うか……日和ちゃんが少し無理をしているような……何処か乃土花ちゃんに対して一歩引いている感じがする。






 私はそう思ったまま彼女達の遊んでいる光景をもう一度見ている事にした。





 ――土御門乃土花ちゃん。今日初めて出会った日和ちゃんの幼馴染らしい……。最初、幼馴染と聞いてなんか殺意が湧いた。……最初、日和ちゃんの事をお兄ちゃん呼びしていて、びっくりしたがその後もまるで本当の妹のように日和ちゃんと接している様子を見て、最初は、2人が本当に姉妹のような関係なのかなと心の中で少し納得もした。





 だけど……なんだか違うものを今は感じている。さっきも部屋分けの時も……普段の日和ちゃんらしくなかった。







 日和ちゃんならあぁ言う時、自分から「私はこの人と一緒が良い」なんて言わない気がする……。




 これは、私が彼女の前世まで知っているからこそ抱く疑問なのか……はたまた、考え過ぎなのか……。





 すると、私の隣でぷかぷか浮いていた水野さんが真剣な顔を浮かべながら喋り始めた。




「……実は、私も同じ事を考えていました」



「え……!?」



「さっきも海で遊ぼうってなった時も……」















 ――数分前。



「日和ちゃ~ん! お願いがあるんだけどさ、日焼け止めを……塗ってくれる?」


 木浪愛木乃は、ここぞとばかりに……自分の緑色のビキニの紐をほどき、そのセクシーな後姿を日下部日和の目に焼き付けるように見せつけた。



「ぶっ! ひっ、ひやっ! ひゃひゃひゃっ! ひゃっけとむぇ!?」





「あー! ずるいです! 木浪さん! 私のもお願いします! 日和さん!」



 それに負けじと、水野瑞姫もフリフリしたデザインの可愛らしい水色の水着のボタンを外して自分の背中を日和の前で露出させた。




「ぬっ、ぬぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」






「あらぁ、水野さん……それだけ体も小さかったら1人で全部塗り切れちゃうんじゃなくて?」


 木浪愛木乃は、自分には背中だけじゃなくてここも塗って貰わないといけないから……と遠回しに言っているかの如く、自分の溢れんばかりの胸をぎゅっと寄せて、まるで間に何か挟んでいるかのように左右にゆさゆさと動かして見せた。



「きっ、木浪さんこそ……それだけ色々塗らなきゃいけない所があって……日和さんを困らせるだけです。無駄に大きい人は下がっていてください」



 水野瑞姫は、自分の絶壁に一瞬視線を落として、少しだけ儚げな表情を見せたりもしたが、すぐに気を取り直すのだった。




「水野さん……言うようになったじゃないですか」




「木浪さんこそ……ちょっと積極的なんじゃないですか?」




 2人が睨み合う中、1人残された日下部日和の元に現れたのは、スクール水着に身を包んだ1人の少女だった。



「お兄ちゃん、私に日焼け止め塗って」




 その一言に口論していた瑞姫と愛木乃は、激震した。そして、すぐにそれを阻止しようと動き出す。



「……ちょっ!? 乃土花ちゃんには、まだ早いわよ! ねぇ、水野さん?」




「はっ、はい! いっ、いくら幼馴染でもそれは、ちょっとずる……じゃなくて、少し刺激が強すぎるんじゃないですか?」





 しかし、乃土花の様子は至って普通。彼女は、平然とした態度で答えるのだった。



「私はお兄ちゃんの妹なので。特別なんですよ。ねぇ?」



 乃土花が視線を日和に向けると、彼女の体が一瞬ビクッと恐怖に震えたように反応して、とても自信なさげな様子で返事を返すのだった。













 ――と、さっき起こった一連の出来事を思い出していた木浪と水野は、もう一度2人で考え込むのだった。



 しばらくして、愛木乃は言った。




「……やっぱり、なんかおかしい。何か、あの……乃土花って子に弱みでも握られているのかな……」




 

 

次回『BBQする者達』

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