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七十四学期 妹でいたい者

 帰り道、私と乃土花ちゃんは一緒に家へ向かっていた。ママからメールがきて夕飯のおかずを買って来て欲しいとあったので、私達は途中でスーパーに寄って買い物を済ませる。家に帰って来て私の部屋の中でくつろいでいた私と乃土花ちゃんは、窓から見える夕焼けを眺めながらスマホをいじったりして時間を適当に潰していた。


 そんな中で私は、乃土花ちゃんに聞いてみる事にした。



「……学校どうだった?」



「うん! すっごく楽しそう! これからお兄ちゃんと一緒に通える事がとっても楽しみだよ!」




「そっか~」


 彼女の顔は、本当に楽しそう。ニコニコ笑っていた。こういう所は、昔と変わらず無邪気で可愛い。成長しても尚、私にだけは子供臭さのようなものが抜けない感じが昔を思い出す。



 相変わらず元気そうで良かった。昔みたいな苦手な感じもなくなったみたいだし……。




「……受験頑張ってね。今は、色々辛い時期かもしれないけど……高校入ったら楽しい事とかいっぱいあるから。それこそ、乃土花ちゃんも高校入ったら彼氏とかできちゃうかもね」




 私は、この言葉を特に考えもせず言ってしまった。いや、年頃の女の子だったらこんな感じの事は普通に言うだろうと思っていたし、この言葉にそこまでの意味なんて考えてもいなかった。




 しかし……結果的にこれが引き金となったのだ。乃土花は、言った。




「……彼氏か。私、別に彼氏は良いかなぁ」



「え……?」




「……それよりも私は、お兄ちゃんと一緒の学校に通える事の方が嬉しい」



「え? あぁ、ありがとう……」



「……ううん。それよりもお兄ちゃんさ、変わったね」



「え?」


 そうかなぁ? やっぱり、高校生になってから美少女っぷりに磨きがかかりやしたかなぁ。



「……いつの間にか、私の知ってるお兄ちゃんじゃなくなった感じがするよ」




「あはは……そりゃあ人間、何年もすれば変わっていくものだよ。成長期だよ。私達」




「へぇ……。何年もすればお兄ちゃんは、変わっちゃうんだ」



「え? まっ、まぁ……」


 夕日が地面の中へ入り込んだ頃、外の景色が暗くなりだして乃土花ちゃんの顔も半分が闇に染まる。彼女は、不気味さを感じる細い声で言った。




「……それって、やっぱりあの人のせい?」



「え? あの人って……」



「あの水色の先輩」



「瑞姫ちゃんの事? まっ、まぁ……色々な人と仲良くなっていけば変わってくるのかもね」



「……ふぅん。じゃあ、やっぱりあの人のせいなんだ……」




「え? せい……?」




「……私に許可なく近づいて……お兄ちゃんに媚びて……尻尾とか振って……お兄ちゃんをお兄ちゃんじゃなくそうとしている……」




「え……? は? 乃土花ちゃん?」


 この感じ……もしかして……。




「……ねぇ、お兄ちゃん? いつになったら私の呼び方、ちゃんが外れるの? それついてるとなんか……お兄ちゃんっぽくないよ」



「何を言って……」




「そういうところも全部、あの女が近づいて来たのが悪いんだ」




「乃土花……ちゃん……」




「お兄ちゃん、今……私のお兄ちゃんに戻してあげるからね」





次回『ヤンデレ妹な者』

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